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映画『両刃の先進医療』

2018年/製作国:アメリカ/上映時間:100分
原題 The Bleeding Edge



予告編



レビュー

 自分を守るためにも、わが子を守るためにも、観て損のない作品と思います。
 本作は最新医療機器により体を破壊されるリスクは「実はかなり高い」というお話です。
 ※登場する医療機器は、日本でも使用されているものがあります

 冒頭、
 ・「医療機器業界は、年30兆円が動く巨大産業だ。製薬業界と規模は並ぶが、実態は知られていない」
 ・「薬品業界に力?ないね。医療機器業界の方が強力だ」
 という2つの情報が提示され、その後「情報弱者は搾取される」という事実とその構図が分かり易く描かれてゆきます。

 アメリカでは現在、最先端医療器具の98%が、特例だったはずの法的な抜け道「《500(k)》」を通すことにより認可されてしまうという(特例が特例ではなく規則となってしまった)異常事態に陥っており、新規医療器具が認可されるまでの「チェック機能はほぼ無い」という恐ろしい状態となっているそうで、チェック機能の概要の一部を一言で表現すると、

 「新しく開発された機器が前の型と類似していれば申請を受理する」

 とのこと。
 そしてそのような行為を繰り返したことにより劣化してしまった商品までもが市場に出回ることとなっており、最終的には何でもかんでも通過してしまうというような事態になってしまったために、チェック機能とは口が裂けても言えない状況となってしまっているようです。

 大切なことなので、記し方を変えてもう一度記しますけれども、そのような素通りとも言える「審査になっていない審査過程」を経て、アメリカでは「98%の最先端医療器具の認可に許可がおりている」という状況で、そのような機器が日本にも輸入されることにより使用されている事実があります。
 しかも医療器具の治験はたったの1回で良いそうで、規模はなんと50~100人程度とのこと(この回数と規模を「治験」と言っても良いのでしょうか?)。
 審査の様子を録画した映像が紹介されますけれども、それがもう本当に絶望的というか、悪魔の集会なのではないかと感じるレベルのもので・・・(作品を御覧になり、ぜひご自身の目で確認なさってみてください)

 検査機関であるはずのFDA(「Food and Drug Administration」の略称)「アメリカ食品医薬品局(日本における厚生労働省)」は、治験患者の提供する情報のすり替え、FDAで働く医師たちへのスパイ行為&正当な情報を提供しようとする医師達の解雇等やりたい放題で、FDA長官達に至っては当然のように任期後に医療関係会社に天下りする等、完全にその職務機能を失ってしまっており(というか「悪用」しており)、トランプ政権時にはさらに酷い長官が任命され事態はさらなる悪化の一途を辿ったとのこと・・・
 挙句、
今後「規制は医療産業のロビー活動により決定されるようになり、間違った方向に進んだ場合の矯正の確証も無くなる見込み」であるという予想までもが提示されます。

 そんな状況に輪をかけるように、本作に登場する医療被害者達の思考過程(思考をしないという思考過程)もかなり酷く、自分の体によくわからない異物(医療機器)を埋め込むことや、よくわからない医療器具を使用することに対しリスクを全く考慮しないその姿には、観ていて驚愕いたしました。
 
 本作にてそのような現実を知ったことにより、作中で語られる「企業は《イノベーション(革新)》という言葉を好みますけれども、それはエビデンスが存在して初めて言えることであり、それが無ければ前進しているのかどうかも不明です。にもかかわらず医者や患者はエビデンスが無くとも新開発という言葉のイメージを好みます。だけれども最先端医療器具の新製品は未確認に等しい状況にあるのです」という指摘を、絶対に忘れないようにしようと思いました。
 また患者に対し「新薬や新型の医療機器を使用しないともう生きられない」かのように言葉巧みに思わせる(脅しの)手法は、ニキビや体毛が多いとか、太っている人はモテない等と脅してくる広告等となんら変わらない古典的な手法ではありますけれども、「自分の命がかかっている」と思うと多くの人々は冷静な判断を出来なくなってしまい簡単に騙されてしまうとのこですから、個人的にはそうなってしまわないよう常に危機感をもつようにして「患者第一」とか「最高品質」とか「最先端医療」などの耳心地のよい印象的な語句に騙されないよう、細心の注意を払いながら医療機関を利用してゆこうと肝に銘じました。

 本作ではさらに、医療により貧困家庭が誕生してしまう過程をも描かれており、それらも踏まえて作品の最後に先進医療を受ける際の注意点をいくつか知らせてくれています。

 ①体表、体内に装着する器具は十分に調査する。「新しい=良い」ではない
 
リスクがあったり、高価だったりする手術には「セカンド・オピニオン」を求める
 
医師には、受ける外科手術の担当回数を尋ねる
 
入院中は、友人や家族に代弁者を依頼する
 
医療機器会社から金銭が譲渡された医師一覧を調べてみる
  
 自分や家族の肉体(自然)の中に、人工的な異物(不自然な物)の侵入を許すとき、どのような判断基準を持つのか。
 医師の資格を有するだけの「アカの他人」の話をたった数分聞いただけにもかかわらず盲目的にその話を信用し、命と健康に関わる大切な決断を安易に下してしまっていないか。
 自分の人生(命と健康)の判断は、決して他人にゆだねてはいけない
という当たり前のことを、本作は改めて教えてくれました。

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