映画『火垂(ほたる)』
2000年/製作国:日本/上映時間:164分
原題 火垂
監督 河瀨直美
内容紹介
古都、奈良。
ストリッパーのあやこは、過去の記憶に翻弄され生きる気力を失い、ある日住む家からふらりと外へ出ると、望むかのように車に撥ねられる。
その現場に偶然居合わせた、祖父を亡くし天涯孤独の身となって間もない大司は、倒れたあやこの虚ろな表情に、あやこの深い孤独を見る。
やがてふたりは互いの魂の欠損を補うかのように、強く惹かれ合い、求め合ってゆく……
レビュー
本作は、未だ一度しか観ることの出来ていない作品。
子どもの頃、私は河瀨監督の描く情念の世界に、強く魅了された。
大和路を愛した(尊敬する)写真家が撮り続けた場所がロケ地に使われていたり、ポスターのデザインが最高に好きだったり(後に横尾忠則による仕事と知る)、お水取りのシーンの「闇を照らしながら流れ落ちる焔(愛と命)」の情景が、幽玄の美しさと儚さを湛えて素晴らしかったり……
作品内のいくつもの感情が、今でも胸に焼き付き、燻っている。
みかんの花が 咲いている
思い出の道
丘の道
私は、あやこ(火) と 大司(水) そして 恭子(土) というキャラクターが、愛おしい。
奈良の四季も美しく、夏が来るとふと思い出し、無性に観たくなる作品。
東大寺二月堂の修二会(お水取り)の業が終わると、春が来る
長年、「横尾忠則の作品には全く興味ないなぁ」と思っていたら、この仕事が横尾忠則の手によるものであると知り、「横尾忠則の作品……ずっと大好きだったんだ……」と、仰け反った記憶。