映画『Prince of Broadway』
2008年/製作国:アメリカ/上映時間:100分
原題 Prince of Broadway
予告編(海外版)
Story
アメリカ。NY、マンハッタン。
アフリカ(ガーナ)からの不法移民である主人公(ラッキー)は、路上にて客に声をかけ店舗へと案内し、店内の隠し部屋にて有名ブランドの模造品を売る違法商売を生業としている。
勤め先の店の経営者(レボン)との関係は良好で、プライベートには愛し合う恋人もおり、ささやかな夢も持っていて、ある意味平穏で満ち足りた日々を送っている。
しかしある日、主人公の前に突然「元カノ」が現れ、「あなたの子どもだから2週間預かれ」と言い放ち、赤ちゃん(プリンス)を押し付けて去ってしまう。
赤ちゃんの存在は当然のように、主人公の仕事や人間関係に大きな影響を及ぼし、それまでの生活リズムをアッという間に破壊してゆく。
また主人公は不法移民であることから、公的機関の援助を受けることはもちろん、協力を仰ぐことすら出来ない。
そして案の定「元カノ」は、約束の2週間が経過しても赤ちゃんを引き取りに現れることは無く、育児放棄をする気満々の様子なのであった。
そんな状況を打開すべく、育児をしながらでも出来る商売を思いつき、全財産を注ぎ込んで実行に移す主人公。しかしその思惑通りに上手くいきかけた矢先、赤ちゃんのオムツ交換をしている最中に想定外の事態が発生し、その生活状況はさらに悪化してしまう。
肉体的にも、精神的にも、金銭的にも追い詰められてゆく日々の中、主人公は知人からの助言を聞き入れ(赤ちゃんを元カノの元へと戻すべく)DNA検査を行い、その検査結果を待つこととなる。
しかし、この時さらなる試練が迫っていることを、彼は知る由も無かった・・・
はたしてDNA検査の結果は?
主人公の人生は?
そして、誰にも愛してもらえない赤ちゃんの運命は?
レビュー(若干ネタバレ有り)
主人公がブランド品の「偽物」を売っているという設定や、それらの売買が行われる「店」自体も物語の重要なファクターとなっていて、【「本物」と「偽物」の違いとは何か】という「問い」へと結びついているように感じました。
例えば家族。
血が繋がっているから「本物」?
血が繋がっていないと「偽物」?
というように。
その他にも随所に、考えさせられる仕掛けやシーンが用意されており、数ヶ月のリサーチに基づく説得力あるリアルな描写から生み出される鋭い指摘の数々は、見事でした。
また、鑑賞開始時には「外側」からの表面的な視点しか持ち得なかった鑑賞者を、鑑賞後には「内側」からの共感の眼差しを獲得出来るよう導く、ショーン・ベイカー監督の手腕も素晴らしかったです。
ちなみに、カレン・カラグリアン演じる偽ブランド店の経営者(レボン)は、この作品のもう一人の主役ですけれども、とても魅力的なキャラクターとして描かれており、とても印象的且つ独創的な「洗車シーン」や、主人公との友情等、見どころ満載でした。
※レボンはレバノン移民で、偽装結婚により永住権(グリーンカード)を取得済という設定
それから主人公が、プリンス(赤ちゃん)の育児を通して人間的に成長してゆく過程はリアルで微笑ましく、なによりもプリンスの可愛さに笑顔となってしまう場面も多々ありました。
さらに、登場する主な女性3人(主人公の恋人、主人公の元カノ、レボンの妻)はそれぞれに個性的で、物語をより奥深い地点へと導く役目を果たしており、その多角的な視点と巧みな構成には何度も驚かされました。
この作品には「家族の無限の可能性」「本物の友情の素晴らしさ」「人が人を想うせつなさと美しさ」が、大切に封じ込められており、優しい光を放ちながら、あなたが訪れるのを待っています。
幸せな気持ちに満たされ、思わず微笑んでしまう。
そんな素敵な作品です。
その他
● 【ONE WAY(一方通行)】の道路標識は、この作品でも『Take Out』でも、主人公達の選択とは真逆の選択肢を表現するメタファーとして上手く活用されており、巧いなぁと思いました。
そういうエスプリは、ベイカー作品の素敵な魅力の一つかなって思います
● 主人公のような仕事をしている人は、「ストリートハスラー」と呼ばれているそうです。
● アメリカ版DVDの特典
①メイキング(インタビュー含む)、約56分。
②トレイラー
③コメンタリー(ショーン・ベイカー)
④コメンタリー(プロデューサー&カレン・カラグリアン(レボン役)&ヴィクトリア・テート(ナディア【レボンの妻】役兼、アシスタントプロデューサー)
● いつか日本でも
「劇場公開&ソフト化」を希望。
※ソフトはDVDではなくブルーレイがいいなぁ。