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書籍『中学生から知りたいパレスチナのこと』
岡真理 (著) 小山哲 (著) 藤原辰史 (著)
出版社 ミシマ社
発売日 2024/7/26
単行本 224ページ
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目次
はじめに(岡真理)
Ⅰ 私たちの問題としてのパレスチナ問題
岡真理「ヨーロッパ問題としてのパレスチナ問題――ガザのジェノサイドと近代五百年の植民地主義」 「ユダヤ人のパレスチナ追放による離散」は史実にない/ジェノサイドが終わるだけでは不十分/ハマスの攻撃は脱植民地化を求める抵抗/イスラエル政府の発表をうのみにしてはいけない/ジェノサイドはいかなるシステムによって可能になったのか/人文学=ヒューマニティーズから考える/ガザを見たとき、日本は自国の植民地主義を想起できているか/壁一枚を隔て、安楽な生活を享受する者/「人種」はヨーロッパ植民地主義が「発明」したもの/シオニズム運動――反セム主義に対する反応/国家維持のためにホロコーストの記憶を利用する/近代学問に内包されるレイシズム
藤原辰史「ドイツ現代史研究の取り返しのつかない過ち――パレスチナ問題はなぜ軽視されてきたか」
ナチズム研究者はナチズムと向き合いきれていない/ドイツとイスラエルをつなぐ「賠償」 /ふたつの歴史家論争/誰のための「記憶文化」か/ドイツは過去を克服した優等生なのか?/「アウシュヴィッツは唯一無二の悪だ」/奴隷制は終わっていない/経済の問題、労働の問題としてのナチズム
Ⅱ 小さなひとりの歴史から考える
小山哲「ある書店店主の話――ウクライナとパレスチナの歴史をつなぐもの」
ふたつの戦争のつながり/長い尺度で問題を捉える/ポーランド書店 E. ノイシュタイン/ウクライナ-ポーランド-イスラエルを結ぶ生涯/イスラエルをリードした東ヨーロッパ出身者/「国家なき民族」の国歌/シオニズム運動はドレフュス事件より前にはじまっていた/民族運動の母体となった地域/移住して国家を建設するという発想/日本も「外部」ではない/「敵は制度、味方はすべての人間」 藤原辰史「食と農を通じた暴力――ドイツ、ロシア、そしてイスラエルを事例に」 私たちの食卓の延長にある暴力/投機マネーがもたらす飢餓/プーチンの農業政策は外交の武器/ウクライナの穀物を狙う米中/国際穀物都市オデーサ/飢餓計画を主導したヘルベルト・バッケ/ホロコーストの影に隠れる「入植と飢餓」/飢えてはならない人と、飢えてもいい人/イスラエルの食と水を通じた暴力/飢餓とは「低関心」による暴力
Ⅲ 鼎談 『本当の意味での世界史』を学ぶために
今の世界史は地域史の寄せ集め/「西」とはなんなのか?/ナチズムは近代西洋的価値観の結晶/「食を通じたイスラエルの暴力」に目が向かなかった反省/私たちの生活が奴隷制に支えられている/日本史、西洋史、東洋史という区分は帝国時代のもの/西洋史でパレスチナ研究をしたっていいはずなのに/ポーランドのマダガスカル計画/民族の悲哀を背負ったポーランドは、大国主義でもあった/イスラエル問題ではなく「パレスチナ問題」/イスラエルの暴力の起源は東欧に?/今のイスラエルのやり方は異常/押してはいけないボタン/核の時代の世界史/「反ユダヤ主義」という訳の誤り
おわりに(小山哲)
本書成立の経緯(藤原辰史)
内容紹介
あらゆる人が戦争と自分を結びつけ、歴史に出会い直すために。
アラブ、ポーランド、ドイツを専門とする三人の対話から
はじめて浮かび上がる「パレスチナ問題」。
世界史は書き直されなければならない。
***
岡「今、必要としているのは、近代500年の歴史を通して形成された『歴史の地脈』によって、この現代世界を理解するための『グローバル・ヒストリー』です」
小山「西洋史研究者の自分はなぜ、ヨーロッパの問題であるパレスチナの問題を、研究領域の外にあるかのように感じてしまっていたのか」
藤原「力を振るってきた側ではなく、力を振るわれてきた側の目線から書かれた世界史が存在しなかったことが、強国の横暴を拡大させたひとつの要因であるならば、現状に対する人文学者の責任もとても重いのです」
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地図作成:マップデザイン研究室
レビュー
分かりやすいのに、内容の濃ゆい一冊。
記し出すと全てを記したくなるため、内容に関しては一切レビューを記さないという選択をさせていただきます(時間が出来たら追記するかもしれません)。
パレスチナの歴史に関する「年表」「地図」等も非常に見易く、「目次」からして至言の宝庫。【ナチズムは近代西洋的価値観の結晶】という一文には思わず、「ほんとそれっ!」と声が出ました。
ちなみに「中学生から知りたい」とありますけれども、決して子ども向けの薄い内容というわけではなく「複雑な問題について中学生にも理解出来るよう、❝丁寧❞ 且つ ❝理解しやすく❞まとめてあります」という意味です。
ものを考えるために、世界情勢等を把握するために、非常に有用な一冊です。