未来を創る鍵:好奇心と突破力
現代社会において、ビジネスパーソンが未来を切り拓くために必要なこと。科学的探究と芸術的創造性の融合が、未来を予見し、新たな可能性を生み出す鍵となります。そして、好奇心と突破力がその原動力となります。本稿では、好奇心と突破力が未来の創造にいかに貢献するかを探ります。
好奇心と突破力の力:ダーン・ローズガールデの事例
オランダのアーティスト、ダーン・ローズガールデ(Daan Roosegaarde:1979〜)は、テクノロジーとアートを融合させ、未来をつくり出す代表的な人物です。彼は、「人々は数字を示されるだけでは行動を変えられないけれど、好奇心が刺激されると動くようになります」と述べ、好奇心の力を強調しています。
彼の代表作の一つ、「Waterlicht」は、プロジェクションとLED技術を用いて光の波を創り出し、観衆を水中にいるかのような体験へと誘います。オランダは、国土の26%が海面下にあり、人々は堤防やダムをつくり、水道を整備して暮らしてきました。オランダの風景は、人間が介入することで存続できたのです。しかし、同じ人間が引き起こした、地球温暖化による海面上昇の危険性が高まる中、この作品はその危険性を視覚的に伝え、オランダの人々に深い印象を与えました。このように、美しさと恐怖の体験を通じて行動変容を促すのがアートの力です。
「Waterlicht」は、2015年にオランダのローブシュタイン城で行われました。二つの川の合流地点に建てられ、水の城と言われている場所です。その後、パリ、ロンドン、ニューヨークの国連本部、ドバイなど世界中で開催され、人々に気づきを与えています。
宇宙ゴミをアートに:SPACE WASTE LAB
ローズガールデ氏の興味は地球から宇宙へと広がっています。彼は欧州宇宙機関と協力し、「SPACE WASTE LAB」を設立しました。地球の周りには、直径10cm以上のスペースデブリ(宇宙ゴミ)が29,000個以上浮遊していると言われています。これらのデブリが稼働中の衛星を損傷させる危険性があり、問題となっています。このラボでは、宇宙ゴミを可視化、捕捉し、持続可能な体験へとアップサイクルするプロジェクトが進行中です。SPACE WASTE LAB PERFORMANCEは、緑色のLEDビームとリアルタイムの追跡情報を用いて、高度200キロから20,000キロの頭上にある宇宙ゴミを照射し、壮大なアート作品として視覚化します。
将来的には、宇宙ゴミを捕捉して流れ星として大気圏に突入させたり、月面での居住地の材料にしたり、気候変動を緩和するための太陽反射板の制作に利用することを考えています。これらのアイデアは一見すると奇想天外ですが、ローズガールデ氏の好奇心と突破力があってこその発想です。
エンジニアリングとアートの融合
欧州宇宙機関のディレクターは、ローズガールデ氏とのコラボレーションについて次のように語っています。
アーティストの発想は、エンジニアリングやビジネスの論理的な思考を補完し、革新を生む力となります。新しいイノベーションが求められる現代において、アーティストの視点はますます重要です。
しかし、新しいイノベーションが必要だと言いながらも、ローズガールデ氏がアイデアを出したとたんに必ず言われることがあります。
「Yes but」(いいね、でも...)。
そこで、ローズガールデ氏は、「Yes but」チェアを作りました。音声認識装置を装備していて、「Yes but」と発言すると、一瞬ビリッと刺激を与える椅子です。理解あるクライアントは、この椅子の一撃を受けると、ちゃんと話を聞くようになるそうです。
好奇心と突破力の重要性
未来をつくるためには、好奇心と突破力を持つことが不可欠です。そして、アーティストのように美しさと創造性を武器に、新たな可能性を探求する姿勢が求められます。ビジネスパーソンとして、好奇心を刺激し、既成概念にとらわれずに突破していく、それが未来を明るく照らす第一歩となるのです。
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