悠久の時を旅するを読んで
星野道夫の文章が綴られた写真集を
毎日少しずつ読んでいる
ワタリガラスの神話を探して の章で
彼が南東アラスカを旅している時に
出会った一人のネイティブインディアンの男性
ボブ・サムの話がとても印象深い
道夫氏と同じ年に生まれたアラスカ先住民の彼
は若い頃アラスカ中を浮浪者のように
転々としていたと言う
インディアンのグループと彼らを差別する
警察との争いが絶えなかった時代
抗争の中心人物となっていった彼は
やがてFBIにまでマークされるようになる
そして捕まえられて徹底的に
酷いリンチを受けたそうだ
後から見て外傷が残らないようにする
姑息で周到なやり方で
その後 生まれ故郷に戻り自らの祖先である
クリガット族の古老たちと
初めて向き合うことになる
そして彼らの存在する佇まいに
ただただ圧倒され
初めて人を許す事を知ったそうだ
それから彼は住宅建設が始まった
ロシア人墓地に散らばる骨を
一つ一つ拾って土の中に埋めていった
その墓地はロシア人墓地となる前の
千年以上もの間クリギット族の
神聖なる墓地だった
それからの10年間 ボブはたった一人で
コツコツと掃除を続け 見違えるような
墓地へと変えて行ったという
もちろん誰かに頼まれたり
お金をもらった訳でもない
その10年間は彼にとって
遠い祖先の人々と語る時間となり
彼はゆっくりと癒されて行ったのだ
彼はワタリガラスのクラン 家系だったそうだ
星野道夫はこう語っている
これまでにボブほどスピリチュアルな人間に
会ったことはないと
本当のスピリチュアルはこういう在り方に
あるのだろうと思う
この地上で深く傷つき そして人間の過ちを許し
自分に取って自然な在り方で
世界と繋がり直していく中で
自らを癒す
それは淡々とした静かな在り方でありながら
実はとてもパワフルで人と地球との関係に
影響力のあるものなのだと改めて感じさせられた