【短歌五十首】「いま」からはじまるリズムにあわせて

「好きだよ」と言いたくなって手をひいて「ジンベイザメのくちはでかいよ」

歯医者さん眉間のしわを見ておくれライトがまぶしいからじゃないんだ

もっと右、ちょっと行きすぎ、そこの上、ごめんちょい右、両手で掻いて

客席が東京ドーム五個分のラーメン屋には行列がない

成田発紙飛行機はホノルルへ「機長は佐竹、副機長・堀」

亀戦車試作初号機散歩させ機動力には難ありの評

パジェロならおもちゃでねだった一台とダーツでもらった一台がある

ハイウェイのナンバープレート抜き抜かれ後部座席で10を作った

「うちはうち」ゲームを買ってもらえぬも車窓の中は横スクロール

あれま！ゆく川の流れは絶えずして小さじ三つで大さじになる

HARIBOのクマが弾いた秋鮭はアルミに包まれちゃんちゃん焼きに

ミニモニ。のセトリを書いたCDで我が家の周りはカラスが来ない

「飯テロを撲滅する」と警視庁警視総監最後の仕事

ぐっすりと眠れるようになったけどバクのうんこが頭に溜まる

どんどんと小さくなったカントリーマアムの背中がさびしそうです

夏である。ルンバがひっくり返ってる。裏向きにするとまた動き出す。

三つ首の頭同士が喧嘩する「寝返りうつときひと声かけろ」

「犯人に告ぐ！」と叫んだ巡査部長ミニ扇風機顔に当ててる

長押しで消されかけると震えだすそうかお前ら居たかったのか

ビー玉をせき止めるため進化した中に出っぱる肩甲骨よ

はじめから上と下から挟まれるつもりティファールソースパンの2

焼く前に地軸は背わたのように抜け（『地球のレシピ5月号』より）

自らの尻尾めがけて走る犬地球が回る理由も同じ

玄関が「犬」のシールで覆われた家主は全歯が犬歯らしい

タイ旅行パタヤビーチで野良犬に噛まれたけれど平気だガルル

「だぁーれだ？」ドライバーの目を手で覆いふざけたまんま死んじゃおうかな

溜まってたかかとの角質道に撒きヘンゼルとグレーテルは進んだ

どんぶらこ流れる大きなピスタチオ中の太郎が溺れかけてる

客がまたパイの中身に変わり果てドリンクバーのコーラはうすい

よく聞いて赤ピクミンは火に強い任天堂は訴訟に強い

家やビル建てて壊してまた建てて地面沸騰煮沸消毒

赤組が完全優勝した日から運動会は廃止になった

振り向いて「いたんだ」なんて言わないでいたんじゃないよいるんだ僕は

敵？味方？僕には人を見る目ない誰でもロックオンして殺れる

亀さんが仕込んだおくすり古かったうさぎさんもう第四コーナー

ダメージを受けた分だけ強くなるぼくはジャングルジムから飛んだ

広告で綺麗な人を目にすると喧嘩の顔を想像しちゃう

透明なお椀に熱いお味噌汁これが我が家のスノードームだ

羽のない扇風機から出る風は酢飯を冷ますのにちょうどいい

手札から召喚したら生贄にされたカードは墓地へと送る

交差点産まれ落ちたは救急車ピーポと鳴くのを見守っていた

かき分けて廊下の奥に進みゆくここは豆苗が生え過ぎた家

タイタンの手からでっかいレッドブル乗せた車が逃げ回ってる

署に届く怪盗キッドの予告にはコメダ珈琲ロゴがプリント

黒板で解いた問題ミスしたら全部消したいこれが覇道か

トレンドを掴んで作る新しいフォルダ(17)革命起こす

主なエサ「ひみつのアメ」のポケモンはでっぷり太って歯がボロボロだ

押し入れに仕舞い込んでて忘れてたミスター・ポテトヘッドから芽が

Amazonで買ったウサイン・ボルトには「封を開けたら当日中に」

「おはよう」を言うのも忘れ手を叩く「いま」からはじまるリズムにあわせて