ノリと勢いだけで生きてた頃の話
『夏』と聞いて思い浮かべるモノは何でしょう?
花火大会、プール、海水浴、キャンプ、バーベキュー、かき氷、冷やしシャンプー、ひと夏の恋…色々とありますね。
私が真っ先に思い浮かべるのは、ズバリ『お化け屋敷』です。
「三度の飯よりお化け屋敷が好きで、行きつけのお化け屋敷があるんだよねぇ〜」
…などということではなく、むしろ大の苦手なのですよ。
(お金をもらっても入りたくない!)
それくらい、苦手なのでございます。
まだ私が若くてピッチピチだった頃の夏のある日、男女4人で都内某所の老舗遊園地に遊びに行きまして。
ジェットコースターが骨董品レベルで、途中で壊れるんじゃないか?というほどでして(押しがけしないと動かないという古さ)違う意味でとても怖いことでも有名な遊園地です。
ちなみに当時そこでは『マ◯ファナドリンク』なる怪しげな飲み物(お酒)が売られており、売り子のおじさんが「クセになるよ〜」とニヤリとしながら渡してくれることでも知られておりました。
みんなでそのドリンクを面白がって何杯か飲みまして、勢いづいた4人の中の1人が
「お化け屋敷あったよね?入っちゃう?」
「いいね〜!」
ノリと勢いだけで生きてるような若さ弾ける私たちは、満場一致でお化け屋敷に入りましたよ。
中は当然暗く、最初は4人固まって行動していたのですが、鳥目の私だけ、かなり早い段階ではぐれてしまいまして。
元々あまりお化け屋敷が得意ではなかった私、仲間とはぐれてしまい急に心細くなり、ノリと勢いだけで入ってしまったことを激しく後悔しました。
昔ながらのそのお化け屋敷は、人形だけではなく、時々ホンモノのお化け(の格好をした人間)が、急に出てくるのですよ。
その度ギャーギャーと叫び声を上げ、あまりの怖さに思わず前を歩いていた知らない人のベルトを掴んじゃうほどビビりまくりまして。
首から上だけの人形が突如落ちてきたり、柳の影から冷風が吹き付けてきたりと、私の恐怖は極限に達しておりました。
それでも進まなければ出られないので、膝をガクガクと震わせながらも前へ前へと進みましたよ。
すると少しだけ明るさを感じ、外の賑やかな音が漏れ聞こえてきたので、
(もうすぐ出られる!)
安堵しながら急いでそちらへ向かおうとした瞬間、
「逃がさないぞ〜」
という声とともに、お化けが目の前に現れたのです。
あり得ないくらいの悲鳴を上げながら、文字どおり腰を抜かした私、尻もちをついてその場から動けなくなってしまいましたよ。
するとお化けが至近距離まで近寄ってきまして、怖すぎて半泣き状態でギャーギャーと声をあげましたら、そのお化けが
「そんなに驚かなくっても…大丈夫?」
と、フツーに話しかけながら、腰を抜かした私に手を差し伸べ、引っ張り起こしてくれたのでした…。
抜け殻状態でヨロヨロと外へ出ましたら、私の叫び声は外まで聞こえていたらしく、仲間3人がゲラゲラと笑いながら、
「あんなに大声あげるとかあり得ないんだけど〜!」
と、散々からかわれましたよ。
腰を抜かしちゃったことは口が裂けても言うまいと、固く心に誓った私なのでした…。
そんなわけでそれ以来、お化け屋敷の類には決して足を踏み入れないことにしているのでございます。