ルイ・ヴィトンを知らない人がいない裏側にある緻密な戦略
円鑿方枘(えんさくほうぜい)
→ 丸い穴に四角いほぞを入れる意から、物事が上手く噛み合わないこと。
物事が上手く噛み合わないことなど、この世に溢れている。
というよりも、むしろ噛み合っていることの方が珍しい。
噛み合わないことを嘆くのではなく、噛み合わせにいくことでビッグビジネスになる。
そんなことを考えさせられる、つい見入ってしまった記事がある。
誰もが知るルイ・ヴィトンが誰もが知るようになった理由
その記事は冒頭から惹きつけられる。
1854年、パリにある1軒の旅行かばん専門店からスタートしたルイ・ヴィトンはいかにして世界的ラグジュアリーブランドになったのか。そこには卸ビジネスから直営店ビジネスへ、バッグブランドからファッションブランドへという大きな戦略的転換があった。
ルイ・ヴィトンが誕生してから、167年という月日が流れているが、いかにして絶対的な地位を築いたのか、マーケティングやブランディングに興味のある人は必見の記事だ。
ルイ・ヴィトンはなぜ世界的ラグジュアリーブランドになれたか
(出典:日経XTREND)
ルイ・ヴィトンの歴史は、1854年に創業者のルイ・ヴィトン氏がパリに旅行かばん専門店を構えたところから始まる。
主に貴族層に向け、高度な職人技を用いた旅行かばんを提供するというのが、ルイ・ヴィトンの原点だ。
その後、産業革命で富を築いたブルジョワ層の顧客が増え、手がける商品も旅行かばん以外のバッグに拡大し、高級ブランドしての地位を築いていくことになる。
今やルイ・ヴィトンと聞けば誰もが想像できるLとVの文字を組み合わせたモノグラムが登場したのは1896年。
つまり、125年もの間、人々に愛されているということになる。
そして、第二次世界大戦後にルイ・ヴィトンはハイブランドビジネスの先駆けとして新たな戦略に打って出る。
それが、1970年代から直営店ビジネスに切り替えるというものだ。
この戦略の狙いが、限られた場所でしか手に入らない高級ブランドというポジションを築くと共に、利益率を上げるということに成功するのである。
そして、1980年代にはシャンパンで名高い、ヴーヴ・クリコと合併した。
両社ともにフランスを代表する歴史と伝統をもつ高級ブランドだが、領域が異なる。
異なる領域の企業が一緒になることで、ビジネスに奥行きがでるようになった。
1987年には、コニャックやシャンパンを主体としたモエ・ヘネシーと合併して、LVMH(エルヴェエムアッシュ = モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)となった。
さらなる展開を仕掛けようとしていたときに事件が起きる。
ルイ・ヴィトンに強い関心を持っていた、ベルナール・アルノー氏買収を仕掛けられたのだ。
LVMHとアルノー氏の間で壮絶な戦いとなり、業界内外から大きな注目を集めた。
1989年にLVMHはアルノー氏が掌中に収めるという形で決着がついた。
そのアルノー氏が指揮を取るようになったルイ・ヴィトンは、ファッションブランド化戦略に踏み込んだ。
アルノー氏の戦略を挙げてみよう。
・著名で力のあるファッションデザイナーを起用し、ブランドの顔として売り込むプロモーションを行う
・年2回行われるパリ・コレクションに参加し、話題を呼ぶ内容にする
・ファッション業界のサイクルをバッグに取り入れる
特に3つ目のファッション業界のサイクルをバッグに取り入れるという取り組みは、新たな価値観を植え付けた。
アパレルと一緒に新作のバッグを発表することで、半年前のものは古いモデルであり、次のコレクションに新しい価値があるというメッセージを発信。
バッグへの購買意欲をかき立てることに成功したのである。
ファッションアイコンであった服から目線をバッグ、靴、香水といった小物にも向けることが、流行の最先端であると強烈に発信し続けるブランディングが地位を築いた。
他のハイブランドも追随した。
ロエベやボッテガ・ヴェネタといった、バッグなどのレザーグッズをルーツにしているブランドがファッション性を強化した発信を行うようになった。
ここから、大資本がハイブランドビジネスを仕切るようになり、もともと独立系だったブランドが次々と大資本グループに買収されるという競争が烈火した。
まさにファッション業界全体に大きなうねりを成していったのである。
資金力を持ったブランド企業グループの拡大戦略とは?
創業一族の手を離れ、大資本グループが実権を握るようになった。
よりブランドを強固にしていくためにとった戦略は、ブランドの価値を測ってさらなる利益を生み出す余地ありと判断すれば、あらゆる手を使って買収するというものである。
具体的にやることは、下記のとおりだ。
・ブランドロゴを前面に出した商品を次々と出す
・アーティストやセレブリティーとのコラボ商品を数量限定で発売する
・よりコストの低い国でつくるなど、生産の効率化を図る
・ラグジュアリーなイメージのある高額な商品とともに、リーズナブルな商品を用意する
・憧れる層が少し背伸びすれば買うことができる商品を組み込み、新規顧客を獲得する
・ラグジュアリー感を演出するために、俳優やモデルなどを使った広告を大々的に行う
・ブランドストーリーを発信する
記事の最後の部分はこのように書かれている。
今の消費者が求めるものを、“攻め”として送り出せなかったブランドが、大企業グループの傘下に入ることで、時代にフィットした若々しいイメージに生まれ変わることは少なくない。ルイ・ヴィトンは大企業グループの緻密なマーケティング戦略のもとで成長した。そんな見方もできるだろう。
まとめ
資本力があれば、ハイブランドと同じことができると思っている人が案外多いように思う。
品質や原価率の低さを揶揄する声を耳にすることもあるが、ビジネスはそんなに単純ではない。
広告費をかけたからといって商品が売れるわけではなく、そもそも噛み合っていないものを噛み合わせにいくという、そのストーリーこそがマーケティングなのだ。
マーケティングが幾重にも成功していくことで、ブランドが生まれる。
ブランディングとは結果論にすぎないわけだが、そもそもブランドを作ろうとしなければブランドは決して生まれないのである。
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植田 振一郎 Twitter
株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。