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媚びへつらうこととマーケティングの境界線

巧言令色(こうげんれいしょく)
→ 口先が上手く、顔色をつくろって人に媚びへつらうこと。

仕掛けをするということは、口先が上手く、顔色をつくろって人に媚びへつらうことと紙一重である。

それを現代の用語に置き換えると、マーケティングやブランディングに近いところに当てはまることもあるわけだ。

極端な言い方をすれば、口先が上手いことや顔色をつくろって集客ができるのであれば、それは成功だという見方もできると思う。

媚びへつらっていると周りが評価したとしても、ある意味で結果は出せているということだ。

ターゲットを絞るという共通点

口先が上手く、顔色をつくろって人に媚びへつらうことも、そういう言動を取る人には目的があるわけだ。

その人に自分の売りたい商品を買ってもらいたいとか、自分のタイプの女性を掌中に収めたいという欲望がスタート地点にあり、ゴールも明確だ。

いわゆるペルソナの部分がしっかりあるわけで、目標を達成するために試行錯誤するというわけだ。

流石にそこに大きな嘘があってはいけないし、陥れるような犯罪行為があるのは論外だが、いろいろな駆け引きは当然行われるだろう。

こうやって考えていくと、マーケティングやブランディングに通ずるものがあるという見方もできるのではという主張をしている。

それから、口先が上手いとか人に媚びへつらっているという否定的な言い方は、少なからず相手に対しての嫉妬が隠されている場合も多い。

また、個人に向けてというところなのか、マスに向けてなのかといった違いも出てくるだろう。

いずれにせよ、ターゲットを絞るという部分では共通点があるということである。

ターゲットを絞ることで生まれる効果

改めて、ターゲットを絞ること、前出したペルソナの決定ということが重要だということに今回はテーマを絞ろうと思う。

なんでもあるとか、子どもからお年寄りまでとか、性別関係なくといったペルソナ設定は多くの人がしがちだ。

もちろん、ターゲットが広い方が母数も多い。

となると、1人でも多くの人に刺さるのでビジネスとしてはターゲットを広めに設定をしまいがちなのである。

とりわけ、認知を取りに行くときや広告を打つときには、少しでもリスクヘッジをしようとして、ついついターゲットを広げてしまいがちだ。

その心理は十分理解できるのだが、ペルソナ設定は本当に大切である。

というのも、ターゲットを広げすぎると。上手くいってもいかなくても、その理由が明確にならないから、次に繋がる動きができないからである。

くり返すが、少しでも多くという心理は本当に理解できる。

けれども、ここはこれでもかと尖ったくらいのターゲット設定をすることで、一点突破を図る方が理にかなっていることを改めて認識した方がいい。

ペルソナ設定の成功例

その理由は、御託を並べるよりも成功例を書いた方が説得力があるだろう。

ということで、わかりやすい事例を紹介しよう。

チュッパチャプスのV字回復

チュッパチャプスという名称を聞いて、ピンとくる人はどのくらいいるだろうか。

カラフルなパッケージに棒付きのキャンディで、一度は食べたことがあるという人も多いだろう。

そんなチュッパチャプスの売上はコロナ禍で大きく落ち込んだ。

全日本菓子協会の推定によると、生産数量、生産金額、小売金額は、2020年はいずれも前年比マイナス6%となり、統計を開始した1960年以降で最大の下げ幅を記録した。

深刻だったジャンルの1つがチュッパチャプスのカテゴリでもある、あめ菓子で、生産数量がマイナス18.5%、生産金額がマイナス12.9%、小売金額がマイナス15.1%と大きく落ち込んだ。

2021年は下げ幅が緩和されたものの、生産数量がマイナス0.9%、生産金額がマイナス0.6%、小売金額がマイナス1.3%と市場の縮小が続いた。

チュッパチャプスを食べるときを想像すれば、マスクをした状態でいかに食べにくいかは理解できるだろう。

それがマイナスになった大きな要因だとされている。

他にも、外出自粛による観光地の土産店、オフィスの需要減少、インバウンド需要の消失などが背景として挙げられる。

そんなあめ菓子のカテゴリで、チュッパチャプスに限っては、2021年に驚異のV字回復を見せているという。

コロナ禍前より約6%も売り上げが伸長する結果となった。

その要因の1つは、コロナ禍でもデジタルプロモーションを減らさずに行い、消費者への接触を継続したことにあると分析してている。

また、店舗のカバー率が高く、販売している店舗の割合であるコンビニの加重販売率は、2021年が96.9%と、ほぼ100%となっている。

そのため、情報に接触した際、つまりお店に入ってすぐに買える状態だったことも有利に働いた。

そして、コロナ禍が続いたことで、おうち時間が増えたからこそ、逆に食べる機会が増加したことも要因となって売り上げ増大に大きく寄与したとされている。

巣ごもりがチュパチャプスに与えた影響

なぜ巣ごもりがチュパチャプスを食べる機会が増えることに繋がるのか、そのロジックが説明できるだろうか。

日本では、棒付きキャンディーを人前で喫食するのを恥ずかしいとか行儀が悪いと思ってしまう傾向がある。

つまり、チュッパチャプスが好きな人でも、外出先などでなめることをためらってしまうというわけだ。

それがコロナ禍でおうち時間が増えると、他人の目がなくなったことで、思う存分喫食できるチャンスが増したというのである。

そしてもう1つ、後押しした大きなポイントがある。

それは、10代の喫食者が著しく増えたことだ。

2021年の売り上げデータを見ると、平均購入規模が10代女性では前年比169%を記録し、10代男性に至っては前年比670%と、約7倍に伸びているのである。

チュッパチャプスの仕掛け

果たして、チュッパチャプスはどんな仕掛けをして10代のハートを掴んだのか。

チュッパチャプスは、春と秋の年に2回ほど大型のデジタルプロモーションを行ってきた。

こうした定期的なプロモーションも水面下では役に立っているのだが、圧倒的な効果を発揮したのは、別の若者に刺さった取り組みだという。

それが、Z世代に多くのファンがいる古着テイストのアパレルブランドである、9090(ナインティナインティ)とコラボレーションして2019年から行っているSNS施策だ。

大前提として、チュッパチャプスがメッセージを届けたいターゲット、つまりペルソナは10代だ。

実際、小学生にはよく食べられているものの、中高生、大学生と成長するにつれて喫食率が下がっていく傾向があり、ここが大きな課題だったというわけだ。

子どもっぽいとか幼いというイメージが年齢を重ねていくうちに、チュッパチャプスを遠ざけていることがわかった。

ただ、平成時代のギャル文化が日本を席巻していた頃は、チュッパチャプスを路上などでなめながら歩いている人も目立ち、若者の間では、かっこいいものとか、かわいいものとして根付いていた。

その若者たちがときを経て30~40代の親となり、自身の小さな子どもに買い与えている。

これが、今のチュッパチャプスのボリュームゾーンが30~40代の女性になっている背景だ。

子どもたちがチュッパチャプスを手にとってくれるのはありがたいが、成長するに連れて離れていってしまっては、その子どもたちが親になるのを待たなければいけない。

同じ轍を踏まないためにも、Z世代に刺さるアパレルブランドとのコラボをするというマーケティングを行っているというわけだ。

また、時代の潮目を読み、仕掛けた商品戦略で若者の心を掴んだところもある。

それは、2021年3月、従来のサイズよりあめの大きさが一回り小さい新商品のチュッパチャプス ミニアソートを展開したことだ。

従来のチュッパチャプスはなめ終わるまで30分程度かかるのを半分にするというコンセプトの商品である。

これも10代のハートをしっかりと掴んでいるというわけだ。

まとめ

口先が上手く、顔色をつくろって人に媚びへつらうことと仕掛けを行うことは、紙一重だということが理解できただろうか。

延長線上にマーケティングやブランディングがあり、そこでは様々な戦略を元に日々戦いが起きているというわけだ。

口先が上手く、顔色をつくろって人に媚びへつらうことを得意としている人を毛嫌いすることなく、あえてそういった人をマーケティングやブランディングをさせる名目で仲間に引き入れてみてはどうだろうか。

案外上手く成果を出してくれるのではないかと思っている。


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株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。