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目立つデザインからブランド体験を取り込んだデザインへ

錦心繍口(きんしんしゅうこう)
→ 美しい心と美しい言葉のことで、詩や文章の才能にすぐれていることをいう。

美しさを求めることに関しては、敏感な方だと自負している。

それは身体的なこともそうだが、それよりもクリエイティブなことに関しての方が圧倒的に意識が強い。

具体的にいうと、なぜ風景やアートを見ると美しいと感じたり、独特の世界観に惹き込まれてしまうのかを考えることが好きだということだ。

直感という部分もあるのだろうが、やはり人の意識なので、そこにはなにかしらのルールがあって然るべきだと考えてしまうのである。

特に最近気になっているのが、看板やパッケージといった目につくグラフィックのことだ。

デジタルマーケティングが主流の今、アナログな広告媒体は嫌気される傾向にある。

Webサイト上でのABテストがもはや不可欠になっていることについても書いた。

マーケティングに欠かせないWebサイトのABテストの極意

様々なデータが取れる媒体が重要視されていることは、もちろん理解できる。

でも、テレビCM、雑誌、交通広告などへのいわゆる紙媒体のグラフィックが中心なマーケティングやブランディングは本当に時代遅れなのだろうか。

確かにどれだけの人にリーチしたとか、どの世代の人がどれくらい見たとか、そのあたりのデータは取りにくいかもしれない。

故に敬遠される理由もわかる。

けれども、だからといってグラフィック中心の露出に力を入れなくなるというのは間違っているとしか思えないというのが、私の出した結論だ。

変わりつつある小売業の商流

インターネットの普及によって、EC(電子商取引)による購買が当たり前になっていることは何度も書いてきていることだ。

そして、ECが小売業の商流を大きく変えつつある。

D2C(ダイレクト・トゥー・コンシューマー)ブランドの台頭が著しいのは、まさにその流れである。

改めて、D2C、つまり消費者直接取引とは、中間流通業者を通さずに自社のECサイトを通じて製品を顧客に直接販売することをいう。

中間流通業者とは、卸業者、小売店、販売代理店、プラットフォームなどのことを指す。

要するに、今まではブランド(メーカー)が商品を販売しようとしたときには、間になにかしら業者がいるのが当たり前だったのが、企業が消費者と直接繋がるようになったのである。

その結果、パッケージデザインにも大きな変化が訪れている。

D2Cブランドに共通するのは、ユニークなパッケージデザインだ。

その理由は、パッケージの役割が、認知 → 興味や関心 → 購入というプロセスから、購入後のリピート → ロイヤル化にあるからである。

そして、パッケージに求められる役割が店頭映えやわかりやすさからブランドらしさへと大きく変化しているのである。

同時にパッケージデザインがブランディングの要となり、大手メーカーがブランド体験を重視したパッケージを採用する動きも加速している。

D2Cが変えたデザインパッケージの概念

従来型の流通形態は、メーカーが商品を開発し、スーパーやコンビニなどの小売店が販売するというモデルだ。

その過程で、商品パッケージが担う主な役割は、認知を獲得して興味や関心を惹きつけて購入まで導くことである。

つまり、パッケージが最も活躍すべき場所はリアル店舗ということになる。

店頭でいかに目立ち、商品の特徴をわかりやすくアピールして消費者に買ってもらうかが重要となるわけだ。

一方、ECなどを介して商品を直接販売するD2Cブランドの場合はこの従来型のモデルと大きく異なる。

認知 → 興味や関心 → 購入というプロセスは導入部分であるECサイトが担い、消費者がパッケージの実物を目にするのは購入した商品が手元に届いたタイミングになる。

となると、パッケージの役割が従来型とは全く異なることは理解できるだろう。

これが、D2Cビジネスの本質ともいうべき、購入後のリピート → ロイヤル化のプロセスの部分だということになる。

D2Cで重要なのは、購入後にいかにリピートしてもらい、サブスクリプションによってロイヤルカスタマーを増やし、売上を伸ばしていくのかというところだ。

要するに、購入後に顧客との関係性を維持しなければならないという点が大きく異なるのである。

ということで、パッケージはブランドの世界観を伝え、愛着を持ってもらうという重要な役割を担うということになるのだ。

ただ、小ロットでパッケージを製造するとコスト高になるのが一般的だ。

そんな常識を覆すためにサポートしている企業が次々に登場して、D2Cブランドをサポートしている。

D2Cブランドのパッケージデザインの成功条件

こういったD2Cブランドにとって追い風の状況が揃っており、D2Cブランドのパッケージデザインの成功条件が見えてきている。

1)ブランドらしさを自由に表現

ブランドとして直接的な表現をすることが今までの主流だったのだが、感情に軸足を置いたデザインにすることは重要なポイントだ。

つい、商品がなんなのかをわかりすくパッケージに描きがちだが、かわいいとか美味しそうと感情に訴えるパッケージの方が惹かれやすい傾向にある。

感情を掴むことができれば、開梱後も部屋に置きたくなるという衝動にかられ、常に目にする場所に置かれることで愛着が増し、ブランドに対するロイヤルティーが高まるのである。

また、箱を開けるときの体験にフォーカスしたデザインも特徴的で評価が高い。

箱を開けるところからストーリーは始まっていて、開けた人の記憶に残るパッケージになっていれば、プレゼントされた側が今度はプレゼントをする側になる可能性も高くなる。

2)SNSについアップしたくなる

同じ商品のパッケージであっても、絵柄を変えたり、不定期に小分けにしたりして、なにが届くかわからなくするという手法がある。

同じ商品を別の人が購入した場合、届くパッケージが違えば話題にもなるし、ついSNSにアップしたくなるという心理を見方につけるのである。

また、パッケージの形も重要で、写真投稿のSNSといえばInstagramは欠かせない。

となると、Instagramに収まりやすいようにパッケージを正方形にするといった細かい気配りも消費者には刺さったりするのである。

3)コスト削減をさりげなく行う

D2Cの商流はブランド側が消費者に商品を直接発送する。

ということは、物流コストをいかに減らすかは収益を大きく左右する。

配送料は箱の大きさで決まるため、コンパクトにできれば配送料も抑えられ、倉庫での保管コストも下がるというわけだ。

エコの観点で、梱包箱を使わずに配送できるようにデザインされたパッケージも登場している。

コストを削減するだけでなく、素材としてFSC認証紙やバイオマスプラスチックを採用しているD2Cブランドは多い。

また、原材料の高騰などによる値上げが不可避となっていて、価格転嫁に伴う客離れを防ぐためには品質や使い勝手の向上と共にブランディングも重要になるというわけだ。

まとめ

マーケティングやブランディングという観点で座組を考えると、つい空中戦に力を入れがちだ。

もちろん、空中戦を強化することはやるべきなのだが、その要所要所にグラフィックのデザインというものが登場する。

そのデザインは、もはや単純に目立てばいいというものではなく、体験を伝えるものでなければいけないということだ。

どうやって体験が伝わったかをデータとして指標にすることは難しいところがあると思うが、感情に流されるのが人間なので、リアルの場でのデザインはまだまだ重要だということだ。

アナログを制すると同時に空中戦も制していくことをしっかりと意識しよう。


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株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。