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GDP世界第3位の日本のスタートアップにユニコーンが少ない理由

鶏口牛後(けいこうぎゅうご)
→ 大きな組織で歯車の一つとなるよりは、小さい組織でも人の上に立つ方がよいということ。

この言葉は結構昔から知っている。

それこそ、小学校くらいに父親が言っていたような記憶があるのだが、もしかすると今に繋がるマインドの1つになっているのかもしれない。

特段意識したわけではないが、スタートアップという環境にしかいたことがないのもそうなのかもしれない。

そして、すっかりスタートアップにいることのポジショントークをしている自分がいる。

【2021年】ユニコーン企業・デカコーン企業・ヘクトコーン企業の最新版

2022年に大型IPOが期待されているユニコーン

スタートアップで働くことに向いている人のマインド

こんな感じで、スタートアップ界隈のブログをいくつもアップしていることからもその傾向があることは理解してもらえるだろう。

そして、今回もそんなスタートアップのことについて書いていこうと思う。

日本のユニコーン企業数と世界の差

先述したブログ内にも日本のスタートアップの中でユニコーンと呼ばれる企業のことについて触れている。

改めて書くが、その企業数は10社だ。

アメリカが554社、中国が174社という現状から比べると、GDP(国内総生産)が第3位の日本と第2位の中国との差は歴然としている。

というのも、GDPが日本の3分の1しかない韓国が12社のユニコーンを排出しているのが現状だ。

これが日本のスタートアップエコシステムが機能していないといわれる所以だ。

それから、日本のスタートアップは、EXIT(イグジット)がIPOであるという特徴がある。

EXITとは、高い成長率が見込める未上場企業や企業再生を目指す会社などの株式を持つ創業者や出資者が株式を売却し、投資資金の回収および利益の獲得を行うことをいう。

つまり、創業者や出資者であるVC(ベンチャーキャピタル)や再生ファンドなどの出口というわけだ。

いわゆる創業者利益といわれるもので、IPO(株式公開)、M&A(バイアウト)、MBOなどが一般的な方法だ。

そのEXITが、日本のスタートアップは圧倒的にIPOが多いのである。

EXITの方法を3つ紹介したが、中でもIPOとM&Aの2つがほどんどだといっていい。

このIPOとM&Aのイグジット比率が日本のスタートアップは、8:2となっている。

ちなみにアメリカだと、IPOとM&Aのイグジット比率が3:7となるので、日本と全く異なっているとことは知っておくといいだろう。

なぜ日本のスタートアップのEXITはIPOが多いのか?

くり返しになるが、アメリカのスタートアップのEXITはIPOとM&Aのイグジット比率が3:7なのに対して、日本のスタートアップは8:2という逆転現象が起きている。

その理由は、大きくわけて2つあるといわれている。

1つ目は、大規模な資金調達の選択肢が限られていることである。

2つ目は、IPO(株式公開)の形式的な基準のハードルがアメリカと比べて圧倒的に低いことだ。

2021年の日本のスタートアップがVC(ベンチャーキャピタル)から調達した資金の総額は、90億ドル(約9,900億円 = 1ドル110円換算)となっている。

これでも2020年の前年比50%増となっているのだが、グローバルで見ると圧倒的に少ないといえる。

例えば、アメリカは1,280億ドル(約14兆800億円)、中国は1,300億ドル(約14兆3,000億円)なので、その差は10倍以上となっているのが現状だ。

そもそも、資金調達をするための手段が限られているということが、こういった現状からもわかる。

そんな状況下で動いたのが東京証券取引所、いわゆる東証だ。

株式市場を資金調達の手段として機能させるために、歴史的に緩やかな上場基準を採用してきたことが、日本のスタートアップがIPO主体のEXITになっている現状に繋がっているというわけだ。

東証は2022年4月には市場区分を再編し、マザーズとJASDAQを統合したグロース市場を新設している。

再編された東京証券取引所の内容についても以前紹介しているので、興味のある人は下記を参考にして欲しい。

2022年4月4日に刷新される東京証券取引所の市場区分

注目したいのは、再編されたグロース市場に上場するための流通株式時価総額の基準は、再編前のマザーズと同じく5億円と低水準に留まっている点だ。

これは、NASDAQの流動性要件が4,500万ドル(約58億5,000万円)なので、およそ12倍に迫る勢いだ。

では、この状況はいいことなのか、悪いことなのかについて考えてみよう。

IPO(株式公開)基準が低いことのメリットとデメリット

先に述べた流動性要件が緩やかであれば、スタートアップは市場から直接資金調達し、投資家の株式に流動性をもたらすことができる。

株式に対しては、多くの人が勘違いしているが、実はこの流動性というのが非常に重要になる。

1人でも多くの投資家を作るためには、やはり気軽に株が買える環境を作るしかない。

インターネットの普及がそのあたりにも大きな影響を及ぼしており、いつでもどこからでもネット証券会社にアクセスが可能となっている。

となると、あとは価格の問題で、数百円〜数千円で株が買えるとなれば多くの人が興味を持つだけでなく、実際に株の売買をするようになるだろう。

こういった資金、つまりお金に対する流動性を持たせることは、資金調達においては非常に重要なメリットになるということだ。

一方で、IPOするということは、公開市場の投資家から収益性を重視するようプレッシャーを受ける可能性もある。

要するに、企業の急成長は求められておらず、安定的な収益性を求められるようになることはデメリットに値するだろう。

スタートアップにおけるビジネスモデルは数年間は赤字覚悟で進めることも十分に視野にあるはずなのだが、IPOしてしまった以上、プロダクトや新規事業に対する風当たりが強くなるということだ。

なによりも、ユニコーンという一種のステータスになっている称号はなくなる。

なぜなら、ユニコーンとは、企業価値が10億ドル以上に達した未上場のテクノロジー企業のことを指すので、上場してしまっては、そのカテゴリには入らなくなるからである。

ただ、ユニコーンという称号に引っ張られすぎているという現状があることも忘れてはいけない。

どういうことかというと、日本にはユニコーンが少ないからといって、日本から優秀なスタートアップが誕生していないと決めつけてはいけないということだ。

実際に日本からも企業価値が10億ドル以上に達したというスタートアップは少なからず存在している。

企業価値が10億ドル以上に達した日本のスタートアップ

2011年〜2021年の間に日本で上場し、設立から12年以内に評価額が10億ドルに達した企業という枠組みで日本のスタートアップを見ると、41社ある。

いくつか有名な企業をピックアップしてみると下記のとおりだ。

  • ユーグレナ:バイオベンチャーで微細藻類を使った関連商品の製造および販売企業

  • ペプチドリーム:ペプチドを使った医薬品企業

  • ユーザーベース:NewsPicksや経済情報サービスのSPEEDAなどを提供しているソーシャル経済メディア

  • マネーフォワード:金融系のウェブサービスを提供

  • freee:事務管理を効率化するためのSaaS型クラウドサービスの開発および運営

  • Sansan:名刺管理サービスを提供

それでは、日本初のユニコーンはというと、今やほとんどの人が知っている企業だ。

2018年に評価額は10億ドルを超え、アメリカ進出をしているフリマアプリのメルカリである。

このように。評価額が10億ドルを超えている日本のスタートアップもそれなりにあるということは忘れてはいけない事実だ。

まとめ

日本はどんどんグローバルスタンダードから外れていっているという事実に関しては全く同感である。

けれども、ユニコーンが生まれないという嘆きも含めるということは目線を変えると少々異なってくるというわけだ。

スタートアップの中には優秀な企業がまだまだたくさんあるということを我々、stak, Inc.も見せつけにいこうと思う。


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株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。