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サントリーD2Cブランドの先駆けに。日本ワインブランド「SUNTORY FROM FARM 」が作り出すリアルな顧客体験

ザ・プレミアム・モルツやシングルモルトウイスキー山崎、缶コーヒーのBOSS。馴染みのあるドリンクを手がけているサントリーホールディングス株式会社。そんなサントリーで生まれた日本ワインブランド「SUNTORY FROM FARM」 。
会員限定でワイナリーに招待する特別な体験や定期販売を行っています。販売手法としてはオンラインショップとワイナリーでの販売が主流です。
D2Cという形態で販売する形で「SUNTORY FROM FARM」を運営している理由、そしてさまざまな国のワインがある中で日本ワインのブランドをD2Cとして注力している理由はなぜなのか、SUNTORY FROM FARMを運営している関島さんと岩崎さんにお話を伺いました。


お酒のスペシャリストとデジタルのスペシャリストのタッグ

ー SUNTORY FROM FARMについて教えてください。

岩崎:SUNTORY FROM FARMは2022年9月にスタートした日本ワインのブランドです。サントリーの日本ワインは、「SUNTORY FROM FARM」のブランドを通して、つくり手が日本の自然・風土と畑から向き合い、匠の技と愛情をこめて、時間をかけてつくりあげた魅力あるワインをお客様にお届けしております。

商品を購入いただくことはもちろんですが、ぶどう作りからワイン作りの物語にも注目いただくためにECやSNSといったデジタルの力も活用しています。
また日本ワインにこだわっている理由としては、サントリーの祖業がぶどう酒ということもあり、我々が大事にしている日本のものづくりの精神をお客様に届けていきたいという想いがあるからです。サントリーのDNAのようなものですね。日本ワインのものづくりならではの役割があると考えているため、私たちがスポットを当てることで産業に少しでもいい影響を作れないかと考えています。

SUNTORY FROM FARM ONLINE SHOP

ー SUNTORY FROM FARMを担当する前はどのような業務に従事していたのでしょうか?

岩崎:入社して約9年間はビールに携わっており、金麦・プレミアムモルツなどのマーケティングを担当していました。最終的には全てのカテゴリーを担当したと思います。あとは新商品開発も少し担当していました。その後は6年ほどスピリッツ事業部で缶チューハイの新商品開発に携わったのち、現在のワイン事業部で当初は紙パックやペットボトルなどのカジュアルなワインを担当していました。SUNTORY FROM FARMは2023年の9月から担当しています。

こう考えると徐々に扱う商品の単価が上がってますね。1,000円を超えるのは初めてです(笑)。さまざまなお酒を今まで取り扱ってきましたが、特に「嗜好品としてのお酒」に面白さを感じています。飲むことに大きな価値を感じていただけないとお酒は購入されない、特にワインはお酒の中でも高価な部類になるため、今までの領域とは違うチャレンジだと思っています。

サントリー株式会社
ワインカンパニーワイナリーワイン事業部 日本ワイングループ 岩崎さま

関島:私は最初の3年はビービットという会社でWebのコンサルタントとして、損害保険や新聞社のウェブの解約率改善やCVRの向上施策などのサポートをしていました。

その後2年はコンサルティング会社で、オムニチャネル戦略や営業研修のお手伝いをしていました。営業の方々が複数商材を扱っている中、どの商材に注力することが売上最大化に繋がるかを紐解き、その商材の売上を高めるために必要な営業トーク抽出/体系化などを行いました。その後、2018年にサントリーに入社し、丸5年ちょっと経過しました。

入社したばかりはデジタル人材育成に従事していました。サントリーでデジタルマーケティングの部署が本格的にできたのが2017年。その1年後だったのでデジタルの知見や研修体系を整備している状態でした。そのような状況だったので今まで培ったデジタルの経験と、企業の研修制度の整理の知見を生かすようなことをしていました。

その後はサントリープラスという自動販売機と連携して健康経営を推進するアプリなどの立ち上げやウイスキーをAmazonでどう販売していくかといったことにも携わっていたこともあります。

日本ワインの仕事には2021年の6月からジョインしました。当時はSUNTORY FROM FARMというブランド名ではなかったため、「ワイン日和」という名称でオンラインショップの立ち上げを開始しました。

SUNTORY FROM FARM オンラインショップの前身、ワイン日和はサントリーの中でも最初期に立ち上がったD2Cサイトです。将来、輸入ワインやウイスキーの自社のECサイトを立ち上げていきたい野望が会社としてはあり、その足がかりとなる挑戦でした。ただ当時は会社にD2Cの知見が少なかったため、デジタルの世界で今まで生きてきた私が微力ながら担当させていただいたという背景があります。

今はサントリーの中でもD2Cはかなり拡大しており、Shopifyを活用したブランドは20ブランド以上が立ち上がっています。

サントリーホールディングス株式会社
デジタル本部 デジタルマーケティング部 関島さま

顧客理解が必要に 日本ワインの強みと課題

ー 売上の観点だけ見ると既存チャネルの割合が圧倒的であるサントリーがD2Cにここまで力を入れている理由はなんなのでしょうか?

関島:おっしゃる通り、サントリーの売上のほとんどは既存チャネルがメインです。小売さんに商品を取り扱ってもらうことで多くの消費者の皆様に商品をお届けできています。そのため、小売さんには大きな信頼を寄せている一方で、どうしても店舗の棚には物理的な限界が存在します。またコロナで明らかになったのが卸依存への危機感です。

そのため、どのようなお客様に、何をお届けするべきなのかを自分達で理解し、改めて私たちの価値はなんなのかを直接お客様に向き合うことで再認識する必要性が出てきたと感じています。そのための1つのチャネルとしてD2Cを推進していく流れが出てきました。

もちろんD2Cを進めていくために小売さんとの関係性は今のまま続けていきたいと考えているため、既存商品もさることながら、ワイナリーとオンライン限定発売の商品も多く取り扱っています。

岩崎:そのような観点ではSUNTORY FROM FARMが取り扱う日本ワインワインは単価が高かったり、飲用頻度がそれほど高いものではなく、ハレの日に1本開けよう!となるような商品だと思います。

そしてワインの中でも日本ワインに興味を持っていただける方々はものづくりや商品の背景にあるストーリーが好きな人が多いです。そのため日本ワインは、棚にただ置いておくのではなく、コミュニケーションを通して購入していただくことに有効な商品だと思っています。

SUNTORY FROM FARMではワイナリーから直接お届けというスタイルなのですが、これも一つの体験として喜んでいただいています。

ただ、ワインと聞くとほとんどの方はヨーロッパやカリフォルニア、新世界をイメージされると思います。ワインが好きで、さまざまなワインを楽しんだ結果、日本ワインが好きという方ももちろんいらっしゃると思いますが、SUNTORY FROM FARMのお客様は日本のものづくりが好きな方が多いように思います。

地産地消という言葉もよく聞くフレーズかなと思いますが、日本でワインを製造している北海道・山梨・長野に馴染みがある方だとぶどう畑の風景も浮かんでくると思います。その地域でワイン作りに頑張っている人たちがいて、あそこのワイナリーが作った商品だよとPRすると地元の方々にはとても応援していただけます。地域の皆さんと一緒に頑張っているのも日本ワインの魅力の一つかなと思っています。

とはいえ、課題は山積みです。日本ワインの魅力をどのように伝えられるのか、ワイナリーの方の言葉をどのようにデジタルに反映すべきなのか、PRの勝ちパターンなどがあるわけではないので、試行錯誤を重ねている段階です。

関島:少し生々しい発信の方が反応がいい傾向にあったりします。例えば、Instagramがわかりやすいんですけど、以前は代理店に依頼をして綺麗な食卓にワインを置いておしゃれな撮影を行なっていたこともあったのですが、今は畑の風景や人の顔を出している時の方がエンゲージメントが高い傾向があります。少なくともInstagramは着飾りすぎるのはよくないと考えています。

Instagram:https://www.instagram.com/tomi_no_oka_winery/

岩崎:また日本ワインに興味を持ってくれる人を新規でどのように増やしていくかというのは特に苦労しているポイントです。

デジタルの領域では、ワインの味や香りを伝えることはできません。またワイナリーに足を運んでいただければ体験できる価値も文字情報だけではなかなかお伝えできないことも多いと感じています。

一方でワインそのものをECで購入することは徐々に増えていると思っています。ワインをお店で購入すると重いし、荷物になってしまうので。

ただSUNTORY FROM FARMだと日本ワインということもあり、サイトを見つけてもらうことがまだ多くありません。関島さんのおかげで日本ワインの検索ではかなり上位に表示されるようになったのですが、それ以外の方々の接点をどのように増やすのか、また接点を持てた後はどのような体験を提供するのか、常に考えていることですね。

関島:やはり日本ワインを飲むユーザーはまだ多くありません。新規の方との接点をどう作るかに関しては難しい課題だと思う一方で、ワイナリーがあることは大きな武器だと考えています。

ワイナリーに訪れた方は多くの方が会員登録をしていただいており、メルマガやSNSでの接点を作れています。ワイナリーでの体験が口コミとしてSNSを通して広まっていくような取り組みは今後チャレンジしていけるかなと考えていますね。

リアルな体験の重要性。お客様への感謝から生まれた会員プログラム

岩崎:顧客体験の戦略の中で重要な立ち位置になってくるのがワイナリーでの体験です。リアルな体験とデジタルの戦略を掛け合わせることで効果を最大化していこうと考えています。

SUNTORY FROM FARMで取り扱っているワインを手がける登美の丘ワイナリーは熟成庫や畑の見学ができるようになっており、ワインショップ・テイスティングカウンターでは試飲も可能です。体験から購入、家に帰った後にECで再購入というサイクルがうまく回せるようになりつつあります。

一方、素晴らしい商品を抱えているワイナリーでも見学や体験の場がないと、お客様の心を掴むポイントが少なくなってしまい苦労しています。この辺りの環境整備をSUNTORY FROM FARMとして現地の方々と整えていくことも見据えて日本ワインを気軽に体験できるリアルな場づくりには注力していきたいですね。

Stackメンバーも登美の丘ワイナリーツアーを体験させていただきました。
試飲したワインに感動し、その場で購入するメンバーも。

ー 会員ランクが一定以上の特別なお客様向けにワイナリーでのイベントを開催したと伺いました。会員ランクのスタートはどのようなきっかけがあったのでしょうか?

関島:サントリーの日本ワインを好きになっていただきたいと考える中で、ワイナリーのツアーを始めとした特別な体験の提供は欠かせないと思っています。そのため、商品を一定ご購入いただいたお客様には感謝の意味も込めてお返しができればと考え、会員プログラムを導入しました。

会員プログラム「FROM FARM Club

岩崎:SUNTORY FROM FARMはまだスタートしたばかりのブランドです。そのため、すごく好きになってくれるお客様と一緒にブランドを成長させていきたいという考えがあります。相互にコミュニケーションを取れる、そのような土台を会員プログラムを通して作り上げていこうと考えています。

試験的ではありますが、実際に会員ランクSilver以上のお客様を対象に登美の丘ワイナリーで夜にイベントを開催しました。普段夜は営業していないのですが夜景が素敵なのと、特別な体験としてはぴったりだと考え企画しました。

食事後は焚き火を囲んだり、ホットワインを楽しんでいただいて満足度の高いイベントになったかなと思っています。今後もワイナリーを軸に、このようなイベントは考えていきたいと思っています。

「FROM FARM Club」ゴールド・シルバー会員様限定イベント

関島:会員プログラムはStack社のVIPを導入しているのですが、まだ取り組めていないことも多いです。Silverの会員が増えたといった結果だけを追いかけるのではなく、そもそもお客様とどう向き合うべきなのか、それによって会員ランクをどのように引き上げていくのかといった戦略などは引き続きご相談させていただければと思っています。

SUNTORY FROM FARMがサントリーにもたらす価値

岩崎:会社全体から見た時、決して大きな売上を上げるカテゴリーの商品ではありません。そのため質にはこだわっていきたいと考えています。日本ワインを通して作り手の想いやこだわりをお客様へお伝えし、サントリーのものづくりに感動いただけるような姿勢を示していきたいと考えています。直接、お客様と接する私たちだからこそできることだと考えています。

関島:今、SUNTORY FROM FARMは試行錯誤ができる状態です。良くも悪くも現場で迅速に意思決定ができるので、大手企業ではなかなかない環境だと思います。

ECを運営している人は共感してくれると思うんですけど、どうしても足元の売上を見てしまいますし、施策や取り組みも短期的な取り組みに比重が寄りがちなのですが、SUNTORY FROM FARMでは会員プログラムや特別な体験を提供し、長期的にお客様が満足するような施策に徐々に取り組めればと思っています。

お客様に喜んでいただくような取り組みの中には直接数字で測りきれないことも正直多いのですが、結果的に数字につながると考えています。

SUNTORY FROM FARMでは定期購買をしていただいている会員は、弊社の他のD2Cサービスと比べても高い傾向にあります。やっぱりSUNTORY FROM FARMとして提供している体験や価値に共感いただいているからこそ、会員が増えていくのだと思っています。

このような小さいチャレンジを通して、まずはSUNTORY FROM FARMで再現性ある取り組みを行い、サントリーのD2C事業に横展開できるようなノウハウをためていきたいと思っています。

編集後記

ワインと聞いて日本を思い浮かべる人はほとんどいないと思います。私自身、今回、取材の話をいただいた際、日本ワイン専門というブランドコンセプトに新鮮さを感じました。しかし取材ではmade in Japanへの並々ならないこだわりを感じました。このこだわりが世界に評価されるお酒をサントリーが生み出し続けてこれた、一つの理由なのかもしれません。

SUNTORY FROM FARMではワイナリーでの特別な体験や会員プログラムを掛け合わせるなどさまざまな取り組みを行なっています。ただ何よりも関島さん・岩崎さんの想いや熱意こそが顧客から支持を受けている理由なのではないでしょうか?

山崎を代表とするジャパニーズウイスキーのように、日本ワインが世界で注目されることも今後あるかもしれません。そのきっかけにSUNTORY FROM FARMが関わっているなんてことも今後あるのかもしれない、そんな考えに耽りながらこの記事を執筆しました。

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Stackについて

Stack Inc.は、SaaS型小売基幹システム「SQ」と、Shopify機能拡張の提供を行っております。2021年4月にブランドがモバイルアプリを構築・運用できる「Appify」を、2021年10月にブランドがロイヤリティープログラムを展開できる「VIP」を正式にサービス公開し、機能の改善・拡大を続けてきました。今ではStackが提供するサービスは200以上のマーチャントで導入されています。

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