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ファンの熱量をアプリが支える 熱狂的なファンが生まれ続けるyutoriの戦略

2023年12月27日、東証グロース市場へ上場を果たしたyutori。会社設立5年目にして上場を達成しています。アパレル企業では最短・最年少の記録。20を超えるブランド数を保有していますが、運営しているECサイト・アプリは「YZ-STORE」1つずつ。ブランドそれぞれがどのような取り組みをしているのか、そして上場後のこれからの戦略についてお話を伺いました。

右から 株式会社yutori 代表取締役 片石さま
同 プロデューサー 濱田さま
同 プロデューサー 青嶋さま

ブランド統合による相乗効果

ー yutoriは24ものブランドを保有(※2024年1月時点)しています。以前はそれぞれブランド独自のサイトとアプリに分かれていました。ECサイトとアプリを統合した理由はなんだったのでしょうか?

濱田:一つはシンプルに運用が大変なことです。例えば何かツールを導入したいと考えた時、全ブランドに導入しなくてはいけないのか、特定のブランドのみなのか、といった運用の課題は大きかったです。

もう一つはブランド同士の相乗効果です。

統合する前はストリートを軸にしたブランドが多く、ターゲットとする顧客層が被っているのではないかという仮説がありました。統合前にお客様のメールアドレスを照合してみると複数のブランドで購入している方が全体の10%ほどを占めていました。この割合が数%でも増えると全体の売上に大きく影響してくると考え、一つのサイトとアプリにお客様を集約し、ブランド同士の相乗効果を狙っていました。

yutoriが保有する24のブランド(※2024年1月時点)

ー ブランドの統合をしていくにあたり、ブランドそれぞれのプロデューサーからはどのような意見があったのでしょうか?

濱田:ブランドが伝えたい世界観が薄くなるのではという懸念はもちろんありました。そのため開発の段階から、ECサイトを制作していただいたR6Bさんにブランドページの見た目について相談させていただき開発してもらいました。また各ブランドのSNSからは直接ブランドページに導線があるので、ブランドの世界観を損なうことなく運営できています。

片石:プロデューサーの立場から考えると、サイトの改善は緊急ではないけど重要度は高い。しかし、足元の商品企画などに集中しているとそこまで手が回りません。そのため多少不安はあったと思いますが、抜本的に顧客体験が全体を通して良いものになるのであれば、問題ないという考えは共通認識としてありました。

ー サイトの統合後の2023年の4月からアプリも1つにまとめました。アプリに関してはどのような戦略・施策で運用をしていますか?

片石:Stack社とは2021年に「9090」のアプリを構築してもらったのが始まりです。当時から他のブランドでの実績も聞いていましたし、特に抽選販売ができることが大きかったです。

濱田:アプリの統合に関しても、今までのアプリを通してお客様の熱量や売上の状況も把握できていました。そのため、YZ-Storeにも引き続き熱量の高いお客様が集まってくれればと考え、統合の際も依頼をさせていただきました。

アプリだからこそできる施策はいろいろあるのですが、アプリユーザー限定で5分前に商品を購入できる取り組みはアプリユーザーの増加に寄与しています。お客様のニーズとしても5分前でも早く購入できるというのを魅力的に感じていただけていることを認識できましたし、それほど熱量の高いファンを集約できているのは大きな資産だと思います。

アプリユーザー限定、5分前購入を喜ぶユーザーは多い

その他にも抽選販売を行った際、アプリのDL数が1日に1,200を超える日もあり、手応えを感じています。

片石:あとはyutoriのお客様は若い方が多いので、メールを見る習慣はほぼありません。アプリであれば通知をスマホのプッシュ通知で送れます。アプリ以外ではLINEアカウントもリピートを促す施策になると思いますが、アプリから取得できる情報、ECサイトと連携できる情報はアプリの方がさまざまな施策に転換できると感じています。

濱田:今は店舗とECの情報連携を進めていますが、アプリを運用していたからこそ、yutoriのコアなお客様のデータが正しく取得できていると感じています。CRMやOMO施策を行う上でアプリを運営していて助かったことは非常に多いですね。

組織づくりがブランドの成長をサポート。熱量の高い顧客が増える理由

ー yutoriの顧客は非常に熱量が高い方が多いですが、熱量を高めるために何か施策を展開していたりはするのでしょうか?

片石:一番注力しているのは根本的な商品企画やプロモーションがお客様に刺さるかどうかです。Instagramは各ブランド毎に運用していますが、きちんとお客様が欲しいものを魅力的に訴求できている。この本質がずれてしまうとお客様の熱量は下がってしまいます。

yutoriでは、ストアの統合後も各ブランドごとにInstagramを運用する

この本質的な取り組みに再現性を持たせるために、クリエイティブディレクターはお客様と同年代の20代前半のメンバーが担当することが多いです。そしてMD兼ブランドプロデューサーが30歳前後のメンバーで、そのほかにSNS運用、サプライチェーン周りを担当するメンバーの3~4人が1チームになっています。20代前半の尖った感性に加えてロジカルな戦略を組み合わせることで、お客様から支持を得られるブランドが育っています。

さらにyutoriではブランドの成長フェーズに応じた「Yリーグ」という仕組みがあります。ブランドの成長に伴って、いくつかのフェーズがあり、そのフェーズに合った取り組みができるよう会社としてサポートしています。最近実はブラッシュアップを行い、メンバーの感情を言語化するようにしました。

yutoriが掲げるYリーグについて

今まではこれくらいの売上になったら店舗出店を行なって、のような戦略や施策ベースだったのですが、ここにブランド担当者の感情を踏まえるようにしています。例えば、Y3(月商1500万円〜2500万円)だとブランド認知が取れてきた一方で、マスに広がりつつあるのでブランドの濃度を保つことが重要になります。その時にクリエイティブディレクターが抱える悩みはyutoriのブランドにとって共通の課題です。

Y3を超えたブランドが何をしてきたのか、その結果ブランドの成長にどのように影響したかに加えて、メンバーがどんな感情になるのかの言語化まで進めました。

クリエイティブな商品企画はかっこいいものが売れるで問題ないのですが、何を作るのか・何を施策として取り組むべきなのかということはロジカルに体系化されています。

ブランド数が多いからこそ、経験やノウハウを体系化し、再現性を作れたからこそ、熱量の高いお客様が増えているのだと思います。

ノウハウを体系化するために、Yリーグごとに売上が近いブランドが集まる横串の会議と、MD・マーケ・クリエイティブなどの職種毎に縦串の会議も活発に行なっています。

濱田:ブランド毎に自由にやれることも多いのですが、ディレクターはいいものをたくさん作りたくなってしまいます。その結果、どこに投資するのか、今集中すべきことは何なのかを見失わないように会社全体でサポートしています。

結果、ブランド数が20を超えても濃いブランド体験が提供できています。自分達のお客様にブランド毎に向き合いつつ、やりたいことができている状況だと思います。

ー 改めて顧客の熱量の話を伺うと、アプリがうまく継続率に繋がっているようにも感じました。

濱田:アプリの性質上、既にyutoriの何かしらのブランドを知ってくれた方がDLしてくれる傾向が高いです。そのおかげもあってか、アプリにおけるF2転換は39.4%。ECの18%と比較すると倍以上と非常に高くなっています。

アプリ経由の売上比率もどんどん伸びていて、今はEC全体の約37%がアプリ経由の売上です。全体顧客のうち、半数がアプリをDLしているというデータも出ていて、インフラとして欠かせないものになっています。

店舗戦略にも本格的にチャレンジ 会員プログラムを活用したOMO戦略

ー 2024年は店舗展開にもより一層のチャレンジをしていくと伺いました。

片石:店舗には2つ種類があります。フラッグシップと一般の店舗です。Y3(月商1500万円〜2500万円)くらいのフェーズでは東名阪を中心にお客様がリアルに買ってくれる場所を増やします。1ブランドで4~5店舗ほどになるとブランドの濃さが薄まっている見方もできるので、9090のようなフラッグシップのようなブランドの世界観がダイレクトに伝わる店舗を作る。このミックスした戦術をフェーズ毎に展開していきます。

東名阪以外にも福岡や金沢といった地域にも出店を予定しています。

青嶋:店舗を展開する際に参考にしているのは、ポップアップを開催したときのデータです。金沢などはセレクトショップも多い地域でファッションが好きな方が多く、ポップアップの際も他の地域より成果が良かったのです。

店舗展開を進めていくために必要なことがECとのデータ連携です。2024年3月からはデータ連携がスタートし、yutoriが運営しているどの店舗で購入しても顧客情報が紐づいているので会員プログラムの恩恵を受けることが可能になります。

この仕組みはShopify・スマレジ・OmniHub・Appify・VIPを組み合わせることで実現していきます。

少し前だと、0からシステムを構築しなくてはデータ連携ができず、多額の投資と時間をかけなくてはいけなかったのですが、この仕組みであれば時間も費用も大きな負担にならない形で運用が可能になります。

アプリの販促も店頭でしやすくなるので、店舗で初めて接点を持った方々が今後お客様として増えていくことも期待しています。

濱田:店舗強化に伴い、会員プログラムも見直しをおこなっています。より会員ランクが上がりやすくしたり、「体験」にフォーカスしたプログラムを用意できないか今まさに相談中です。

青嶋:その他にもStack社に期待していることとしては店舗在庫をアプリでも見れるようにしていきたいですね。やはりアパレルのアイテムを実際に見てから購入したいニーズは誰にでもあると思います。近くの店舗の在庫がアプリから見たりすることができると顧客体験もとても高いものが提供できると思います。

目指すは日本一のブランド保有企業へ

片石:yutoriは今後もブランドをどんどん増やしていく予定です。目標は1年間で10ブランドの収益化。これが達成できたら5年後にはブランド数は70を超えます。

yutoriの本質は誰かが持っている偏愛を社会とクリエティブで結びつけること。偏った好きなものを会社の中でさまざまな形で混在し、カオスでもありながら調和されています。これからは子会社も増えていくと思いますし、会社の経営も200億や300億やそれ以上を目指して広げていかなくてはいけないと考えています。

その状態でも会社としての強度や練度を強くしていくことが重要になる中で、ブランド保有数日本1位を達成し、若者の帝国を築き上げていきたいと考えています。

ー yutoriが目指すゴールをStackも一緒に伴走できればと思っています。Stack社へ期待していることを最後に教えてください。

青嶋:AIを活用した在庫適正化などもStack社と一緒にやっていけたら面白いと考えています。アプリや会員プログラムを通して売上を上げる施策やデータ分析ができるので、さらにワンランク上げてMDや企画の観点にもStack社と取り組んでいきたいです。

片石:Stack社は企業が抱えている課題をテクノロジーを通して解決してくれます。アパレル業界の中ではクレバーな立ち位置にいると思っていますし、価値のある企業です。だからこそStack社がどのような価値を今後も提供していくのかが業界全体のレバレッジに影響してくると思います。アプリ・会員プログラムはもちろんですが、業界の課題解決を包括的にしてくれることに期待しています。

編集後記

今回の取材を通してyutoriは、ロジカルで体系的な組織という印象を新たに持ちました。各ブランドの成長フェーズを図るYリーグ、ブランドごとのノウハウを共有するために別のブランド同士の会議を定期的に行っていること。若く尖ったセンスを持つ人材が最大限力を発揮できる場がyutoriにはあると感じました。

多くのブランドを運営しており、これからもその数を増やしていくことを目指しているyutori。一つ一つのブランドの濃さを維持していくことでコアなファンを育てています。新たなブランドを立ち上げて、新規顧客にアプローチしていく戦略は、そのブランドが軌道に乗るかが非常に重要になります。この仕組みがすでに作られており、上場を遂げたこれからがより楽しみになるインタビューでした。

2024年3月から実店舗の戦略も大きく動き出します。リアルで提供できる体験はECよりも強烈になります。yutoriが仕掛ける実店舗戦略にも注目していきたいと思います。

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Stackについて

Stack Inc.は、SaaS型小売基幹システム「SQ」と、Shopify機能拡張の提供を行っております。2021年4月にブランドがモバイルアプリを構築・運用できる「Appify」を、2021年10月にブランドがロイヤリティープログラムを展開できる「VIP」を正式にサービス公開し、機能の改善・拡大を続けてきました。今ではStackが提供するサービスは150以上のマーチャントで導入されています。


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