【発達凸凹キッズ】イレギュラーの苦手さは、改善する?
こんにちは、子どもの発達を支える言語聴覚士、三輪桃子です。
最近では、発達障がいも含む発達凸凹キッズの中には、「いつもの流れ」「いつものやり方」にこだわり、いつもではないこと=イレギュラーなことにとても苦手を示す子がいます。イレギュラーなことが起こると、ぎゃー!と泣き叫んだり、固まって全く動けなくなってしまったりと混乱を示す場合があるので、大人としては「この状態はいつまで続くのだろうか…」と途方に暮れることもあるといいます。この記事では、イレギュラーの苦手さの背景から、対応策や予後について考えていきたいと思います。
※この記事は、小児科医の石川道子先生と言語聴覚士の三輪で行っている「発達凸凹キッズの集団あるある」と題したInstagramライブをまとめているものです。ぜひ、Instagramも合わせてご覧ください。
ライブリンクはこちら⇩
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イレギュラーが極端に苦手なのは、なぜか?
誰でも、何かに取り組もうと思うと、問題なく上手くできる時と、場合によっては上手くできないことがあります。人間には、上手くできなくて多少ショックを受けたとしても、「仕方ない、次がんばろう」とか「〇〇な部分はよくできていたよな」のように切り替えたり、自分を励ましていくことで、立ち直っていく力が備わっています。
しかし、発達凸凹キッズの中には、上手くできない時の、ショックの感じ方が並外れていて、立ち直るのは大変な子がいるです。「まあこんなこともある」とか、「次いこう」といった切り替えや調整をすることが上手くできません。
発達凸凹キッズの中には、上手くできない体験を絶対にしたくないので、問題なく上手く出来ることを、重大事項と捉える子がいます。そして、問題なく上手く出来ることをしようと思うと、「いつもの流れ」に沿うことが多くなり、反対にイレギュラーなことに抵抗を示すというわけです。
いつもの流れに沿った行動は、確かに子どもを安心させますが、本人にとって大丈夫なことしか経験しないと、出来ることが増えるスピードがゆっくりになるという側面もあります。
幼児期の発達は、周囲に対する限りない好奇心と、自分で挑戦するための方法を考え出すことで、広がっていきます。発達凸凹キッズのように、慎重すぎたり、今あるもので十分ですという性質だと、発達のテストでは、未経験のものが増えて結果的には点数が低くでることがあります。
いつもとは違う経験を積むためには
大人としては、子どもがいつもと同じ状況に留まっているのではなく、好奇心をもって経験を広げていけるよう、サポートしていきたいものです。
そこで前提になるのは、子どもが不安な状態では、いつもとは違う新しいものに関心を広げることや、学習に繋がりにくいということです。逆に言えば、子どもの気持ちが、楽しい・嬉しい・面白い時の方が学習が進みやすいと言えます。極端ですが「気分が良いから受け入れちゃおう」といった感じになりやすいのだと思います。だから、イレギュラーな苦手な子に対しては、大人は「安心を作る」ことを大切にしたいです。
ただし、子どもがこだわるパターンを大人も同じように過剰に守ろうとすると、あまり好ましく結果になります(子どもがいつもの流れに余計にこだわるようになる等)。
大人は、子どもにとっての安心感を担保しつつ、「いつものこと」と似ているけど、ちょっとだけ違う経験に広げていきたいのです。例えば、先生や親御さんがいることで子どもにとっての「安心」を確保し、大人と一緒でも良いので少しだけ新しいことに挑戦していきます。
いつもと違うから、パニックになった時には
「いつもと同じ」を求める性質は、時には、イレギュラーが起こった時のパニックに繋がることがあります。大人は、子どもをパニックにさせたくないという思いと、それでもいつもとは少し異なる新しい経験をさせたいという葛藤の中で揺れます。
もし、子どもがイレギュラーなことに対して大きく崩れた時は、大人は「いつもと違うのは、嫌だもんね。」「泣きたくなるよね。」と言葉をかけてあげると良いと思います(本人はパニックの時は何も聞こえていないこともありますが)。
ポイントは、大人は慌てずに「イレギュラーな時は、当然パニックになるよね、わかってるよ」といった落ち着いた態度でいることです。そして、最終的には泣き止むまで待つことが重要です。
パニックになっても、大人が最後まで見守ってなんとか落ち着くところまでセットで経験できると、「騒いだところで事態は変わらない」「自分で落ち着くしかない」と子どもが気づいていきます。
最もやってはいけないことは、「泣いているから、いつもの流れに戻す」ということです。子どもは、泣き続ければ、いつもの流れに戻してもらえる/好きなものがもらえると勘違いしてしまいます。元々は意図的に泣いていたわけではなくても、この勘違いが起こると、後々似たような場面があった時に、意図的に泣き叫ぶ行動に出る子がいます(誤学習行動)。大して気分的に害していない状況でも、大人に対応して欲しいので同じような程度で泣き叫ぶのです。
誤学習につなげないために
誤学習を防ぐために大切なことは、繰り返しになりますが、強い混乱状態になれば、泣き止むまで待ち、泣いたことで事態が変わらない経験をすることです。しかし、大人としても、時と場合によって、いつでも子どもの混乱に付き合えるわけではないと思います。
そこで、イレギュラーなことに対し、混乱することが予測される子に対しては、「混乱する前の対策」が重要になります。
イレギュラーの苦手さは、イレギュラーなことに遭遇した時の気持ちの調整が上手ではないことに加え、「予測が弱い」性質が影響していることがあります。例えば、ゲームでいつも勝ってばかりいる子は、「まさか自分が負けること」は予測できていないので、負けるというその子にとってイレギュラーな事態で大崩れします。
なので、言葉の意味がよく分かるようになった子だと、「いつもと違うことが起こるけど、頑張れるかな?」と伝えて見通しを持たせます。また、「慣れて無いから、上手くいかないかも」のように予め失敗する可能性も示しておきます。
最初は「絶対出来る!」と言い張る子もいるのですが、万が一上手くいかなかった時に「やっぱりね、新しいものだからね。」と大人が気持ちをなだめるきっかけになります。そういった経験が積み重なると、だんだん「新しいことは苦手なんだな」と自分自身で気がつくきっかけになります。
この時にポイントになるのは、子どもが責められたり、非難されたりしないことです。「いつもすごく上手に出来るけど、新しいものって難しいよね、大人だってよくあることだよ」と落ち着いて説明すると良いと思います。
就学すると、先生が子どもにつける時間が減るし、嫌でも失敗体験が入ってきます。そこで、気持ちの切り替えが上手くなってないと、例えば学習が苦手でない子が、学習での失敗体験を過剰に嫌がって学習嫌いになることだってあるのです。
ですから、丁寧にイレギュラーの苦手さに対して向き合い、気持ちを調整する練習ができるのは、幼児期なのだと思って、園や家庭で対応できると良いと思います。