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詩歌ビオトープ025:佐藤佐太郎
詩歌ビオトープ25人目は佐藤佐太郎です。
そもそも詩歌ビオトープとは?
詩歌ビオトープは、詩の世界を一つの生態系ととらえ、詩人や歌人、俳人を傾向別に分類して、誰と誰が近い、この人が好きならこの人も好きかもしれないね、みたいなのを見て楽しもう、という企画です。ちなみに、傾向の分類は僕の主観です。あしからず。
この人は1909年に宮城県で生まれました。大学卒業後に上京して岩波書店に入社、この頃斎藤茂吉に師事して「アララギ」に入会します。1945年には岩波書店を退社し、自らの第一歌集の名を冠した歌誌「歩道」を創刊しました。この「歩道」は今でも精力的に活動しているようですね。
さて、今回も小学館の昭和文学全集35に収められた歌を読んでいきます。
本書には第一歌集の「歩道」から58首、読売文学賞を受賞した第五歌集「帰潮」から59首、晩年の歌集「星宿」から54首の合計171首が収められていました。その多さからも、いかに昭和の短歌に大きな影響を与えた人かが分かりますね。
で、僕の分類ではxが19、yが13で「自然主義的かつ絵画的」な人になりました。
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第一歌集の「歩道」は純粋な写実というか、日常の瞬間を切り取ったような歌が多いと思いました。
たとえば、次のような歌。
いでて来(こ)し屋上(をくじやう)に赤き旗(はた)たちて空のとほくに鳥がたゆたふ
でも、「帰潮」からは単なる描写ではなくて、直喩や隠喩が込められた歌が多かったです。
降りいでて漸くしげき寒(かん)の雨なみだのごとき過去が充ちくる
みづからの光のごとき明るさをささげて咲けりくれなゐの薔薇
戦(たたかひ)はそこにあるかとおもふまで悲し曇りのはての夕焼
で、晩年の「星宿」になると、写実的な歌よりも自身の気持ちを詠った歌が多いと感じました。でも、これはここまで読んできた人皆そうですけど。歳とるとそうなるんですかね。
でもまあ、何というか、本当に徹底的にリアリティというか現実にこだわる態度は、清々しさすら感じます。
こんな歌があって。この歌がもう、この人の思想信条を表していると思うのです。
一切のもの見えがたき冬の夜に顕(た)つまぼろしを吾は惜しまん
まぼろしなどいらん、と。そうなんですね。僕は好きだけどなあ、まぼろし。
で、この人はたくさんのお弟子さんを育てたことでも知られています。「純粋短歌」という歌論が有名なのだとか。ちょっと興味あるけれど、きっと読んだら凹むので読まないことにしよう。
ということで、26人目に続く。
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