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詩歌ビオトープ021: 小暮政次
詩歌ビオトープ21人目は小暮政次です。
そもそも詩歌ビオトープとは?
詩歌ビオトープは、詩の世界を一つの生態系ととらえ、詩人や歌人、俳人を傾向別に分類して、誰と誰が近い、この人が好きならこの人も好きかもしれないね、みたいなのを見て楽しもう、という企画です。ちなみに、傾向の分類は僕の主観です。あしからず。
この人は1908年、東京都生まれの人です。「アララギ」の同人となって土屋文明に師事、「アララギ」解体後はアララギ系の歌風を引き継ぐ結社「短歌21世紀」をつくりました。「短歌21世紀」は今も活発に活動している団体なんですね。
さて、今回も小学館の昭和文学全集35に収められている歌を読んでいきます。
本書には「新しき丘」から30首、「春望」から35首、「薄舌集」から46首の合計111首が収められていました。
で、僕の分類ではxが14、yが9で「音楽的かつ自然主義的」な人になりました。他のアララギ系の人たちと同じグループですね。
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全体的には、写実的な歌と、少しシニカルな視点の気持ちを詠んだ歌が多いという印象でした。
写実的な歌だと、次の歌が好きです。
山たかくきらへる雪や息長く吹きくる風や君をかなしむ
「君」はきっと、男性ですよね。決して近づくことのできない吹雪の山を見て、何らかの理由で志半ばに命を落とした、もう別の世界へと行ってしまった友のことを思っている、そんな気が僕はするのですが、どうなのでしょうか。
ちょっとクスッとしてしまう歌もありました。
紅引きて歩みきたればわけもなく反撥す吾よりいたく背高し
この歌はタイトルが「銀座」で、きっと銀座を歩いていたら背の高い綺麗な人が女性が歩いてきたんでしょうね。で、一瞬見惚れたあと、「ふ、ふん! すましやがって!」ってなったんでしょうね。明らかに言いがかりなんですが。
あと、短歌のことを詠んだ歌も多くて、ここまで読んだ人たちも割とありましたけど、僕はこの人の短歌を詠んだ歌が、なんか、一番好きだと思いました。
たとえば、この歌。
此国がすべてよくなり短歌など亡びゆくべきことも楽しも
ほんとは「楽しも」だなんて思っていないのに、なんか強がりでそう言っちゃう感じ、僕は好きです。
あと、フランスに行ったときに詠んだ歌。
窓の外は西日さしゐる狭き路地卓の隣は熱き接吻
これも「ふ、ふん! 何やってやがんだ!」という気持ちが見えてかわいいですね。絶対ほんとはちょっと憧れてる。
なんか、ちょっと意地悪な笑いというか、そういうユーモアのセンスがあった人なんでしょうね。僕は、すごく魅力的な人だと思う。
ということで、次回に続く。
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