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【読書】代官頭大久保長安の研究 村上直著

徳川家康の関東入国以来、関東は日本の首都圏となるまでに発展・繁栄してきた。われわれの住む関東平野の今日までの発展につながる基礎的な町立て交通網の整理を実行して家康の民生を補佐したのが代官衆であり、その中で抜群の実績を残して「天下の総代官」と呼ばれた大久保長安がいる。本書は、大久保長安研究における第一人者である村上直による論考15編を収録した論文集である。

なぜ大久保長安時代に既存の各鉱山が活況を呈したのか?長安自身が送った書状や関連文書等の膨大な一次資料から丁寧に論考を積み上げていて、その経営手法が理解できる内容になっている。

目次

Ⅰ 大久保長安の出自と甲斐
武田蔵前衆について
大久保石見守長安と猿楽衆
大久保石見守長安と甲斐
関東と甲斐国の連帯性 —大久保長安の支配領域に関連して―

Ⅱ 大久保長安の在地支配と初期幕政
後北条氏から徳川氏へ —多摩地域を中心に―
初期関東における代官陣屋について
江戸時代初期の代官 —特に伊奈・大久保・彦坂を中心に―
幕府創業期における奉公衆 —大久保石見守を中心に―
初期幕府政治の動向 —大久保石見守長安事件を中心に―

Ⅲ 大久保長安と石見銀山の支配
近世初期における石見銀山の支配 —大久保石見守長安を中心に―
近世初期石見銀山の支配と経営 —大久保石見守長安時代を中心に―

Ⅳ 大久保長安と佐渡鉱山の支配
近世初期佐渡鉱山の支配について —特に大久保石見守長安を中心に―
近世初期佐渡鉱山の支配形態

Ⅴ 大久保長安の実績と人物考
大久保石見守長安の研究覚書
幕府権力と大久保長安

あとがき 馬場憲一

メモ

・八王子から続く今の圏央道西部一帯は、平野部から関東山地に入る境目にあることから「山の根」や「杣保(そまのほ)」と呼ばれている。長安ゆかりの地といえば陣屋のあった八王子が思い浮かぶが、この山の根九万石も長安の支配地域であった。江戸城普請のための石灰を青梅成木から運搬したり、日高栗坪に陣屋を設けて手代を置いたりしていたようだ。

・大久保長安に興味を持ったのが登山趣味の傍ら「松姫峠」、「おいらん渕」、「黒川金山」といった山岳地域の地名由来を辿ってのことだったので、自分の生活圏でもある山の根地域にも長安の事績が残っていることを知ることができ嬉しかった。

・砥石で有名な南牧砥沢では、現地の有力者市川家に山金等の採掘免許の書状を送っている。関ケ原以前から長安が鉱山関係の任務にあたっていたことが伺える資料なので注目に値する。




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