あの頃僕は若かった
御茶ノ水に行った
浪人時代の予備校通いはこの街
用事を済ませてから
浪人時代の思い出の定食の店に入った
1954年創業のその店は
学生や浪人生向けに肉系の定食を供している
綺麗とは言えない店内に足を踏み入れ
油で滑りそうな床を慎重に歩き
カウンター席につく
36年ぶりに食べるそのメニューは
おそらく変わっていない
焼いた肉と揚げもののセット
パスタに乗ったそのメインディッシュにライス
50歳を過ぎた身体には少し重かったが
食べ始めると予想もしなかった感想が巻き起こる
「おいしくない・・・」
あの頃はこれがごちそうだった
繰り返しこの店で昼飯を掻き込んだものだ
あれから日本の外食が進化したのか
自分の舌が肥えてしまったのか
食べることだけが楽しみだった浪人時代の
あの記憶の1ページを再現することは出来なかった
今の僕が幸せだということなのかもしれない
そして僕自身も変化したのだ
いごくら懐かしんだところで
あの頃に戻ることはできないことを思い知った
少し春の兆しを感じる午後のひととき