下北沢ドリーム
深い地下からエスカレーターで地上に出ると
光に溢れたコンコースが東に向かって開けている
昔は北と南に分かれていた場所の真ん中に改札ができた
朝7時までやっていた屋台のおでん
その店の酔客の憩いの場所だった公衆便所
どこにあったのかもうわからない
駅前の有名なボーカリストの実家の葬儀屋もどこかへ移り
二人組の有名アーティストの一人が常連だった線路沿いの店も今はない
コブクロが美味しくて それだけをオーダーしてビールを飲んだあの焼肉屋
安くて有名だった線路のすぐそばの中華料理店も今はない
でも商店街を歩けば、まだ自分の青春の店を見つける事ができる
その土地に神様がいるならば下北沢の神様は夢を追いかける貧乏神
と思っていたけれど、その姿も変わってしまっただろうか
ラブホテルの1階でずっと営業する和食の名店
30年前は激安だったけれど
値段は歳を重ねると共に上を目指して成長中
昔も今も評するならば「若者の街」
でも茶沢通り沿いの昔はライブもやっていたジャズバーは
店主も青春時代のまんま老人になり
客も青春を胸に抱えたまま還暦を超える
時を止めたまま歴史的名跡になってしまいそうだ
新しいものを取り込み古いものを排出していく生き物のように
街も夢と希望を喰らいながら挫折と絶望を吐き出していく
どうもそのテンポが速くなっているようだ
僕はその流れに乗りながら下北沢を今日は歩く
でも本当はそのまま流れに呑み込まれてしまいそうだった
次は時の止まったままのあの店で
ガソリン入れて休憩しようと心に決めて帰路に着いたのだ