小匙の書室235 ─放課後ミステリクラブ4 密室のウサギ小屋事件─
密室のウサギ小屋から、大切に飼われていたユキコが消えた!!
この不可解な謎に挑むのは、いつものミステリトリオだ。
〜はじまりに〜
知念実希人 著
放課後ミステリクラブ4 密室のウサギ小屋事件
児童書として初めて本屋大賞にノミネートされた、〈放課後ミステリクラブシリーズ〉。第1巻の発売からコンスタントに刊行され続け、早くも第4巻です。
どのお話も読みやすく、読書に慣れていれば1日で読み切れてしまうので手軽にミステリを摂取したいときには最適の一冊なのです(そのぶん続編が刊行されるまで待ち遠しくなってしまうのですが)。
さて今回は。
ミステリ好きなら絶対避けては通れない密室ものです。おそらく知念先生はこのシリーズを通して、ミステリビギナーをすっかりミステリの沼に沈めるつもりなのでしょう。私としてはその協力に一助できれば、と願う次第です。
本作は児童書ということもあり、対象読者層は小学生なのですが、もちろん大人が読んでも楽しめます(現に私がそうなのですから)。
果たして犯人はどうやって密室からウサギを消失させたのか。
ミステリトリオの輪に加わる気持ちでページを捲っていきました。
〜感想のまとめ〜
◯コンクリート製の小屋から忽然と姿を消した、ウサギの『ユキコ』。鍵は真理子が持っていたのに、いったい何があったのか。
今回の謎は少し難易度が高そうだぞ、と私はしゃんと背筋を正し、今回も謎を解いてやるぞと意気込みました。
◯天馬君の登場に相応しい簡単な謎解きがあり、あいも変わらずわちゃわちゃしているミステリトリオに頬が緩んだ。
巻数を経るごとに顔見知りのキャラが増えていくのは、物語を読み続けるモチベーションたり得る。
いよいよ密室の謎が彼らのもとに転がり込み、私も一緒になって現場へ赴きました。
◯ミステリを読み慣れていると思っていたけれど、その密室の『難攻不落さ』には目を瞬いた。
小学校の敷地に立つウサギ小屋。親しみやすい場所だが、立ち塞がる謎はミステリトリオ(とりわけ天馬君)を嘲笑うような堅牢さであるのだ。
天馬君も頭を抱える密室。
しかしある気付きが壁を崩すヒビとなり──私も「あれかな?」と当たりをつけられるように。
◯やんちゃ坊主の和也は、シリーズのヒール役というべきか。ただ、完全なる悪ではなくて子供らしさが拭い切れないからこそ、憎むとまではいかない。
すっかり天馬──ではなく、陸に勝つための執念に燃えていて、いっそそれは微笑ましくすら感じるのだった。
◯密室トリックは的中させられたが、それ以外は天馬君に一歩及ばず。悔しい……。
トリックだけ解けばいいならそれはクイズ小説にすぎず、フーダニットはまだしもホワイダニットまで目を向けられなければ名探偵への道は遠いのだと実感。
小学校を舞台にしているだけあって、子供の時分に獲得しておきたい物事の向き合い方がよかった。
あとがきも知念先生ならではの内容であり、ファンとしてはじんわりとくるものがありました。
〜おわりに〜
とにかく楽しく読める、というのがこのシリーズの大きなポイント。
Gurin.さんによる可愛いタッチのイラストも、目に優しくて楽しさが倍加。
シリーズは現在5巻までの刊行が決定しているので、次作の発売を待ち遠しく思うことにします。
ミステリトリオよ、永遠なれ。