小匙の書室146 ─白線以外、踏んだらアウト─
一度は聞いたり体験したりした出来事を元に、奇想天外な展開があなたを待ち受ける。
おとぎカンパニー最新作──。
〜はじまりに〜
田丸雅智 著
白線以外、踏んだらアウト
SNSをやっていなければ、出逢えなかったであろう作品です。
いつものように新刊情報なんかが流れてくるタイムラインを眺めていたら、この書籍の発売告知がポンと現れたのです。
「なになに? 白線以外、踏んだらアウト? ベタなシチュエーションを元に予想外の展開? そりゃあ気になるでしょう!!」
というわけで早速、書店に足を運び新刊棚からそっと抜き取って購入。
後で知ったのですが本作は田丸先生による〈おとぎカンパニーシリーズ〉最新作だったのです。既刊作を調べたところ、なんと『遅刻する食パン少女』があるじゃないですか!
これは私事になるのですが、以前にも似たような経緯で『遅刻する〜』の情報を仕入れていたものの、ついぞ書店で出逢えず読めていなかったのです(オンラインで買えよって話ですよね)。
ああ、そうか。あの作品のシリーズか……。つまり私がこの作品に惹かれたのはある種運命。
そんなこんなでワクワクしながらページを捲っていきました。
〜感想〜
とにかく読みやすくて、実質1日で読了してしまいました。
本作の感想まとめは以下の通りです。
◯きっと一度は聞いたり体験したりした出来事。
手に『人』を書いて緊張をほぐしたことのある人〜。
白線だけを歩いて、それ以外は奈落だと思ったことのある人〜。
食後にすぐ眠ると牛になるって迷信を聞いたことのある人〜。
てるてる坊主に晴天の祈りを捧げた人〜。
はい、集合してください。
おそらくほとんどの読者が集うことでしょう。そんなベタなシチュエーションを取り扱った作品なだけに、非常に馴染みやすいです。
◯ベタは、まさかの展開へ。
ベタなシチュエーションはベタであるが故に、色んな人が色んな想像をしてきたことでしょう。
本作もまた(あくまでも私にとって)予想の斜め上をいく展開がどの篇にも用意されていて、田丸先生の発想力には驚かされてばかりでした。
これぞ作家の成せるワザ。
私は最初の一篇『緊張の“人”』でがっつり心を掴まれて、その後の篇もどんな展開があるんだろうと幼心を取り戻したようにワクワクさせられました。
面白すぎる。
◯明るめの話ばかりで安心できる。
不安要素のない読書時間っていうのは、時にはものすごく大事になってきます。例えば「最近は暗めの話ばかりに当たってきたから、次こそは憂いが少ない作品を手に取りたい」と思っているならば、私は本作をいの一番に推します。
いやもう、既に表紙からして中身が明るいってわかりますからね。
それでいて一篇が20ページ前後なので、次から次へと明るく予想外の話を摂取することができるのです。
もし学校の図書室にあったら取り合いになりそうだな……。
◯フィクション、なのだけれど──。
フィクションだと頭では理解しているけれど、私はついつい「ひょっとしたら現実でもこんなことが起きるんじゃないか?」と考えてしまいました(特に『緊張の“人”』なんかはすぐに実践できますし)。
ベタなシチュエーションだからこそ、読者の日常にも肉薄している。つまりはそれだけ離れられない作品である。これは過言ではないと思います。
〈おとぎカンパニーシリーズ〉が今後どんな物語を用意してくれるのだろうと、楽しみになりました。
〜おわりに〜
やはり自分の感性にビビッときた作品は、面白かったりタメになったり客観的になれたり……と、いいことばかりですね。
本作は身近なことに目を向けてみる楽しさも教えてくれました。
これからもそうしたアンテナを大切にして読書ライフを送りたいです。
ここまでお読みくださりありがとうございました📚
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