「短くても貢献してもらえる、短時間正社員制度とは」
社会保険労務士の山地です。
前回は実務経験が十分あり資格もあって即戦力になれるハズなのに、仕事に就けない女性が潜在的にたくさんいるというお話でした。
今回はこのような女性たちにモチベーションを保ちながら働いてもらうために企業はどうしたらいいのか、というお話です。
女性たちが正社員として働けない最大の理由は労働時間の長さです。
育児介護休業法では3歳未満の子を育てる労働者で育児休業していない人について、事業主は1日の労働時間を6時間とする短縮措置をとらなければいけません。
介護の場合は、介護休業とは別に対象家族1人につき短時間勤務の利用開始日から連続する3年以上の期間で2回以上利用できるようにしなければなりません。
3年の間ずっと短時間勤務でもいいですし、最初に短時間勤務でスタートして途中必要があれば休業し、その後再び短時間勤務に戻るというパターンも考えられます。
このような両立支援制度があっても知ってか知らずかはわかりません。仮に知っていたとしても周囲に遠慮して利用せずに退職してしまったのかもしれません。
せっかくある両立支援制度ですが、万能ではありません。一般的には法定通りの期間で運用していることが多いため、育児であれば子が3歳になったら退職してしまう人も多いのです。
そこでぜひ導入してほしいのが「短時間正社員制度」です。
短時間正社員とは、
正社員(フルタイム)と比べて、1週間の所定労働時間が短い正規型の社員のことで、
次の2点にあてはまる人です。
1.期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している
2.基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が正社員(フルタイム)と同等である
短時間正社員という名称から、1日の所定労働時間を短縮すると考えられがちです。もちろんそれでもOKですが、他にもパターンがあります。
「1週間あたりの勤務日数を減らす」
「1日の所定労働時間と所定労働日数の両方を減らす」 です。
この制度は企業にとっても労働者にとってもメリットのある働き方です。
企業側のメリット
1.妊娠・出産・育児・介護などを理由とした離職防止
→定着を促進できる
2.新規採用のための育成コストがかからない
→もし退職されてしまったら、同じレベルの人を見つけて採用するのは至難の業
3.人材確保に役立つ
→勤務時間がフルタイムのために、応募をあきらめている優秀な人はたくさんいる
4.働きやすい職場であることを(今いる従業員にも)アピールできる
5.採用競争力の強化につながる
→制度導入していない企業が多いから、他社と差別化できる
6.健康上の理由で休職した人もスムーズに復職させることができる
→育児・介護以外の理由でも使える
労働者側のメリット
1.ワークライフバランスが充実する
→いわずもがな、仕事と家庭が両立できる
2.処遇の改善
→短時間正社員は社会保険加入の資格を継続できる
3.長期的な視点でのキャリア形成が実現できる
→途中で辞めてしまうとキャリアが断絶してしまう
4.モチベーションを維持できる
唯一のデメリットと言えば、パートタイマーに転換して労働時間が正社員の3/4未満になれば社会保険資格を喪失できる、つまり企業も社会保険料の負担がなくなるのにそれができないということではないでしょうか。
しかし保険料負担をしてもメリットのほうが余りあるのではないでしょうか。次回は短時間正社員制度を導入して課題解決に取り組んでいる事例について、見ていきたいと思います。(*^_^*)