社労士的就業規則の作り方 18
鹿児島で社労士をしています原田です。
今回は、社労士がみんな大好き「代替休暇」がメインです。モデル就業規則で社労士が気になる条文ベスト70に入るぐらい注目の条項です。
ちなみにモデル就業規則は全部で70条です。
ここでは厚労省モデルを使って、社労士が就業規則に対してどうアプローチするかを案内しています。
第6章 賃金 第41条~
1年単位変形の割増賃金
モデルの解説にもさらっと書いてますが、1年単位変形の途中で入退職する人の割増賃金です。
社労士で給与計算をしている方でも見逃しがちなので要注意。
変形途中の清算については、特に退職時には問題になるはずなのに、現実的に問題になるケースが少ないことから、事実上の「未払い」のままに放置されている場合もあります。
1年単位変形を導入する場合は、入れておきたい規定です。
現実的には、正しい1年単位変形労働時間制の運用が行われていないことが圧倒的に多いので、そちらの方が問題なのですが、それは就業規則の問題では無いので、ここではもう言いません。
代替休暇
前回でちょっと触れた「代替休暇」です。条文だけでも長いので、実は既にうんざりしています。
平たく言うと60時間超になると、50%の割増賃金を払う部分を、年休とは別の有給の休暇をとらせることで、60時間超の部分の残業代をチャラにしてしまおうという制度です。制度の詳しくは、モデルの解説や他のサイトの解説を見て、制度を知った上で以下を読みましょう。
条文の話をします。
第1項では「労使協定」に基づいてが重要。労使協定が無いなら制度自体がつかえません。労使協定は毎年締結する必要はありませんし、監督署への提出義務のありませんが、第4項でも触れている割増率の変更等の内容変更がある場合は、協定書の改定が必要なので要注意です。
第2項では、期限の話なので、労使協定で2カ月以内と定めていたら、2カ月になります。法定上限が2カ月なので、2カ月以上で締結することは無いはずですが、1カ月の協定なら1カ月に修正しなければいけません。
第3項では、半日取得時の話です。第23条でも触れてますので、そちらを見ましょう。
第4項では、代替休暇の取得できる時間(日数)の計算式の話です。第40条(割増賃金)のところで、ここの事業所の45時間超の割増賃金は、35%と定めているので、この内容になります。割増率が25%の場合は、
35%→25% 15%→25% になるので要注意です。
第5項は少し分かりにくいのですが、第4項で代替休暇の日数を算出した時に、ほとんど場合端数がでます。その端数が0.5を超えたら1日、0.5以下なら半日でカウントするという意味です。
この時、時間換算すると少し多めに休むことになりますが、
「多く休んだ分を割り増し分から引いたらダメだよ」
という意味になります。給与計算担当者に向けた言葉です。
第6項は、代替休暇申請の手続き上の話です。給与締め日から5日以内となっていますが、これは任意の日付で構いません。第7項にも関係しますが、給与計算の運用と照らして決めた方がいいでしょう。
第7項は、代替休暇の申し出があったので、割り増し分を払わないことになります。これが全額払いの原則(労基法第24条第1項)違反にならないためにあらかじめお断りしているものです。この条項が無くても、代替休暇取得月で未払い賃金の可能性は消滅しますし、あくまでも「本人の申し出」によって発動するのが原則なので、トラブルになるケースは想定しにくいですが、書いていた方が無難です。
第8項は、給与計算が終わったり給与支払いが終わった後で代替休暇の申し出があった時には、
「次の給料から多かった分を引くよ」
という意味です。従業員から文句を言われないように入れておきましょう。
個人的感想として、給与計算の煩雑さが増え、トラブルが増加するような雰囲気が香る代替休暇なので、慢性的に使う制度としては避けるべきだと思います。
例えば機械修理や製造時のトラブル処理、システムの不具合修正のような突発的なトラブル解決のために制度を導入する業種で検討されるべきでしょう。
突貫工事が多いから、人手が足りないから・・・とかの理由だと、60時間超の翌月も60時間超えるような気がするので、制度導入は役に立たない可能性があります。
こちらは社労士目線で作る時の話であり、モデル規則の解説に書いてあることには、あまり触れていません。併せて参照して理解することが必要です。
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