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計算式の算数で考える、労働生産性を効率的に上げる方法 ⑥

 前回に付加価値労働生産性を上げるために何がベストなのかをお話し、労働生産性が賃金向上との関連性が薄い話をしました。

 賃金が密接に関連性が高い指標を探すと、無知な私が知らなかった生産性がありました。それが 人時生産性 です。「にんじ せいさんせい」と読みます。

人時生産性の計算式

 人時生産性の計算式は下記の通りとなりまs。
  人時生産性=粗利益高÷総労働時間

 この時の総労働時間は、労働者全員の労働時間の総和になります。
つまり、1時間当たりの粗利益高が人時生産性です。

 粗利益の計算式は、
粗利益高=売上高ー売上原価
製造業等の場合は売上原価ではなく、製造原価を使います。

なので、
人時生産性=粗利益高÷総労働時間=(売上高ー売上原価)÷ 総労働時間
となります。

 ということで、人時生産性を上げる方法は、
1.売上高を増加させる
2.売上原価(又は製造原価)を下げる
3.総労働時間を減少させる
ことになります。まさに社労士っぽくていい感じです。

留意点としては、結果的に粗利益が上がればいいので、売上高が下がっても、利益率を上げることも有効ですし、総労働時間が増加しても、増加割合より粗利益の増加割合が高ければ、問題ありません。

それぞれを考えてみましょう

1.売上高を増加させる
・売上数量を増やす *単価当たりの原価が下がる傾向にあります。
・売上単価を上げる *数量が減る場合があります。

2.売上原価(又は製造原価)を下げる
・設備投資による人件費やロス率の低減 *理想的な話です
・商品ひとつ当たりの重量や数量を減らす *いわゆるステルス値上げです

3.総労働時間を減少させる
・設備投資等による効率化の結果
・値上げによる生産量減少に伴う時短等
・業務改善による結果

どこかで見たような話が並んできました。ということは・・・

人時生産性を上げるためにベストなものは・・・

 やっぱり
値上げ と 設備投資

がベストになります。
なんと、物的労働生産性・付加価値労働生産性・人時労働生産性のどれを上げるにしても、やるべきことは同じだったりします。

 但し設備投資にはそれぞれの生産性で微妙な違いがあります。
物的労働生産性:数量や金額が増加する投資
付加価値労働生産性:付加価値外の費用が減少する投資
人時生産性:粗利益が上がる投資
です。

そして、設備投資の結果で、実際に経常利益が向上するのは、人時生産性だけなので、給料が上がる話ができるのは、人時生産性だけです。

生産性のために「値上げ」しましょう

 私のところには、倒産前後の相談が社労士業と関係なく定期的に来ます。最近倒産後の相談で来た会社の元社長が言う倒産の根本原因は「過剰な設備投資」でした。設備投資を積極的に行って、生産性向上を続けた結果が倒産です。

 設備投資は、適正な範囲ですることが望ましいという現実を見れば、
「値上げ」
がベストな生産性向上の手段ということになります。

それであれば、値上げのための話をした方が生産性向上には最も適切なのでしょう。

 それでは値上げしやすい環境とは何でしょうか。

1.元々安すぎる
 元々が市場に見合わない程度に安いことは、気付いている人も多いので、値上げしやすくなります。うまい棒がいい例です。

2.ハイブランド
 ブランド価値が高い商品は、値上げしても売れ続けやすいです。

3.オンリーワン
 地域で購入できる場所がそこだけであれば、価格決定権を優位に決められます。ネット社会のおかげで戦略的には難しくなりましたが、運賃構成比が高くなる低価格商品だとまだまだ有効です。

4.インフレ
 何もかも全部が値上げなら、こっそり値上げしてもバレません。BtoBだとほぼ間違いなくバレますが、インフレならBtoBでも交渉しやすくなります。

5.売る方が優位性がある取引
 他のメーカで代替ができないレベルの高い品質だったり、圧倒的な信頼性がある場合には、いうがままの価格になりがちです。

6.顧客層を見て決める
 業界によっては原価率の目安があり、原料原価から売価を割り出す方もいます。商品特性を見ながら消費者目線の最大限で出せる金額で価格を決める方法もあります。
 価格が高いから品質がいいと誤解してくれる場合も非常に多いです。


常時販売する商品について、値上げは簡単ではありません。しかし生産性の最終決着は「値上げ」なので、インフレの今を狙いながら、インフレが終わった時には、他のポジションで値上げができる準備をすることが重要になるでしょう。

 本当にそれでいいのかという疑問はあります。給与を上げるには粗利益を増やせばいいのであり、粗利益を上げるためには、単なる計算値に過ぎない生産性など下がってもいいと考えるのが、企業の本来あるべき姿のような気がします。

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