はじめての社員の産休・育休 経営者と労務担当者が知っておきたいこと
労務 Advent Calendar 2021、9日目の記事です!
社会保険労務士事務所ヨルベのかなやま(@kanayama_sr)です。
社労士として、主に創業期のスタートアップの労務をお手伝いしています。そのため、はじめて直面するものについてご相談いただく場面がとても多いです。
例えば、はじめて会社を作ったとき、
それから、はじめて人を雇用したとき、
など。
会社を作って、人が増えて…会社の成長とともに発生する労務タスクにはさまざまなものがありますが、それらを大まかにまとめたものが次のマップです。
今回は、この労務マップの中から、「はじめて社員が産休・育休を取得することになった…!」という場面で最低限知っておきたいことについてまとめます。
取得から復帰までの大まかなスケジュール〜全体像を知る
まずは、いわゆる「産休・育休」とは、いったいいつからいつまでを指すのか、イメージを持っておきましょう。
産休(=産前産後休業)期間は、出産前6週間と、出産後8週間です。
育休(=育児休業)期間は、原則として、子どもが1歳になるまでの間です。
子どもが1歳の時点で保育園に入園できないなど一定の事情がある場合には、育休期間を半年間延長することができます。さらに、1歳6ヶ月の時点でも同様であれば、再度半年間延長が可能で、最長で、子どもが2歳になるまで延長することができます。
女性は産後休業が終了した日の翌日から育児休業を開始しますが、男性は出産予定日から育児休業を開始することができます。
なお、職場復帰した時点で、育休期間は終了です。
休業期間・受け取れる手当金額は法律で決まっている
この産休・育休について、社内規定の有無にかかわらず、社員が希望した場合には、会社には休業を取得させる義務があります。
また、産休中は健康保険から出産手当金が、育休中は雇用保険から育児休業給付金が受け取れます。いずれも原則は給与額のおおよそ67%(計算式はそれぞれ異なるので、あくまでもおおよそです!)ですが、育児休業給付金には上限額があったり、計算対象期間が短い場合には計算式が異なる場合もあります。社員自身が想定していたより受け取る額が小さかった、という可能性もあるので、事前に要件を把握して金額をシミュレーションしておけるとトラブルを防げます。
○出産手当金
○育児休業給付金
出典:育児休業や介護休業をする方を経済的に支援します|厚生労働省
「社員に子どもが産まれそうなのですが、何か新しくルールの整備が必要ですか?」とよく聞かれますが、まずは法律で定められている休業期間と手当金の仕組みを正確に理解し、社員の方に不足なく案内した上で、それぞれのタイミングで必要な届出を漏れなく行うことが最低限必要です。
(もちろん、加えて、育児介護休業規程や社内申請様式の整備、休業にあたって引き継ぎの仕組みを整えることも重要になってきます。)
届出は主に「社会保険料の免除申請」と「手当金の支給申請」の2種類
会社が行うべき届出には、次のようなものがあります。
出典:【手続き】従業員の産休・育休時の必要書類と準備 まとめ|classwork
届出は主に「社会保険料の免除申請」と「手当金の支給申請」の2種類に分かれます。
(そのほか、子どもを扶養に入れる(=健康保険証を発行する)場合には扶養追加手続きも発生します。また、天引きする給与が発生しないので、住民税を個人で納付するように切り替える、などの検討事項もあります。)
産休開始時・産休終了時・育休開始時・(育休延長時・)育休終了時に社会保険料免除の届出を行うほか、出産前後に出産手当金の支給申請、それから育休期間中は原則として2ヶ月ごとに育児休業給付金の支給申請を行います。
スケジュール管理がとっても大切です。
育休中に業務対応が発生した場合はどうすれば良い?
職場に復帰すると育休期間は終了します。育児休業中は、子育てのために働く義務が免除されているので、原則として勤務をすることは想定されていません。
しかし、突発対応など、一時的・臨時的に業務を行うことは、社員本人が合意した上であれば、可能です。
一時的・臨時的就労の例
勤務している日が月10日を超えて、かつ80時間を超えるときは、育児休業給付金も支給されません。
上記を満たす場合でも、育休中の勤務に対して給与が支払われる場合は、支給調整がなされることがあります。
出典:育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の支給について |厚生労働省
育児介護休業規程を作成する理由は
育児介護休業規程には、原則として、育児休業や介護休業、それに関連する休暇、時間外労働の制限など、法律で決まっている事項が記載されます。
「うちでは法律で決まっている通りに運用する予定なので、わざわざ社内規定として作成しなくても良いのでは?」(育児介護休業法に定める通りとする、と書けば十分なのでは?)とよく聞かれます。
ただ、雛形に目を通していただければわかるかと思いますが、育児介護休業規程なるものは、内容が多岐にわたり、なかなか難しいです。(正直、私自身も最初の頃は何が書いてあるか正しく理解できていませんでした…)
法定通りとはいえ、社内にあらかじめ明文化したルールを設置しておくことはとても大切だと思います。
加えて、育一定の社員については、会社と従業員代表があらかじめ合意した上で、育児休業などの取得対象外とすることができます。(例えば、週2日以下勤務の社員、入社6ヶ月以内の社員など)このように対象範囲を定める際には労使協定とその前提となる規程が必要となります。
また、育児休業中は無給なのか有給なのか、例えば、時短勤務をする場合の給与額はどう決めるのか、など、社内で明文化しておくべき項目は実はたくさんありします。
はじめてなら助成金も上手く活用しよう
育児休業の取得や復帰の支援を促す目的で、厚労省や各自治体の助成金制度があります。
特に一人目の社員の育児休業は要件・金額ともに満たしやすい傾向があるので、積極的に活用するのが良いと思います。
○両立支援等助成金(厚生労働省)
2021年度は出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)、育児休業等支援コース、などがあります。
○働くパパママ育休取得応援奨励金(東京しごと財団)
(1)働くママコース 都内中小企業への奨励金定額125万円
(2)働くパパコース 都内企業への奨励金最大300万円
東京都の奨励金は金額も大きいので、都内の企業の方は一度目を通してみると良いかなと思います。
育休関連の法改正について
育児休業については直近で大きな法改正がありました。2022年4月と2022年10月に施行されます。改正の内容は下記にまとめています。
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IPOの労務監査という切り口ではありますが、全労務担当者の方にとって役に立つものと思います。
何かと慌ただしい12月ですが、頑張っていきましょう!
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