「平均賃金」を10分で説明する回
本記事は、4月24日に配信したポッドキャストの文字起こしです。
今回は、平均賃金についてまとめたいと思います。
普段、従業員の方が普通に働いているときは、会社は「時間あたりいくら」「月あたりいくら」といった形で、雇用契約で取り決めた賃金を支払います。働いた分を支払えばよいということで、(計算方法が正しいかという観点は別途ありますが、)特に問題になることはありません。
ただし、ある一定の事由が生じた場合に、過去に支払った賃金額をもとにして目安となる賃金を決めておかなければならないことがあります。その際に、計算の根拠となるものが「平均賃金」であり、労働基準法によって一定の計算式が定められています。
目安となる賃金が必要となる5つの場面
「平均賃金」の計算が必要になる事由を「算定事由」といいます。具体的には、次の5つの場面が想定されています。
① 解雇予告手当を計算する場面
② 休業手当を計算する場面
③ 年次有給休暇中の賃金を計算する場面
④ 災害補償の金額(業務中の怪我や病気で働けなくなった際の一定の賃金補償)を計算する場面
⑤ 減給の制裁の制限額を計算する場面
※⑤減給の制裁について・・・何らかの懲戒事由に対して、制裁処分として給与を減額する場合、減給は一定率未満としなければなりません。具体的には、労働基準法91条で、「1回の減給額が平均賃金の1日分の半額を超えてはいけない」「減給の総額が一賃金支払期(大体は1ヶ月)において賃金の総額の10分の1を超えてはいけない」と定められています。
「平均賃金」の計算方法
具体的な「平均賃金」の計算方法としては、(1)原則 と(2)最低保障額 の2つが定められており、このうちどちらか高い方を「平均賃金」として採用します。
(1)原則
まず、原則的な計算方法をおさえましょう。
ざっくりいうと、算定事由が発生した日以前の3か月間に支払われた賃金の総額を、3か月間の暦日数(総日数※)で割ったものが、1日当たりの平均賃金となります。
(※)例えば1月~3月の3か月間とすると、暦日数は31日+28日+31日=90日
✅原則的な計算式
【算定事由が発生した日以前の3か月間の賃金の総額÷その3か月間の暦日数】
発生日「以前3か月間」ですが、賃金の締切日がある場合には、直前の賃金の締切日からさかのぼった3か月間を用います。
(例)月末締め翌X日払いとしている会社で、4月10日に算定事由が発生した場合、
1~3月の3か月間に支払われた賃金と総日数で平均賃金を算出する。
平均賃金の計算においては、基本的に給与のすべてを賃金の総額に含めるというイメージで問題ありませんが、例外的に、賃金の総額と総日数に含まれないものがあります。
【賃金の総額に含まれないもの】=分子から除く
・臨時に支払われた賃金(退職金など)
・3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナスなど)
・通貨以外のもので支払われた賃金で一定範囲に属さないもの(かなり例外的)
臨時的なものは「平均」という考え方になじまないので除外します。逆に、毎月支払われる通勤手当・家族手当などは賃金の総額に含まれます。
✔️固定残業手当を支払っている場合、これも平均賃金に含めます。
【賃金の総額にも総日数にも含まれないもの】=分子と分母から除く
・業務上負傷しまたは疾病にかかり、療養のために休業した期間
・産前産後の休業期間(出産日以前6週間、出産日後8週間)
・使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間(今回クローズアップされている部分)
・育児休業または介護休業の期間
・試用期間(賃金額が低い場合があるため、平均を計算する際にはなじまないため)
これらは、平均賃金を算出する際に、そもそもと期間としても支払額としても除く部分です。
この「3か月間の賃金の総額を3か月間の暦日数で割る」というのが原則的な平均賃金の考え方になりますが、その対象となる3か月間において、実際に働いた日数が少ない場合や、支払われた金額が少ない場合は、平均賃金が本来よりも少額になってしまう場合があります。
それを避けるために、「最低保障額」を算出する計算式も定められています。
そのため実際には、原則的な計算式と最低保障額の計算式それぞれで金額を算出し、どちらか高いほうを平均賃金として採用する仕組みになっています。
(2)最低保障額
算定事由が発生した日以前の3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間のうち実際に働いた日数で割ったものに60%をかけた金額が、最低保障額の平均賃金となります。
✅最低保障額の計算式
【算定事由が発生した日以前の3か月間の賃金の総額÷その期間の実際の労働日数×60%】
例えば、日給制(労働日数に応じて賃金が支払われる)の場合、3~5月までの3か月間で支払われた賃金の総額が30万円であり、
🗓暦日数(総日数)=31日+30日+31日=92日
🗓実際に働いた日数 =15日+11日+10日=36日
と仮定すると、
▶️原則的な計算方法 30万円÷92日=原則的な平均賃金
▶️最低保障額の計算方法 30万円÷36日×60%=最低保障額の平均賃金
となるため、このどちらか金額の高い方を平均賃金として採用する、といった形です。
このような形で算出した平均賃金は、
・解雇予告手当(解雇を行おうとする場合、解雇日の30日前までに予告をする必要がある。30日以内に解雇しようとする場合には、30日に満たない期間分の解雇予告手当を支払う必要があります)を算出する際に、一日の単価として平均賃金を用いる
・休業手当(平均賃金の6割以上を支払う必要がある)を算出する際に用いる
といった形で使用します。
まとめ
最後に平均賃金のポイントをまとめておきましょう。
🚩「直前の3か月間に支払われた賃金の総額を、3か月間の暦日数で割る」のが原則的な計算式
🚩賃金の総額には、臨時に支払われるようなもの(ボーナス)などを除き、原則すべて含めて計算する(固定残業手当も含めます)
🚩ただし、賃金の総額を暦日数で割った際に平均賃金が少額になってしまう場合(=実際の労働日数によって賃金の総額が変わる場合など)は、最低保障額の計算式も設けられているため、原則的な計算式で算出した金額と比較して、高い方を平均賃金として採用する
というわけで今回は、「平均賃金」が何のために存在するかと、その計算方法についてまとめました。
podcastでは、上記の内容を10分で解説しています。ぜひ一度聞いてみてください!!🎧
○勤怠打刻ファーストにご掲載いただいています。
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