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脳と関節の関係


1.関節の調整=脳の調整

(1)関節の調整は脳への刺激となる

 関節の調整は同時に脳にも影響を与えます。関節を動かすことで生じた関節周囲の感覚刺激が脳に伝えられるからで、極端に言うと関節の調整は脳に良くも悪くも働き、脳を中心とした神経系のバランスを良くも悪くもします。

 とにかく全体のバランスが大事となるので、バランスを無視した施術は、思わぬ結果につながる可能性もあるので注意が必要です。そのためには検査が重要で、施術時の反応も確認しながら、関節に加える刺激の種類、ポイント、強さなどを判断しながら施術を行います。

(2)動きが改善しても・・・

 分かりやすい例を挙げます。右肩関節の動きが悪かった方に対して、右肩関節を中心とした施術を行い、関節の動きが改善したとします。この場合、経過が順調な場合もありますが、人によっては、今度は別の部位、例えば左股関節の動きが悪くなったりするケースも出てきます。

 つまり、施術によって部分的に右肩関節の動きが良くなっても、神経系を中心とした身体全体のバランスが整っていない場合、バランスのひずみが別の部位に現れてしまうのです。

 これは、極端な例であり、結構問題なく経過していく場合も少なくないのですが、脳の働きやバランスは想像以上に身体に影響を与えるので、常に脳の状態を考えながらの施術が大切です。

 逆に言ってしまえば、解剖学や運動学の理解が不十分な場合であっても、脳の状態に適した刺激を与えることが出来れば、関節の動きが改善することも少なくありません。

 そのためか、複雑で繊細な技術を数多く持っていても、実際の施術は年々シンプルになっている感じがします。ただ、ケースによっては複雑で繊細な技術が必要なのもまた事実ですが。

(備考)関節がさわれる→筋肉がさわれる

 関節の治療技術は理学療法の業界でもポピュラーで、僕が最初に本格的に学んだ技術も関節に特化した手技でした。数年間は地元の練習会から定期的に開催される講習会まで参加しましたが、これが非常に良かったのです。

 何が良かったかというと、この時期に「関節を正確に認識して触る」ことや「関節を動かす繊細な感覚」を学び習得できたことが大きく、15年近く経った今でもこれらの関節の技術は役立っています。関節がさわれると自然と筋肉の触診も出来るようになり、整形外科クリニックでこれらの技術は大いに力を発揮しました。

2.関節の調整方法

 これまで、さまざまなセミナーや講習会へ参加すると共に、書籍なども参考にしながら試行錯誤を繰り返してきた結果、現在は主に3つの方法で関節を調整しています。

(1)引っ張る

 まず、一つ目の方法はシンプルに引っ張る方法で、「牽引」と呼ばれる事が多いと思います。関節は2つの骨の間で作られ、一方の骨を皮膚や筋肉なの上から押さえて引っ張ります。関節の牽引刺激によって筋肉が伸ばされ、条件によっては筋肉の緊張緩和や痛みの緩和などにつながります。

 また、関節の牽引刺激で関節内の圧力が変化すると、同じように条件によっては関節の可動性が改善します。そして、筋肉の緊張緩和と関節の可動性向上によって関節周囲の血流が改善し、栄養や酸素供給が改善することも考えられます。→痛みの緩和や関節・筋機能の改善を促します。

 ある意味、最も大事なのは神経刺激です。牽引刺激は関節周囲の組織に刺激を与え、その刺激は感覚神経を伝わって最終的には脳にまで行きます。そして、その刺激は脳の働きやバランスに良くも悪くも影響を与えます。

(2)圧迫する

 2つ目は牽引の逆、つまりは圧迫です。これもシンプルで骨と骨(関節面と関節面)を近づけて関節に圧力を加えます。1つ目の牽引と圧迫は相反する関係性であり、脳に対しても反対の影響力が良くも悪くも生じます。そして、牽引と同様に施術の際の条件が合っていれば、痛みの緩和や筋機能・関節機能の改善につながります。

(3)わずかに動かす

 関節をわずかに動かす方法があり、「副運動」とか「関節の遊び」などと呼ばれます。関節の遊びは、関節に加わる負荷を軽減(分散)し、関節を保護する役割があるので、関節の遊びがないと関節への負担が大きくなります。また、遊びがあることで、微妙で細かい動きの調整が可能となり、関節が滑らかに動く助けともなります。

 関節の遊びに関しては、車のハンドルとブレーキの「あそび」を例にすると分かりやすいかと思います。ハンドルにあそびがない場合、少しハンドルを操作するだけで車は曲がってしまい、細かな操作が難しくなります。また、ハンドルに伝わる振動も大きくなるとの事です。

 ブレーキも同様で、ブレーキにあそがあることでブレーキの調整しやすくなり、ブレーキのあそびがないと、急ブレーキがかかるために安全性が低下し、車に対する負担も大きくなります。

 つまり、関節の遊びは関節の「ゆとり」であり、関節の遊びがあることで関節がスムーズに動き、急な衝撃や外力に対して対応しやすくなる事を考えれば、「あそび=遊び」の重要性が分かりやすいのではないでしょうか。

 さて、話が多少それてしまった感じですが、関節の遊びを調整(改善)する方法はシンプルに関節をわずかに動かす感じです。動かす幅は感覚的に1mm以下といった感じで、シンプルな技術がゆえに単純に難しくもあります。まあ、慣れてしまえばそれほど難しいという感じではなく、どちらかというと丁寧さが求められると思います。

 ちなみに関節の動きが眼で確認できないぐらい極小の幅で動かす方法は、小脳に刺激が伝わりやすいと考えられ、小脳の機能を改善させたい時に関節を極小で動かす技術を良く使います。ただ、はたから見るとじっとして動かない感じなので、「あの人何してるの?」という感じになってしまうのが少し難点です。


3.へバーデン結節の場合

(1)へバーデン結節とは

 長年、五十肩などをはじめとした関節機能障害のリハビリや施術を行ってきましたが、最近ではへバーデン結節のケースが特に印象に残っています。へバーデン結節の場合、指の第1関節が変形してしまい、動かすと痛みが出やすく、仕事や日常生活に支障が生じるようになります。

(2)指の施術は15分?

 へバーデン結節は指先の関節が問題となるので、まさに関節に対する施術ということになるのですが、約60分の施術時間の内、指の施術は長くて15分程度になります。

 ちょっと分かりにくいかもしれませんが、へバーデン結節というのは、1人の人間の「身体のシステム異常」の結果が、指の第1関節に集中して現れ、最終的にへバーデン結節に至っていると考えれば話がスムーズです。

 「身体のシステム異常の結果=へバーデン結節」と考えれば、根本原因は何かという事になりますが、やはり脳と自律神経を中心とした神経系が問題となりやすく、指の施術を15分とすれば、残りの約45分が根本原因に対するアプローチという事になるのです。

(3)根本原因は・・・

 関節の変形や制限、痛みなどの症状が現れている方の多くは、交感神経(自律神経)が過剰に緊張している場合が多く、中には交感神経が「暴走状態」に陥っている方も珍しくありません。

 この場合、あちこちの筋肉が緊張すると共に、逆に緊張が少なく力が入りにくい筋肉もあり、全体的な筋機能(筋力・筋出力など)は低下し、バランスも悪くなっています。

 そこに、仕事や日々の生活で負荷(ストレス)がかかると問題が生じやすく、弱い部位をかばう(補う)ことでも過負荷となり、痛みなどの問題が引き起こされることになります。

(4)施術の進め方

 施術では筋肉の緊張を緩和すると同時に筋肉を活性化する必要があるので、部位によって施術方法を変えながら筋肉を調整します。また、筋機能が調整されると同時に自律神経のバランスも調整されていく感じなので、筋肉に対するアプローチは施術の中で占める割合が多くなりやすいです。

 筋緊張の緩和と共に自律神経のバランスが改善された後、問題の生じている指の関節にアプローチすることで、施術による改善が得られやすくなります。指では関節と皮膚に対する施術がメインとなり、指先に近づくにしたがって脳に伝わる刺激が多くなります。

 腕の切り傷と指先の切り傷を比べると、圧倒的に指先が痛いですよね?つまりそれだけ、指先の方が痛みなどの感覚を感じやすく、脳の中でも「指の感覚を担当する領域」は大きいのです。

 伝わる刺激が多いという事は、脳に対する影響は良くも悪くも多く、指先など身体の末端になるほど、慎重に検査を行いながら施術を進めていくように心がけています。

施術例のコラムはこちらから

4.備考

 関節の調整に関する内容だけでもあっという間に文字数が3000字を越えてしまい、できれば1500文字程度に収めたいのですが、なかなか難しいのが現状です。まだまだ書きたい内容があるのですが、長くなりすぎて収まりどころが難しくなるので、「脳と関節の関係」の記事は今回はここまでとします。

 また、機会があれば関節のことに関する記事を書きたいと思いますので、その時は、是非お読みになってください。ここまで読み進んでいただいてありがとうございました。

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