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【リアルレポート】2階はない?五反田TOCビルの今の姿

五反田にある複合商業施設「TOCビル」は、2024年3月に老朽化による建て替えのために閉館しました。

ところが、閉館後に建て替え計画は見直され、2024年9月にリニューアルオープンしたのです。

すべてのテナントが退去した後、そのままの建物で再オープンすることになったTOCビル。現在どのような店舗が営業しているのか、「リアルな昭和」が残る現場の様子をお届けします。

※2025年1月時点の情報です。


五反田「TOCビル」とは

TOCビルは、東京都品川区西五反田7丁目に位置する13階建ての大規模な複合商業施設です。TOCはTokyo Oroshiuri Center(東京卸売センター)の略で、五反田TOCビルとも呼ばれています。「Oroshiuri」が英語ではなくローマ字表記なのがなんとも味わい深いところ。

その名の通り、卸売業者や小売店などが集まり、全盛期には200以上の店舗や事務所が軒を連ねていました。

1970年(昭和45年)の開業から50年以上が経過し、建物の老朽化が目立ってきたことから運営会社の株式会社テーオーシーは建て替え計画を発表。2024年3月までに入居していたすべてのテナントが立ち退くことになりました。

ところが、閉館直後の4月に株式会社テーオーシーが建て替え計画を見直し、再オープンすることを発表しました。再開発の着工を2033年頃まで延期し、耐震補強工事などを行った上で運営を再開することになったのです。

この背景には、建築費の高騰やオフィス賃貸需要の変化があります。建て替えの計画を進めていたのは2021年。そこから閉館までの数年で建設資材価格は急上昇し、人件費も上がり続けています。リモートワークの普及により、オフィスの賃貸需要も先行きが読みづらい状況です。

収益計画の見直しが迫られ、その間TOCビルを閉館したままにしておくわけにもいかず、再開業に踏み切ったというわけです。

TOCビルの外観
TOCビルの外観

TOCビルへの行き方

TOCビルは五反田駅西口を出て、桜田通りをまっすぐ南に向かって歩いて10分ほどの場所にあります。

大崎広小路駅や不動前駅からも歩いて約10分ほどと、駅と駅との中間あたりに位置しています。

そのため、五反田駅からは無料のシャトルバスも運行していて、再開業に伴いこちらも復活しました。西口に乗り場があり、平日は1時間に4・5本のバスが出ています(土日は運休)。

TOCビル行きシャトルバスの乗り場
TOCビル行きシャトルバスの乗り場

TOCビルの各階の状況

ここからはTOCビルの現在の各階の状況をお伝えしていきます。

1階

TOCビルの1階からは、エクセルシオールカフェとナチュラルローソンに直接入店できるようになっています。どちらもリニューアル以前にも入居していた店舗で、戻ってきた形です。

TOCビルのエントランス
TOCビルのエントランス

エントランスにはTOCビルのテナントの案内と、株式会社テーオーシーが運営する近隣にある関連ビルの案内が掲示されています。

現在は階によっては表記すらなく、多くの空きが生じているようです。

TOCビルのテナントの案内
TOCビルのテナントの案内

玄関を入ると、傍らに株式会社テーオーシーの創業者である大谷米太郎氏の像と振り時計が鎮座していました。

大谷米太郎氏の像
大谷米太郎氏の像

1階にはリニューアル前から入居していたユニクロも戻っていて、他にも主にアパレル系のショップが並んでいます。

「Northside」に並ぶ店舗の案内
「Northside」に並ぶ店舗の案内

続いて、エレベーターを下って地下1階に向かいます。

入口近くにある地下1階行きのエスカレーター
入口近くにある地下1階行きのエスカレーター

地下1階

リニューアル前のTOCビルの地下1階は半分が飲食店街になっていました。しかし、現在は飲食店の入居はゼロ。「リニューアル工事中」となっていて、空きテナントが目立ちます。

地下1階のフロアマップ
地下1階のフロアマップ

SUIT SQUARE OUTLETなどの衣料品店や文房具店の他、ダイソーも入っているのは利用者にとってありがたいポイントでしょう。

ダイソーには、「ジェネリック無印」とも呼ばれるちょっとおしゃれな「Standard Products」ブランドの商品も扱われています。

地下1階で最も広いダイソー
地下1階で最も広いダイソー

かと思えば、隕石や化石などを扱う個性的なお店もあります。

五反田で隕石をお求めの際はこちらのショップへ
五反田で隕石をお求めの際はこちらのショップへ

ほのぼのとした壁の模様や給湯室からも、昔ながらの面影を感じます。

給湯室のピクトグラムもレトロ
給湯室のピクトグラムもレトロ

1階に戻り、エスカレーターで上の階に向かいます。

3階

1階からエスカレーターで上がると2階ではなく3階に到着します。なぜそうなのかは後で詳しくお伝えします。

3階はいくつかのオフィスが入居するのみで、一気に人気がなくなります。

3階のエレベーターホール
3階のエレベーターホール
3階のフロアマップ
3階のフロアマップ

4階

4階に入居しているのは4社のみ。家具メーカーのショールームが営業しています。

4階のフロアマップ。エレベーターホール周辺以外はすべて空き
4階のフロアマップ。エレベーターホール周辺以外はすべて空き
営業中のショールーム
営業中のショールーム
申し訳程度に封鎖された扉
申し訳程度に封鎖された扉

5階

5階はさらに寂しく、2社のオフィスのみが入居しています。

5階のフロアマップ。設備を撤去した後か、タイルの一部が割れている
5階のフロアマップ。設備を撤去した後か、タイルの一部が割れている
退去後そのままになっているスペース
退去後そのままになっているスペース

エスカレーターがあるのは5階までです。リニューアル前も小売店は5階までで、その上の階には卸売業者や事務所が入っていたようです。

6~9階

6階には6社のオフィスがあります。

6階のフロアマップ
6階のフロアマップ

さらに7階に上ると……電気が半分消えていました。

電気の消えた7階
電気の消えた7階

7階と9階は完全に空いていて、8階に入居しているオフィスも一つのみ。そのため、電気も消しているようです。

オフィスの場合、一度移転すると当面はそこから動かないことが多いでしょう。小売店のテナントよりも埋めることが難しい様子が伺い知れます。

10~12階

上層階にあたる10階から12階にはそれぞれ数社のオフィスが入っているものの、フロア全体からすると8・9割は空いたままです。

12階のフロアマップ
12階のフロアマップ

13階

最上階である13階にはホールと会議室があり、他のフロアと比べると重厚感のある雰囲気になっています。

他のフロアとは雰囲気の異なるエレベーターホール
他のフロアとは雰囲気の異なるエレベーターホール

その日は、総合アパレルメーカーである三陽商会のセレクトセールが開催されていました。

ホールの扉が並ぶ
ホールの扉が並ぶ

屋上

リニューアル前は屋上にも行くことができ、ゴルフ練習場と氷川神社がありました。

しかし現在は封鎖され、屋上へは上ることができませんでした。

階段には「屋上階使用禁止」の看板
階段には「屋上階使用禁止」の看板

どうして2階がないのか?

さて、1階から上ってくる際に2階ではなく3階だったのが気になりました。

1階まで降りて、改めて階段で向かってみることしました。しかし、階段にもなぜか2階はなく……。

階段でも1階の次は3階
階段でも1階の次は3階

どのエレベーターにも2階はありません。

エレベーターの階数表示にも2階は存在しない
エレベーターの階数表示にも2階は存在しない

警備員さんに2階の存在について聞いたところ、2階には株式会社テーオーシーの本社オフィスがあり、一般の方とは別の専用ルートを通って行くようになっているそうです。謎が解けてスッキリしました。

リアル昭和を体験できるスポット

再開業により、ある意味では昔ながらの姿のTOCビルを体験できる期間が数年延びたともいえるでしょう。

とはいえ、建物の建て替えはいつかは必ずやって来るものです。

Sprocketのオフィスがあるのは、TOCビルのほぼお隣。大半の社員がリモートで勤務しているSprocketですが、出社しているメンバーからはTOCビルに飲食店が入ることを熱望する声があがっています。

昭和のままの姿で、現代の経済状況を色濃く表す五反田TOCビル。せっかく再開業したのですから、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

掲示板にマグネットで書かれたTOCの字。スタッフの遊び心と愛を感じる
掲示板にマグネットで書かれたTOCの字。スタッフの遊び心と愛を感じる

参考リンク:TOCビル

執筆・写真:市川明徳(Sprocket)