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ナッジ理論で人を動かす!7つの活用法とフレームワークを紹介

Sprocketのコンサルタントの本郷です。皆さんは「ナッジ理論」という言葉をご存じでしょうか?

この理論を応用することで、相手に何かを強いることなく、望ましい行動に導くことができます。そのため、様々なビジネスシーンでも使われています。

この記事では、ナッジ理論について事例を交えながらわかりやすく解説します。


人々の行動を変えるナッジ理論

先日、仕事で使う資料をネットで探していたときに、イギリスのNPO団体が設置した奇妙な灰皿の写真に出会いました。その灰皿には「Who's the best player in the world?(誰が世界最高のプレイヤー?)」と書かれています。

「Who's the best player in the world?」と書かれた灰皿(画像:Hubbub Foundation

世界的なサッカー選手である「Ronaldo(ロナウド)」と「Messi(メッシ)」の名も書かれていて、投票するかのようにタバコを捨てられるという仕掛けです。

灰皿を投票箱に見立ててタバコの吸い殻を入れて投票させることで、ポイ捨てを減らすことに成功したそうです。

これがまさに「ナッジ理論」を使った仕掛けです。近年、行動経済学で注目されているのが、ナッジ理論です。

「ナッジ(nudge)」とは、「軽くつつく、そっと押す」という意味です。そこから転じて、「ある行動をそっと促す」という意味に使われています。

経済的なインセンティブを変えたり、罰則・ルールで行動を強制したりすることなく、行動科学に基づいた小さなきっかけで人々の意思決定に影響を与え、行動変容を促すのがナッジ理論です。

厚生労働省も、がん検診対象者のがん検診受診率を向上するために、『受診率向上施策ハンドブック 明日から使えるナッジ理論』を公開しています。

選択の余地を残しながらもより良い方向に誘導する、または最適な選択ができない人だけをより良い方向に導く、この導きがナッジ(nudge)です。

出典:受診率向上施策ハンドブック 明日から使えるナッジ理論|厚生労働省

ナッジ理論の7つの活用方法

ナッジ理論を活用する方法としては、主に以下の7つがあります。

デフォルト

初期値として選択されている状態が自然と維持されやすいという原則です。
例えば、ECサイトで注文フォームでメールマガジンへの登録を促したい場合、最初から「登録する」を選択しておくといった方法です。

ギミック

ついついやってみたくなってしまう仕掛けを施すことです。上で紹介した投票箱型灰皿などがまさにそれにあたります。

フレーミング

同じ事実でも、伝え方や表現方法が違うと印象が大きく異なるというものです。

何かに挑戦することを促す場合、「1割の人は失敗しています」と伝えるのと「9割の人は成功しています」とでは、印象が違ってきます。

同調

人は自分の意見や行動が周りと同調したがるという性質を利用したものです。

同じような商品が並んでいた時に、片方に「今、売れています!」と書かれていると、そちらのほうが人気商品のように感じられて売上が伸びることがあります。

インセンティブ

ここで言うインセンティブとは経済的なものではなく、行動を起こすことで得られるメリットやベネフィットです。

例えば、「この商品は環境に配慮して作られています」と謳うことで、消費行動に社会貢献活動的な側面を与え、購買動機の1つとします。

ラベリング

周囲から貼られるラベルによって、行動パターンに変化を起こすというものです。ポジティブなラベル付けによって、新規顧客の開拓に役立ちます。

例えば、「スイーツ男子」というラベルを用意することで、男性だけでは入りづらかったケーキ店に男性客を呼び込むことができます。

アンカリング

先に与えられた情報がその後の意思決定に影響するというものです。

家電量販店で「当店通常価格10万円の洗濯機が、今ならセールで5万円!」という表示を見たら「お得な商品だ」と感じてしまわないでしょうか。

先に「10万円」という価格が提示されているため、その数字に引っ張られて5万円を「安い」と判断してしまうのです。

ナッジ理論を実践に活かすための「EAST」フレームワーク

ナッジ理論を効果的に活用するためのフレームワークとして、「EAST」と呼ばれるものがあります。

この「EAST」の4つの柱から3つ程度は加味した方がより効果的だそうです。

Easy(簡単・簡潔)

  • わかりやすく単純な言葉を使う

  • 面倒なことを避ける

  • ユーザーにとってほしい行動を初めからデフォルトとして組み込む

Attractive(魅力的・印象的)

  • 人の感情や人間関係に訴える

  • 具体的なベネフィットを提示する

Social(社会的)

  • 人の持つ社会性や協調性に訴える

Timely(タイミング)

  • 時間軸で考える(ライフステージ、1年間、1か月など)

  • 今すぐに行動してもらえることを提示する

さらに実施したナッジ理論についてPDCAサイクルを回すことも必要です。ちょっとした「言葉遣い」や「見せ方」などでユーザー行動は大きく変わるかもしれません。

人々を健康にするためには?

ここまで見てきたナッジ理論を使って、人々の行動を変える仕掛け作りについて考えてみましょう。

もしあなたが役所の健康推進課に属していて、市民の健康づくりのために何か企画するとしたら、どういったものが考えられるでしょうか?ナッジ理論を使ったどんなアイデアが浮かんできましたか?

実際にスウェーデンの首都・ストックホルムで行われた楽しみながら健康づくりに役立つ実験の様子を動画でご覧ください。

執筆:本郷延明


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