ジャムの法則と実例から考える、ユーザーが選びやすい選択肢の数
普段、入浴剤を使わない人が、「たまには使ってみるか」と思い立って売り場に行く。するとそこには何十種類もの入浴剤が並び、選ぶのが面倒になって結局何も買わずに帰る…。
選択肢が多いほうが自分に合った商品が選べて良いような気がしますが、日常生活では選ぶことがストレスになってしまうケースもよくあります。
この記事では、選択に関する「ジャムの法則」について解説し、関連する事例からユーザーが選びやすい選択肢の数について見ていきます。
選択肢が多すぎると購入率が下がる「ジャムの法則」
コロンビア大学の教授であるシーナ・アイエンガーは、選択と意志決定に関する「ジャムの実験」を行いました。スーパーで試食できるジャムの数が購入率にどのような影響を与えるかを調べるというものでした。
その結果は、試食できる数が6種類の場合は購入率が30%だったのに対し、24種類の場合は3%まで落ちてしまうというものでした。
このように、選択肢が多いほど購入率が低くなる現象を「ジャムの法則」といいます。
人間には損なことを避けようとする性質があります。そのため、選択肢の数が多すぎると、「選ばなかったものの中にもっと自分にとって良いものがあったらどうしよう」という負の感情が先立ち、購入の意思決定を鈍らせてしまうのです。
選択肢の数の参考となるマジカルナンバー
では、どのくらいの選択肢の数が適切なのでしょうか?選択肢に関して、参考となるのはアメリカの心理学者、ジョージ・ミラーの提唱した「マジカルナンバー」です。
マジカルナンバーとは、短期記憶の限界を数値化したもので、ジョージ・ミラーは7±2であるとしました。その後、心理学者のネルソン・コーワンが4±1という新説を唱え、今ではそちらが定説となっています。
マジカルナンバーによると、3から5つに選択肢を絞ることが有効であると考えられます。
ユーザーが選びやすい選択肢の数を実例から考える
大切なことは、商品ラインナップの数自体を絞るのではなく、選択肢の提示の仕方を整理することです。
実店舗よりも多くのラインナップを揃えやすいECサイトでは、特にインターフェースを考慮する必要があります。
商品の絞り込み検索機能やレコメンド(おすすめ)機能、ランキングの発表などで、選択肢を絞った見せ方ができます。
Sprocketでは、Webサイト上のユーザー行動をリアルタイムでトラッキングし、その時々で最適な情報をポップアップなどで提供しています。それにより、実店舗における接客のようなコミュニケーションを、Webサイトで実現しています。
実際のSprocketの事例から、Webサイトにおける最適な選択肢の数の考え方を紐解いていきましょう。
住宅設備機器メーカーの例
まず、住宅設備機器メーカーのWebサイトの事例です。トップページには、さまざまな目的を持ったユーザーが訪れます。そこで、ユーザーにサイト訪問の目的を尋ね、最適なページへ誘導を図りました。
その際に提示する選択肢を6つにした場合と3つで比べたところ、3つのほうがショールームの来場予約完了率が高いという結果でした。
ボタンごとのクリック数などを計測しながら、項目の内容を順番を調整していった結果、最終的に3つに絞りました。
また、ユーザーに呼びかける場合は、どのような表現を用いるかも重要です。Webライティングのポイントを解説した記事も公開していますので、そちらもぜひご参照ください。
金融系Webサイトの例
金融系のWebサイトも扱っていて商品の幅が広く、かつそれぞれの説明が長くなってしまうため、ユーザーが迷いやすいものです。
そこで、ある銀行のマイカーローンのLPでは、仮申し込みを促進するために、ユーザーが気になりそうなポイントをポップアップで案内しました。
このケースではいきなり選択肢を提示するのではなく、まずは選択肢を開く意思確認を行った上で、具体的な項目を表示しました。
8つの選択肢を出した場合と4つに絞った場合では、4つのほうが仮申し込みのコンバージョン率が高まりました。
選択肢を選ぶ前に意図的にワンステップを踏むことで、「ユーザーが自分で選んだという納得感が得られる」ようになっています。
他の事例でも、特にスマホユーザー向けには選択肢の数を絞ったほうが効果的であるという傾向が見られています。これはスマートフォンの画面サイズ上、一度に提示する情報を絞ったほうが受け入れられやすいためでしょう。
最終的に提示したい内容が多岐にわたる場合は、フローチャートのように段階的に選択肢を提示するのが良いでしょう。
ユーザー視点で仮説を立案する
ジャムの実験についてはシーナ・アイエンガーの著書である『選択の科学』に詳しく書かれています。
この本の原題は『The Art of Choosing』です。アートに正解がないように、選択にも正解がないという意味が込められているのでしょう。
選択肢の数についても、「こうすれば良い」という絶対的な正解はありません。例えば、趣味性の高いものや関心度の高いものであれば、選ぶこと自体も買い物の楽しみとなるでしょう。
一方で、違いのわかりづらい日用品やネガティブな課題を解決するために必要なものは、選択肢で迷うことなく、早く決めたいと思うことでしょう。
大切なのはユーザーの視点で、「その買い物をするときにどのような情報があれば嬉しいか」を考え抜くこと。そして、そこから立てた仮説が合っていたかどうかを、A/Bテストを繰り返すことで検証していくことです。
執筆:スプ論編集部
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