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AIで自動生成される社内報を作ってみた
こんにちは、ぶんかけんの市川です。ぶんかけんとは、「組織文化醸成研究委員会」の略で、社員のエンゲージメントを高めていくことを目的とした活動を行う社内チームです。
Sprocketでは社内コミュニケーションツールとしてSlackを使っています。社内の知見を吸収したAIBotが質問に答えてくれるチャンネルもあり、多くの社員が利用しています。
人に質問するときは、どうしても相手が忙しそうで申し訳なく感じてしまったり、こんなこと聞くの恥ずかしいと思ってしまったりすることがあるでしょう。AI相手ならそのような気兼ねは不要です。
「AIには話しかけやすい」ということを活かして何か組織活動にプラスになることができないかと考えた結果、「AI社内報」を作ってみることにしました。
気兼ねなく投稿できるチャンネルを作る
Sprocketは組織拡大に伴い社員数も増えています。加えて、基本的にリモートワークのため、どうしてもメンバー間でお互いのことを知る機会が限られてしまいます。
そこで社員や社内の出来事に興味を持つ機会を増やせないかなと企画したのが、AI社内報です。
Slackには雑談のためのチャンネルや各部活動の連絡に用いるチャンネルなど、「業務外」のことに用いるチャンネルも用意されています。
しかし、基本的には誰か他の社員が見ることが前提のため、本当の意味で「他の人にとってはどうでもいいかもしれない自分語り」ができる場はありませんでした。
なので、まずはAIの話しかけやすさを生かした「個人的な話をAIがサラッと聞き流してくれるチャンネル」を用意し、そこへの投稿や他の雑談系チャンネルからの投稿をAIがキュレーションして社内報として発信できないか考えました。
敏腕エンジニアの森下さんに相談したところ「できそう」ということだったので、やってみることに。その気になれば思い立ったことをすぐに実現できるのもSprocketのよさだと思っています。
「#sprocket-private」というチャンネルを開設し、チャンネルの使い方を以下のように設定しました。
個人的な話をAIがサラッと聞き流してくれるチャンネルです。
ライフイベントや最近読んで感銘を受けた本、観て感動した映画のこと、最近ハマっていること、買ってよかったものなど、個人視点の話もOKです。
基本的にヒトは読まない・反応しないでOKです。
このチャンネル用のAIには、以下のようなプロンプトを設定し、自動返答するようにしました。
前提: あなたは組織のメンバーの一員で、ムードメーカー的存在です
依頼: ユーザーの投稿に心温まるコメントを返してください。
状況: 社内Slackの sprocket-private channel での投稿です。チャンネルポリシーは「~~~」というものです。
あなたはこの sprocket-private channel の ホストとして、応対してください。
実際にはもうちょっと細かく、こういうときにはどう返すということも具体的に指示してあるのですが、社内的にネタバレになっちゃうとつまらないので割愛します。稀に予想外の反応をするようにして、飽きられない工夫をしています。
社内報化するためのプロンプト
Slackの投稿から社内報を作るAIは別に用意します。抽出用のワークフローとまとめを作って書き出す用のワークフローの2つが組まれています。
参考までに、まとめて書き出すほうのAIのプロンプトは以下のような形です。こちらも実際にはもっと細かい指示を与えています。
依頼: 個人に関する出来事の社内報を作りたいので、上記の抜粋からブログ記事風にまとめてください。
目的: 社員や社内の出来事に興味を持つ機会を増やし、組織へのエンゲージメントを高めること。
注目するTopic: 身近なできごとやライフイベント、引越し、家族に関することなど。質問する内容は除外する。業務に関することは除外する。
要約指針: 誰が何をした。どういう気持ちだった(重要)。名前は full name で記述する(同姓が多いので)。
編集方針: 社内報なので親しみやすく、おもしろおかしくしてください!
format: 以下のガイドを参考にして、Slackの mrkdwn 形式でSlackメッセージを作成してください。
「#sprocket-private」や業務外用途のチャンネルから投稿をピックアップし、毎月1日に自動的にSlackに書き出すようにしました。
みんなAIに話しかけてくれるのか?
準備はできたとして、社内報ネタとなる投稿自体が集まらないと始まりません。
せっかく作ったチャンネルも誰も利用してくれなかったらどうしようかと思っていましたが、これは杞憂に終わりました。
やはりAIは話しかけやすいらしく、良い意味で当たり障りのないAIの返しも結構こなれていて、毎日何かしらの投稿があります。
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業務用のチャンネルではAIは質問に答えてくれるため、#sprocket-privateチャンネルも当初はAIに質問する投稿が多くありました。
しかし、このチャンネルのAIはあくまで聞き流す感じになっているためやんわりと受け流しちゃいます。質問する内容ばかりだと、社内報としてまとめたときに意味がわからなくなると予想できたためです。
AIの返答が暖簾に腕押し状態のため、だんだんと何かを尋ねるような投稿は減っていきました。
また、最初の頃はAIができもしないのに「サポートできることがあったら言ってください!」とやたらと支援の姿勢に前のめりだったため、プロンプトで「そういうこと言うな」と指導しました。結果、受け流す力にさらに磨きがかかりました。
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今では、このチャンネル自体が憩いの場としても機能するようになってきています。
AI社内報の実物を公開
そして、月1で発行されるAI社内報の実物がこちらです。
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一つひとつは短いですが、ちゃんと読める内容になっていると思います。
“スーパーで「魂のルフラン」を耳にしてテンション爆上がり”した社員のエピソードなんて、この取り組みがなかったらまず出てこなかったでしょう。なんてことないことですが、こういうところからその人の人となりが見えてくる気がします。
AI社内報の課題
ここまでの流れは概ねうまくいっている気がしますが、AI社内報にはいくつかの課題もあります。
そもそも読んでもらえるか問題
AI社内報は月1回自動的にSlackに投稿されますが、そもそもこの投稿された社内報をちゃんと読んでもらえるかが課題です。それ以外の情報も大量に流れるSlack上では埋もれがちだからです。
そこは、人力で「今月の社内報です」とアナウンスし、周知していく必要を感じています。
トピックの偏り
どのようなテーマでまとめるかは投稿される内容次第なため、投稿内容に偏りがあると、社内報もそれに引っ張られてしまいます。
Sprocketには共働きの社員も多く、子育てに関する投稿が多くなりがちです。そうすると社内報も子育て関連のトピックが多くなってしまうという形です。
とはいえ、Slackへの投稿を意図的に制限するのもおかしな話ですので、プロンプトやAIの設定のほうでなるべく広いトピックを扱うように調整を重ねています。
メンバーの偏り
頻繁に投稿する人もいればまったく投稿をしない人もいます。そのため、AI社内報にはまったくピックアップされることないメンバーも出てきてしまいます。
AI社内報が情報発信手段のすべてというわけではないので、他の社員インタビュー記事などでカバーしていければと思っています。
成果の可視化
AI社内報に限らず社内コミュニケーションプロジェクト全般に言えることですが、成果を具体的に示すのは困難です。
成果確認でよく用いられるのは社内アンケートです。アンケートによって改善点が見出だせることもあります。今のところアンケートを取ってはいませんが、個別にフィードバックをもらう機会はあり、それを運用改善に反映していっています。
AI社内報は実験的意味合いが強い取り組みなので、あまり成果にこだわり過ぎず、気楽にやっていければと考えています。
AI社内報はフローが構築できたら運用にはほとんど手間がかからないのが最大のメリットです。課題はありつつも、大きなデメリットも感じられません。
実際にこの取り組みで普段は気づかない社員の一面に光を当てることもできていますし、何よりAI相手の投稿を含めてみんなが「楽しんで取り組めている」ことが良かったかなと感じています。
【最後に】Sprocketで働いてみませんか?
Sprocketでは、さまざまな職種で採用を募集しております。
ぜひ、みなさまのお力をお貸しください。
[コーポレートサイト]
https://www.sprocket.bz/
[採用情報]
https://www.sprocket.bz/company/recruit/
[募集職種一覧]
https://note.com/sprocketrectruit/n/n7e3861b08edf
[技術ブログ]
https://medium.com/sprocket-inc