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ひねもすのたり

爽やかな心地よい風に吹かれながら、久しぶりにワクワクした気持ちを抑えきれなかった。

約4ヶ月ぶりのソロ公演は、緊急事態宣言などの制限のない中での開催。もちろん感染症対策はお互いにきっちりとするけれども、なんだかとても清々しい気持ちだった。

会場は今年よく有観客ライブを行っているおなじみの場所。普段は飲食店として営業されていることもあり、「楽屋」的なものがない。そのため、入口で検温や入場の手続きをしてるときに普通に本人が横を通る。「よぉ!」なんて声をかけられ「おぉ、、」なんておぼつかない返事をしたりして。アットホームなんて言葉じゃ追いつかないほどアットホームな空間だ。まぁ、それがとても好きなところなんだけど。

配信の準備が着々と進む中で、今年最後のソロワンマンということもあり、少し緊張してるかな?と思ってたけど、昨日食べすぎて昼寝してしまって夜寝れなかったって話をケラケラ笑ってするほどリラックスしていて、緊張してるのは完全に私の方だった。笑 

一曲目は「太陽」だった。
個人的にとても思い入れがある曲で、ライブ前にSNSでこの曲をやると聞いたときから楽しみにしていた。初めて聴いたのは確か4年くらい前。当時、ソロでライブをするときにそこでしか聴けない曲を作って歌っていて、東京のカフェで聴いたのがこの「太陽」だった。初めて聴いたときからなんとも言えない衝撃を受けたこと、「生まれてくる命は周りを輝かせる太陽だと思った」とこの曲を作るキッカケになった話をしてくれたことや「生まれてくる光も消えていく光もあって、その一人一人が灯しあって生きてるんじゃないか」って話してくれたことをずっと覚えていて、いつかまた聴ける日を心待ちにしていた。

久しぶりに聴く「太陽」は歌い出しからグッとその声に惹き込まれ、ほんの数分前までニコニコしていた表情は一転した。ギターだけの「太陽」しか聴いたことなかったので、ピアノとパーカッションが入った「太陽」はとても新鮮だったし、より明度が増して、とても良かった。やはりあの時の衝撃は間違いなかったと改めて確信した。

三曲目の「がんばってんだなぁ」なんて、アドリブで歌詞を変えて歌ったり、パーカッションとカウントとるのがどっちだったかでいきなり曲止めちゃったり、それはそれは自由に楽しく歌ってたし、自然と手拍子も強くなったし、危うく一緒に歌いそうになってしまった(←カウントどっちだった事件のあと動揺して、お客さんに「みんなも」って求めちゃった件です。安心してください、心の中で熱唱しました笑)。

かと思えば、「砂漠の花」や「陽炎」ではしっかりと聴かせてくれて、このギャップというか、独特の本多ワールドにすっかり虜になってしまっている。さっきまでおちゃらけてた人と別人じゃないかと思うほど、その声に圧倒されっぱなしだった。

しっかり換気休憩をして
ちゃっかり上着を脱いで
後半戦がスタートした。

Wikipediaや某知恵袋を見るのが好きだという話から、そこにあった「カントリーロードのコードは適当に弾いてもいいですか」という質問に「いけません」と書いてあったやりとりが面白くて、そこから「決められたルールの中でなら適当にやってみても面白いんじゃないか」ということで、全員が“適当に”やってみた「ねェねェ」は新たな試みにしてはピッタリとハマっていて、今だからこそ出来るソロならではの空気感だったし、この選曲だからこそ出来たのかなとも思った。

楽しい時間は本当にあっという間で気付けば最後の曲だった。一曲目が終わったときすでに「楽しいね」と口にしてた通り、本当にずっと楽しそうに歌ってた。それがすごく伝わってきたし、もちろん私も楽しかったし手拍子をする曲も多かった気がする。久しぶりに掌がムズムズする感じもなんだか嬉しかった。

最後の曲は「春が咲いたら」。

もともと春頃には決まっていたという今日のライブ。その頃に配信で歌ったこの「春が咲いたら」という曲をなんとか作り上げて今日を迎えたかったと話してくれた。

2年前、愛犬との別れの光景が今でも残っていて、その景色をずっと探して、ようやく出来たというこの歌は、あまりにもリアルで、きっと経験したことがあってもなくてもその景色が浮かんでしまうほど、淋しさも、ぬくもりも、すべてが詰まった愛に溢れた歌で、耳にも胸にも残る歌だった。大切ななにかを失うことは辛くて悲しいけれど、記憶に残る思い出はいつも心を優しく豊かにしてくれるなぁ、、と自分の中の景色に重ねながら聴いて涙した。

歌う前に「みなさんの心にちょっとでも大切な人の風が吹いてくれたら自分が曲を作った意味があるのかなと思います」と話してくれた。この曲を聴いてから私はずっと もう会えない大切な人、大好きだった愛犬にまたどこかで会えそうな気がして、揺れる風の隙間に面影を探す日々を過ごしている。

ソロを始めて早11年。もう唄人羽としての活動の半分以上はソロもやってることになる。「唄人羽を守りつつソロで攻めていく」という言葉通り、これからも経験と挑戦を重ねながら、マイペースに、「本多哲郎」という世界をたくさんの人に知らしめてほしい。そして本人も言っていたように春が咲いた頃には、この歌とこの声とこの景色が、全国で待っている人の心に舞い降りてほしいと願っている。


「ひねもすのたり」
2021.10.17 Live Music Bar & Grill TUPELO

太陽
ジグソーパズル
がんばってんだなぁ
ハモニカおじさん
砂漠の花
陽炎
明日はどっちだ
三日月とピアス
ねェねェ
アルコール
カレーライス
春が咲いたら
【EN】
カントリーロード

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