この恋は宝箱にしまって
私には、大切にしまっておきたい恋がある。
大事な恋こそ、飾っておくより仕舞っておきたいものだ。
これから私がしようとしてること、最低だとか、誰も咎めないでね。
この記事の彼の話。
街のイルミネーションが徐々に減ってきた、今年の冬の終わり。
2人で飲みに行った帰りに電話をしながら、私は彼に気持ちを伝えていた。
「また、好きになっちゃったみたい」と。
思い返せば私は、いつもこの恋に縛られている。
「過去の思い出は美化される」ってよく言うけれど、本当にそうで。他の恋人が出来てもいつも、彼の方が…と思ってしまうし、他の人に惹かれるときはいつも、彼に似たところを見つけたときだった。
恋人と別れるたびに、やっぱり彼がいい、と思ってしまうのだ。
今回は、久しぶりにお互いに恋人がいないタイミングだった。
普段は2ヶ月に一回くらいのペースで会っていたのに、この頃は月に2.3回のペースで会っていた。
冬の時期だったので、今年もまたみなとみらいのイルミネーションを一緒に見に行った。
付き合ってないのに2年連続一緒に来るなんて、うちらくらいじゃない?なんて話しながら。
この日からなんだか、距離感がいつもと違かった。
長年友達関係でいるためか、向こうも少し意識してるのがわかってしまった。
そして私も、こんな高頻度で会っていたら、気持ちがぶり返してしまうのは必然だった。
もしかして、ずっと言ってた「タイミング」って今なんじゃない?って思って。
「また、好きになっちゃったみたい」
返事はわかっていた。
彼の性格や考え方はもう分かり切っているから。
慎重で誠実な彼はきっと、考える時間を求める。
だから、もっと意識してもらうためにも今、伝えたかったのだ。
ちゃんと女性として見てくれていた、という彼。
彼もまた、今までと違う形で意識し始めていたらしかった。
「ちゃんと考える」と言った彼に
「いつまででも待てるよ」と私は言った。
それから春の繁忙期に入ってしまい、彼からの連絡は途絶えた。
繁忙期を過ぎた今も、まだ連絡はない。
彼は誠実だから、きっとうやむやにはしないはず、と信じている。
私と似ている彼は、きっと色々落ち着いて、気持ちがはっきりしてからじゃないと連絡したくないんじゃないか。と、なんとなくそんな気がしている。
もし万が一、このままフェードアウトしたとしても、もう悔いはない。
気持ちはしっかり伝えたし、もし本当にそうなったとしたら、そういうことをする人だったのだ、と諦めがつく。
だから、私からは連絡せず、待つことにした。
そして、彼氏を作ることにした。
ただただ待っているのは退屈だから。
自分から告白しといて彼氏つくるなんて、最低だって思った?
でも、私は退屈が嫌いなの。
ただ待ってるだけなんてできないの。
待ち方は人それぞれでしょ?って思ってしまう。
ちゃんと待ってるんだからいいじゃん、って。
彼氏とはもちろん、しっかり向き合ってお付き合いをする。
付き合ってるうちに彼から連絡が来たら、彼とも向き合って、その時に合った最善の道を選ぶ。
だって、ただ待ってるだけじゃ時間の無駄でしょ?
確かに彼はすごく大事な存在だけど、自分の人生の一部を彼を待つためだけに使うなんてもったいない。
自分でも思う。どこか冷めてるなって。
でもね、思ったの。
これは彼を信じているからこそできることだって。
「好き」が分からなくなったとき、必ずこの恋を思い出す。
心から「本当に好きだった」と言えるのは、私の人生史上、彼しかいないから。
今までいろんな恋愛をしてきたけど、いつも時折思い出すのは彼だった。
まるで、宝箱にしまった宝物をたまに眺めてうっとりするように。
何度眺めても、やっぱりこれだ。と思うように。
そして、またそっと、宝箱にしまっておこう。
大切なこの恋を。