宇宙に行くことは地球を知ること
読書記録として書き留めておく。
宇宙に行くことは地球を知ること 「宇宙新時代」を生きる
(野口聡一、矢野顕子、林公代 著/光文社)
宇宙飛行士の野口 聡一氏と、シンカーソングライターの矢野 顕子氏との対談を収録した書籍。矢野氏は宇宙が大好きで、念願叶った対談ということ。
話の中で、矢野氏はマンションの物件を下見したとき、部屋の中でまず必ず手を叩く。そうやって「音の響き」で空間の広さを確認するという。野口氏は宇宙に出た時に空間を目で確認するが、音は「振動」だけで感じ取ることもあるという。二人は音楽家と宇宙飛行士という全く異なる職業だが、それぞれ異なる独自の「感覚」がある、そんな話が面白い。
「今」の宇宙、宇宙から知る「今」
本書の出版は2020年9月。コロナ禍の渦中であったり、野口氏にとっては同年11月に行った宇宙滞在の直前だったため、それに関する話も多い。
野口氏が搭乗したロケット「クルードラゴン」は、Twitterで話題となっているイーロン・マスク氏が運営する初の民間宇宙企業。今までのNASAとは違い、不具合や要望があればすぐ、場合によってのその場で対応できるなど、少人数で開発するからこそのスピードもあったとか。
また、野口氏はそれ以前からも宇宙で頻繁にTwitterにツイートしていたが、宇宙飛行でSNS発信を行ったのは野口氏が初めてらしく、最初はNASAも難色を示したとか。
宇宙での体験について、全ては「引き算」だという。重力がない、人とのつながりもない、限られたものしかないので、ものからの刺激も圧倒的に少ない。その中で見えてくる景色や音、それが宇宙体験であること。
対して、ちょうどコロナ禍だった世界の現状も、様々な制限があるからこそ大事なものが見えてくる、あらゆるものが「引き算」の宇宙と同じ。
そんな「宇宙」と「今」との共通点、そして「今」だからこその話が数多く語られている。それが本のタイトル「宇宙に行くことは地球を知る」ことに繋がるのだろう。
私も、野口氏や宇宙飛行士の本は何冊か読んでいるが、全て時代も視点も異なることが書いているので、どれもが面白い。