どうして英語ってこんなに難しいの?: (24) サイレント・レター
久しぶりに英語の話。
トランプ前米大統領が前回の選挙敗北後に支持者に反対表明暴動を起こすことを煽ったとして複数の罪において起訴されました。
インダイトとは?
ラジオのアナウンサーはしきりに「インダイト、インダイト」という言葉を連呼していて戸惑いました。
トランプが複数の罪状において起訴されたということはわかるのですが、いつもよく聞く
ではなく、「インダイト」という言葉の響きがしきりに使用されたのでした。
「法律用語か、知らない言葉だな」なんて深く考えずに調べてみると、
この単語のスペルは
INDICTという言葉は知っていましたが(いわゆるPassive Vocabularyで、会話には自分としては使えない)カタカナで書くところの「インディクト」という風に間違えて暗記していて(大学受験の頃にそんな風に覚えたのです)、法律とは無縁な自分は日常会話ではまず必要とされないので、本でたまたま遭遇しても、ローマ字式スペルそのままで読んでいました!
「インダイト」は「Indite」でも「Endite」でもなく、
こちらのミリアム=ウェブスター英語辞書のサイトで詳しくその理由が解説されています(英語サイト)。
英語ネイティブも頭を悩ます変な英語!
要するに、法律用語にはラテン語がたくさん採用されていますが、
など、Dictを含む言葉が英語の法律用語にたくさん含まれます。
ラテン語動詞のdicereで「言う=Say, Speak」。
語幹のDictはいろんな英語の語彙を形成します
しかしながら、呆れてしまうのは、本来の「訴える」という単語はEnditeという綴りで三百年前の昔には正しい英語として通用していたということ。
なのに(つまりシェイクスピア時代にはこのスペリングだったのです)17世紀にラテン語の indictare を英語でも使うとカッコいいという風潮となり、同じ意味でよく似ている英単語「Endite」はラテン語風の綴りに改められ、ラテン語のDICTが無理やり組み込まれて、
という書き言葉が作られたのだそうです。
発音はそのまま「インダイト」!
Cは発音されないのです!
Cはラテン語らしさを表現するに必要不可欠なので、INDICT、でも発音は英語の本来のそのままの音が使用され続けて現在にまで至るのだそうです。
いまのいままで「インディクト」なのだと思っていた自分自身にも呆れています(笑)。
というわけで、調べてみると、次のような見出しが今日の英語新聞の紙面を飾っていたわけです。音と書き言葉が全く違う英語の不可解さの好例。
Trump Attorney Expects Georgia Indictment In A Matter Of Weeks(トランプ弁護士、数週間以内にジョージア州での起訴を予想)
Trump faces his fourth potential indictment in Georgia (トランプ氏、ジョージア州で4件目の起訴の可能性に直面)
Hancock & Kelley: Trump indicted yet again(トランプ、またも起訴)
不条理な英語綴り
こういうわけで
などの訳の分からない不条理な綴りの英単語はいまもなお世界中の学生たちを悩ませ続けているです。
英語語彙の半分ほどに上るとされるフランス語由来の言葉にもサイレントなアルファベットがたくさん。
中学生でも知っているWednesdayのDは、北欧神話の神様オーディン ODIN の英語式綴りWODENのWoden's Day(Weden'sDay)が縮まってWednesdayとなったものです。
長い響きの関係でDがサイレント化。これなどは意味深い。
音が長くなると短くなってどこかの音が欠落するのは世界中の言語に共通の言語学的特徴ですが、INDICTはもう理屈に合わない。
SandwichやLandscapeのDみたいに子音の間に挟まった中間の子音が発音されなくなるというのは、そうしないと喋りにくいので理に適っていますが、Indictはね(笑)。
ああトランプさん、さまさまです(笑)。
彼が起訴されなかったらこんな言葉INDICTを何度も聞く機会はなかったはず。ご本人には大災難ですが、わたしの英語学習に刺激を与えてくれたという点においては、個人的には大感謝(笑)。
在籍中だったニクソン大統領は弾劾追訴の前に辞任して刑事訴訟を避けましたが、トランプ前大統領の場合、次の大統領選挙出馬を取りやめるならば許してやるいう司法取引を持ちかけられるのでは。
アメリカ政治の闇は深い。
別の新聞見出しはこういうものでした。
ああ英語って難しい!