前回からの続きです。
「不思議の国のアリス」で有名なルイス・キャロルの知られざる大傑作 The Hunting of the Snark。
Bの文字で始まる登場人物たち
第一部では物語に登場する全ての登場人物が紹介されましたが、スナークについてはいまだ全貌は明かされてはいません。
スナークとは何かは少しずつ語られてゆくのですが、物語の登場人物の名前が面白い。
すべてBのアルファベットから始まるのです。
全くノンセンスな世界。リアリズムよりもファンタジーな物語が展開されてゆくことが予想されます。
もちろんBがたくさんあることで英語詩の音として面白くなるのです。
航海に役に立ちそうもない、以下のようなBで始まる職業の面々は九名(八人と一匹)。
彼らだけで船を動かすことなんてできなかったように思えるのですが、だからファンタジー。
登場人物たち
船の運航には実際のところ、全く役立たなそうなこのような面子でどうやって石炭で動く蒸気船を操って大西洋を超えていったのかは知れませんが、ファンタジーな詩の世界にリアリズムは不必要でしょう。
でもそんな物語だからこそ、19世紀後半にアリスに次ぐ作品として愛され続けてきたのでした。
スナークの詩から生まれた二次創作
ニュージーランド・南島のダニーデンの児童文学作家・絵本画家のディヴィッド・エリオットは、そんなルイス・キャロルの詩の世界に魅せられた一人でした。
200ページを超える豪華な装丁の大人のための絵本ともいえる
という長い題名の労作を2017年に出版しています。
登場人物の一人であるBoots(靴磨き)が旅の手記を書き残し、そこにはルイス・キャロルが語らなかった前日譚と物語の続きが書かれていて、謎のスナークの正体が描かれていた、という体裁をとった不思議な本。
ここでは内容の全てを今回はここでは紹介しませんが、漫画のような線画による、エリオットの水彩画の描き出す登場人物は個性的で楽しいものです。
ルイスキャロルの詩は、個々の登場人物たちの個性豊かな人生経験を語り、想像力を刺激して読み応えがありますが、そこに素晴らしい挿絵を添えて、新たに物語の始まりと結末を付け加えたのです。
今回はこの本の一部を引用しながら、前回の続きのテキストを訳してみます。
Fit the Second: The Bellman's Speech
第二部: 伝令の言葉
ブージャムとは?
さてこうして、物語の核心へと我々読者を導く謎の言葉、Boojumが紹介されて第二部は終わりです。
スナークってなんなのでしょうね?
ユニークな生き物なのか、特別な人のことなのか、化け物の名前なのか、よくわかりませんが、出会うべきではない特別なスナークの名前も、Bで始まるブージャム。ここにも言葉遊びが隠されていますね。
Snarkという言葉は不定冠詞の名詞として用いられる言葉でもあり、時には動詞として「スナークなことになる」なんて風にも使われる。
全くの謎。
ここまでの第二部が起承転結の物語の導入部の「起」となります。
第三部は、記憶喪失で積み荷を全て海岸に置き忘れて船に乗った卒倒したパン屋のお話です。
To be continued (続く)