モーツァルトの新曲、発見される!
凄いニュースです(クラシック音楽が好きな人には)。
Noteのこの記事から初めて学びましたが、モーツァルトの新曲が見つかったということです。9月19日の発表。今日は21日です。
早速、英語記事を検索して更なる情報をさがしてみましたが、めぼしい情報はまだ発表されてはいません。
ですが、英語ウィキペディアでは今この記事を書いている数時間前に(つまり発表24時間後に)すでに項目が立てられています。
ウィキペディアの素早さには感心しますが、日本語版はだれがつくってくれるのでしょうか。
さて、曲の内容ですが、12分ほどの七楽章もある弦楽三重奏曲。ディベルティメントの一種でしょうね。
なので命名されたタイトルも
なぜかライプツィヒの図書館に眠っていたという話で、この作品があることは知られていたのでしたが、モーツァルトの作品ではないと長らく信じられていたのだそうです。
ですが、ケッヘル番号のカタログ(第六版がモーツァルトの全作品の整理番号のケッヘル番号の最新版)を編纂している音楽学者たちが再鑑定して、モーツァルトの真作と断定。
1780年代に作られたコピーなのだとか。だとすれば、モーツァルトのオリジナルではないわけですね。詳細を知りたいところです。
1760年代半ばから後半ごろの作品と推定されたのですが、この時期の10代前半の頃のモーツァルトの室内楽は全く残されていないので(オペラアリアやピアノや交響曲ばかり)これまで、モーツァルトの真作と決定づけられる要素が見つからなかったらしいです。
イタリア旅行の前のモーツァルト
モーツァルトは1756年生まれなのですが、ほぼ14歳になったころの1769年12月に初めてのイタリア旅行に行くのですが、その旅行前の作品なのだとか。
ちなみに父親に連れられて、モーツァルトは神童として、すでにドイツ・フランツ・イギリス・ベルギーなどを訪問していて、見世物興行を見事にこなしていました。
目隠ししてクラヴィアやヴァイオリンを弾いたり、シェーンブルン宮殿でマリー・アントワネットに「結婚して」と言ったなどと言うエピソードは有名ですね。
息子と娘をヨーロッパ中の宮廷に連れまわしたお父さんのレオポルトは、神童ヴォルフガングの子供時代の作品目録を丁寧に作成していますが、そこに記されていた作品なのでしょうか。
情報がまだ十分に発表されていないのでよくわからないのですが、レオポルトが記録している作品ならばいいのですが。
ちなみにレオポルトはイタリア時代の十代のモーツァルトの作品として、名作ファゴット協奏曲K.191とともに、チェロ協奏曲も間違いなくヴォルフガングは作曲したと記録しています。
でもチェロ協奏曲は散逸してしまっていて、幻の名曲ということになっています。
もしかしたら、今回のような形でチェロ協奏曲も見つかるのかも。
モーツァルトのチェロ協奏曲の話はこちらの投稿で以前語りました。ご参考にしてください。
謎のケッヘル番号
あと、なぜかケッヘル番号の専門家のモーツァルト学者たちは、この新発見された作品に
という番号を与えたのでした。
ケッヘル番号は、モーツアルト全作品の年代順の整理番号です。19世紀の在野の音楽学者ヴォルフガング・ケッヘルによってつくられて以来、モーツァルト作品を語るのになくてはならない作品番号。
モーツァルト作品の場合、ほとんどが生前には未出版だったために出版に使われた作品番号はあまり意味をなさないのです。
だからケッヘル番号なのです。
さて、生前最後の作品はケッヘル番号でいえば、「レクイエム」のK.626なのですが、新発見作とはいえ、どうしてレイクエムのあとの番号なのか。
年代順に並べられるのがケッヘル番号の良いところなので、本来ならば、例えば
などと言う番号が振られるべきなのですが、空き番号が130番台にはないのでしょうね。改訂版ケッヘル番号は第六版まで出版されていますが、学者さんたちはきっと第七版を作成されている途中なのでしょう。
その折に、きちんとした年代順に番号が訂正されるものと思われます。
「ガンツ・クライネ」と同時期の作品:初期モーツァルトの大傑作
モーツァルト最初のイタリア旅行の前の12歳のモーツァルトが書いた作品には、「孤児院ミサ」K.139と呼ばれる、重々しいハ短調のキリエで始まるという奇跡のような大傑作があります。
これが小学校六年生の年齢の子供の作品?
というほかに言葉がないほどの見事な作品ですが、新発見の「ガンツ・クライネ・ナハトムジーク」はこの作品が書かれた時期の作品らしい、ということになりました。
もう少し前のモーツァルトが書いた作品として有名なのは、ジングシュピール(歌芝居)の「バスティアンとバスティエンヌ」K.50があります。
序曲がすこぶる面白い。
聞いてびっくり。
序曲の開始部分はベートーヴェンのエロイカそっくりなのです。
三拍子の「ドーミ・ドーソ」というドミソ(ト長調で)を分散させた音型なので、偶然の一致なのでしょうが。
いずれにせよ、「ガンツクライネ」の音源はまだネットには発表されていず、楽譜もまだ公開されていません。
モーツァルトの弦楽四重奏曲としては、ベートーヴェンの後期作品に通じるような深みを湛えた晩年のK.563がありますが、初期作品にこのような陰りと深みがあるはずもありません。
ですので、新作に期待すべきは、そのような大人の深みではなくて、まだ子供らしい天真爛漫さです。
つまり、二度目のイタリア旅行時代の大傑作「ザルツブルグ・シンフォニーK.136」(1772年の作品)を先取りしたような作品だと嬉しいのですが。
「ザルツブルグ・シンフォニー」はモーツァルト音楽の粋のような、素晴らしい作品。
全編に陽光溢れる暖かなイタリアの風が吹いている、初期モーツァルトの最高傑作。メンデルスゾーンではありませんが、いわばモーツァルト作の「イタリア交響曲」です。
弦楽四重奏版としては、古き良きウィーンの音を伝えるバリリ弦楽四重奏団が最美の演奏。この演奏大好きです。
ガンツクライネ、どんな作品なのでしょうね。楽しみです。