見出し画像

「ゆうがたクインテット」が生んだ世界的ヴァイオリニスト:Trubute to Hina Maeda!

とても素敵な記事を読みました。ご紹介します。

大阪府豊中市出身のヴァイオリニストの前田妃奈さん(22歳)。

2022年にヴィエニアフスキ国際ヴァイオリンコンクールで優勝されたのだそうですが、残念ながら、二年前のこと、わたしは全く記憶していません。

きっと大きく報道されていたはず。

仕事が忙しかった時期なので、全然気が付きませんでした。

前田妃奈のブラームス!

コンクール優勝の後には世界凱旋ツアーなども見事にこなされて、日本に無事帰ってこられた前田さんのことを知ることができて嬉しいです。

ブラームス・ヴァイオリン協奏曲作品77
第一楽章コーダ。全身全霊を傾けて没我の境地で渾身の演奏

すべてのコンクール優勝者や入賞者を応援するわけではありませんが、前田さんがコンクールの本選で演奏したブラームスを聴いて、確信しました。

彼女は私の大好きなタイプの全身全霊で音楽と向き合う演奏家であると。

こういう演奏家はいつだって推したい。

そうでない演奏家もたくさんいますからね

ビジネスの道具として音楽をしていたり、クラシック音楽の伝統を重んじていなかったり。

演奏家の音楽に対する姿勢と志がわたしには大事。

これに共感できないと、どんなに良い演奏をしていても、推せません。

推したくなるか、アンチになるか。

日本人だから推すのではなく、彼女が素晴らしい演奏家だから推すのです。

第二楽章・全身全霊で祈るように奏でるヘ長調のアダージョ
音楽は短調に陰り、深い憂愁が漂う
エクスタシー!
天を仰ぐように目を閉じて音楽と一体化して

音楽とずっと真摯に向き合ってきた人生を送ってきた若い彼女。

彼女の人生が前途洋々であってほしいものです。

コンサート演奏家人生は所属事務所にコンサート漬けの毎日を送らされて、自身の研鑽を積むための自由な時間が奪われてしまうこともありますからね。

東西冷戦の真っただ中で敵国ソ連の首都モスクワにて、見事優勝した、アメリカの第一回チャイコフスキーコンクールの覇者ヴァン・クライバーンのような悲劇的な例もあります。

クライバーンは、コンサート優勝後に米国に凱旋します。そして、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番ばかり、毎日のように全米中の至るところで演奏させられて、大人たちに

「金のなる木、ドル箱」

にされてしまって、終に芸術家として大成することはできませんでした。

コンクールの映像、わたしが見たのは前田さんのブラームスだけでしたが、若さにもかかわらず、ただの高度なテクニックによる美音ではなく、表現にまで昇華されていました。

弱音の繊細さが染み入ります。

憂愁に沈むアダージョが終わると、第三楽章フィナーレでは、抑えられていた感情が爆発して、歓喜の舞曲に!

このフィナーレのドライヴ感、凄いです!

演奏は演技!
魅せるヴァイオリン、音だけじゃわからない彼女の魅力
体を左右にジクザグするヴァイオリン演奏家が多いのですが、彼女は上下に揺れる
武道ではありませんが、体幹がしっかりしているという印象を受けました
どんなに揺れても軸足は動きません
ブレてしまうヴァイオリニストは超一流になれません
モデル体型で体の細い女流ヴァイオリニストには、この音は絶対に作れない
丸い彼女の頑丈な体形は武器です!

ブラームスらしい陰りのある深い音が終始鳴り続けていて、ブラームスの交響的な音楽の魅力を堪能できました。

具体的に書くと専門的に過ぎるので割愛しますが、わたしは彼女のブラームス、とても好きです。

これからもずっと、ブラームスを大事なレパートリーとして弾き続けてゆくのだと思うのですが、彼女のブラームス演奏はますます深化してゆくことでしょう。

この映像は2年前のものなので、現在の彼女の演奏は更なる高みへと向かっているものだと思います。

宮川アキラのNHK教育番組「クインテット」

前田さんのインタヴューを読んで面白いかったのが、彼女の四歳の頃のエピソード!

NHK教育テレビの「ゆうがたクインテット」という、作曲家の宮川彬良さんがやっていた音楽番組が大好きで。パペット人形がヴァイオリンを弾いている姿を見て、「人形が弾けるなら、私にも弾ける!」と親にお願いしてヴァイオリンを始めることになりました。

わたしも宮川彬良さんの楽しい「ゆうがたクインテット」を(大人なのに)夢中で見ていました。

幼児だったうちの子供にも見せていたのですが、うちの子はほとんど関心を示さないで、前後で出てくる「ピタゴラスイッチ」ばかり見てました(笑)。

息子はおかげで(?)「からくり仕掛け」やら、機械関係のことが好きになってくれたのでよかったのですが。

子どもよりも大人のわたしを夢中にさせた「クインテット」。

人形たちがいろんな音楽を楽しく楽器で演奏して披露してくれたのでしたが、クインテット Quintet とは「五重奏」のこと。

つまりセサミストリートに出てくるような人形たち

アキラ(宮川彬良)、パペットのスコア、フラット、アリア、シャープ

の五人の演奏者が、

  • ベートーヴェンの「運命」

  • バッハの「イタリア協奏曲」

  • ロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」

などを演奏したのです。

もちろん番組オリジナルの楽曲や子供の唄もたくさんありました。

そのすべてを編曲していたのは、作曲家の宮川彬良さん。

宮川さんの編曲が素晴らしく、よく知っている曲を

ほう、こんな風にアレンジしたのか!

とわたしはしきりに感心するばかり。

宮川さんのあまりのセンスの良さに、どのエピソードを見ても脱帽なのでした。

もちろん個性豊かな人形たちが演奏するにふさわしいアレンジとして。

人形使いの裏方の黒子さんたちの芸達者振りにも目を奪われました。

四歳の前田さんを夢中にさせただけのことはありますよね。

ピアノソロなはずの「エリーゼのために」もこんな風!

「アキラ編曲」、最高です!

モーツァルトのアイネクライネも。

人形のトランぺッター、カッコいい!

レロイ・アンダーソンの「トランペット吹きの休日」。人形なのにザイロフォンと楽器持ち替えるし。

こちらは会話付き。ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」。

アキラさんスペシャル!ピアノを弾く人形、本当に凄い!

他にもたくさんありますが「クインテット」の魅力、伝わったでしょうか。わたしはクラシック音楽ばかりを集めた特別プログラムのDVDを持っています。

この番組が放送されていたのは、2003年から2013年まででした。

ちょうどこの時期に子供二人が生まれて、長期育休もとって、夜中に哺乳瓶で何度もミルクを赤ちゃんにあげて、朝から晩までおむつを替えて、ずっと子供中心の生活を何年も送っていました。

わたしがテレビで見たのは番組後期の頃でした。

上の子はスペクトラムな子だったので、何事にも想定外なことばかりで、本当に大変でした。

起きると抱っこしていないと泣いてばかり。

親が死にそうになるような大変な子育てでした。

でも今では良い思い出です。

海外在住なので、長期休暇を毎年とって帰国して、日本語を覚えさせるために、子どもたちを大阪吹田市(前田さんお住まいの豊中市のお隣)の保育園や小学校に何度も入れました。

こっちにあっちとせわしく行ったり来たりして。

チビたちとの忙しい日々、日本に短期滞在していた頃は、英語ネイティブの我が子に日本語のシャワーを浴びせるために、夕方はNHKの教育番組をずっとつけっぱなしにしていました。

もう一つの素晴らしいNHK教育音楽番組「ムジカ・ピッコリーノ」についてはこちらで語りました。

前田さんを音楽の世界へと導いた、伝説の音楽番組「クインテット」。

わたしが大好きだった番組から素晴らしい演奏家「前田妃奈」が生まれたという事実に、わたしは感動しました。

この世で最も大切なのは、子どもたちの将来を育てるための教育。

心からそう思えることが嬉しいですね。

おまけAI画像:

ヴァイオリンを弾くヨハネス・ブラームス

ブラームス先生も前田さんの演奏、きっとお好きですよ!

ブラームス先生にクインテットみたいな可愛いパペット人形持たせようとしたら、こんな具合に(笑)。ああSDXLって。

AI画像ってなかなか思い通りのものになりません。

前田さんの素敵なブラームス演奏、ぜひ「目で見て」聴いてください。

この記事が参加している募集

ほんの小さなサポートでも、とても嬉しいです。わたしにとって遠い異国からの励ましほどに嬉しいものはないのですから。