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今週のリフレクション【何回話しても伝わらない はなぜ起こるのか?(今井むつみ氏)】
今週は、今井むつみさん著「何回話しても伝わらない はなぜ起こるのか?」を振り返ります。ざっくり3点で要約すると・・
1.私たちは、相手の話した内容をそのまま脳にインプットするわけではなく、常に受け手が解釈している。解釈の思考には、意識されずに使われる枠組み(=スキーマ)がある。相手に理解してもらうことは、相手の思い込みの塊と対峙すること。そして、言った側と言われた側で情報の重要度は違うため、人は忘れる。記憶は曖昧で、常に事実に基づいた話ができるわけではない。
2.①2つの誤解:記憶力のいい成績優秀者は理解力がある。記憶違いは理解が足りなくて起こる。②私たちの視野も認識も常に偏っていて、捉えるものは人によって違う。③専門性が視点を偏らせ視野を歪ませる。④人間は記憶マシーンにはなれない。⑤言葉が、感情が、記憶をどんどん書き換える。⑥認知バイアスで思考が止まる。だから、「言っても伝わらない」が生まれる。
3.それでもわかってもらうためには、相手の立場で考える。①心の理論=他者の行動から、考えを推察し、解釈する心の動き。②メタ認知=自分自身の意思決定を客観視すること。感情に気を配り、目的に合わせて、情報の具体と抽象の粒度をコントロールする。相手がどういう視点で、どういうスキーマを持って状況を捉え、状況に対してどういう感情を持っているかを推論する(意図を読む)。
採用活動で学生に会社説明をしても、一発で完璧に伝わることはまずありません。100伝えても、学生が都合の良い部分30を拡大解釈して理解するイメージです。もちろん、伝える側が工夫できる部分もありますが、このアプローチには限界があると感じます。
なぜ、完璧に伝えることは難しいのか?
それは、話し手にも聞き手にもこれまで生きてくる中で経験した独自の物語があり、その物語がそれぞれ違うスキーマとなるからです。話し手がいくらフラットに伝える努力をしても、聞き手が無意識のスキーマで解釈して理解してしまうことは防げません。
では、どうすればいいのでしょうか?
このコミュニケーションギャップは、対話でしか解消できないと思います。お互いに腹を割って自分の受け取ったことを伝え合う、対話。そこから初めてお互いのズレに気付き、ようやくズレを解消するチャンスが生まれます。そして、相手の感情や価値観に触れることで、少しずつギャップが解消されていきます。
コミュニケーションはズレるのがデフォルト。ズレを解消するのは、素晴らしいプレゼンテーションではなく、対話。そんな大前提を頭に入れつつ、入社後のミスマッチを防ぐことが採用シーンでは大切だと改めて感じました。
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