若いときの運動が40年後の血管を救う【DoctorTのスポーツ・エクササイズ医学】
みなさん、こんにちはDoctor Tです。年越したと思ったらもう卒業のシーズンですねね。いかがお過ごしでしょうか。
今回のトピックは「思春期のときの体力と中年時の動脈硬化」です。スポーツ医学ではかなり信頼度の高いBritish Journal of Sports Medicineの記事を紹介します。
https://bjsm.bmj.com/content/bjsports/early/2024/02/05/bjsports-2023-107663.full.pdf
「18歳のときの体力」と「中年のときの血管の状態」の関係
8986人のフィンランド人男性を対象にしています。1978年から1987年に徴兵に参加した平均18.3歳の男子(当時は法的に義務だったので82-92%の全男子が参加)を平均38年追跡して平均56.5歳になったときの動脈硬化を調べています。
有酸素運動能力と筋力
18歳のときの有酸素能力と筋力を見ていますが、有酸素運動は「エアロバイクで徐々に負荷を上げ、どこまで耐えられるか」を、筋力は「膝を伸ばす力、握力、肘を曲げる力」を測っています。
動脈硬化
動脈「硬化」とは
動脈硬化とは、本来は弾力のあるそれらの動脈が徐々に硬くなる現象のことをいいます。
買ったばかりのホースはしなやかにたわむのに対して、長い間外に置かれていたホースは硬くなり、裂けたりしますね。そして、ホースに泥水を流すと段々ホースの中が詰まっていきます。硬くて詰まりかけたホースに水を流すと、いつか、ホースの壁が割れて水がしみ出すか、泥でホースの中が完全に詰まることがあります。血管にも似たようなことが起きます。
梗塞や出血の原因
ホースを血管に置き換えてみましょう。血管の壁が壊れると出血、血管が詰まると梗塞になります。脳の血管に起きれば脳梗塞、心臓に起きれば心筋梗塞と言います。
動脈硬化になる要因
いくつかの要因がありますが、直せる要因に注目しましょう。タバコ、高血圧や糖尿病の他に運動不足もそれに当たります。
若い時の身体能力が高い→中年での動脈硬化が少ない
この調査では、若いときの身体能力が高かったひとは中年になったときの動脈硬化の程度が軽かったということです。運動能力の下位3分の1の人と比べると、上位3分の1のグループの人は動脈硬化の強い(血管狭窄>50%)人の割合が20-30%減っています。
若い時から体を動かそう
若いときの運動はその時の体調も良くする上に、将来の血管への投資になっているとも言えます。一石二鳥です!でも、年を取ったからと言って遅すぎるということもありません。
一生を通して運動を続けるメリット
運動はどの年代でやってもメリットがあります。 下の図は一生を通しての筋力とバランス能力の推移を表しています。18−24歳ごろに筋力のピークがあり、骨や筋肉量もこのころにピークに達します。下のグラフの青と緑の差はライフスタイルの差です。緑が、より健康的な生活を送った場合です。
ライフスタイルには食事やタバコだけでなく、運動習慣も含まれます。
筋力のピークを上げて、低下を遅くする
子供の時から一生を通して運動すると、筋力とバランス能力はピークが高くなり、その後の低下スピードも遅くなります。
それぞれの年齢での筋力とバランスのレベルに差が出ているのがわかります。さらに注目したいのは年を取ったときに、自立できなくなる時期を遅らせる効果です(赤矢印)。
まとめ
若いときの身体能力が高い人は中年時の動脈硬化が少なかった
若いときの運動は将来の体への投資にもなる
高齢になったときに自立して生活できる時期が長くなる
ライフスタイルというとタバコや食事が注目されがちですが、運動も同等もしくはそれ以上健康に影響を与えます。体力だけではなく、血管・心臓にもよい効果があります。脳にも働き、気分を前向きにしたり、認知症を予防・遅らせる効果もあります。
体を動かして、健康で前向きな人生を!
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