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小説、イラスト、漫画、映像 創作サークル SPONGE LABO note. 主にがる…

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小説、イラスト、漫画、映像 創作サークル SPONGE LABO note. 主にがるあんの小説をアップしていきます。 http://spongelabo.com/

マガジン

  • 小説の書き出し(がるあん短編小説集)

    構想も何も無い状態で小説の書き出しだけを書くという遊びをしてみる事にした。やってみればそれは結構面白かった。しばらく続けてみようかなと思います。がるあん短編小説集。

  • がるあん随筆集

    随筆、随想、エッセイ、エッセー、戯言

  • 小説「練馬」

    今の私にとって他人は誰でも輝いて見えたが、彼女の輝きは一層だった。 東京都練馬区在住27歳無職おまけに今なら彼女なし。 そんな「私」のただ何もなく喫茶店で珈琲と読みかけの小説と私的メモを書き留めるだけの無益な日々に 突如現れた芍薬の如き黒髪の女性。 そして止めどなく回転し始める妄想エンジン。 2016年、リオ五輪に沸く夏、「私」に巻き起こった"変"のすべてが今語られる。 ■著者/がるあん ■表紙イラスト/ヨツベ ■140ページ ■A6(文庫サイズ) ■発行日/平成29年(2017年)5月6日

  • スーパーウラシマコレクション

    大学生となり寮暮らしを始めたレトロゲーマーうら。隣部屋から転がり込んできて居座りモンスターと化した嶋先輩。スーパーファミコンのゲームをめぐる短編小説集。ゲームを通して人生が見えてくる!?

  • タイタンの彼女

    「僕は遠い昔に何かをやり残したのでは無いだろうか。」 タイタンから来たという謎だらけの少女と少年の邂逅。 原案ヨツベ、著がるあん 全8回のオリジナル小説

最近の記事

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がるあん profile

フリーシナリオライター/脚本家 WORKS『ワールドフリッパー』 ・キャラクターシナリオ複数 ・イベントシナリオ『偽りの人形姫』 ┗シナリオ、世界設定、ボスデザイン、舞台デザイン 【小説】「練馬」 https://yotube.booth.pm/items/5988635 コンタクト garuan0310▲gmail.com *上記▲を@記号に置き換えて下さい SNS X(旧twitter)

    • 星屑のカエル

       ずん、ずん――街の遠くの方から、何かを叩くような音が聞こえる。音の正体が分からなくても、僕はどこか懐かしい感覚を覚えた。  「これ、太鼓?8月も終わりなのに――暑すぎる」  それが独り言だったのかどうかは、僕にもわからない。  「でも夜になれば虫の音も聞こえるよ。昔の人は虫の声で涼を取ったなんて聞くじゃない。虫聴きって、知らない?」  僕が返答をしないでいると、それは不思議そうにこちらを覗き込んだ。彼は表情まで変えて、しまいには口角まで上げてみせた。まるで生きているみたいに

      • 選択する悪魔

         スーパーの商品棚へ手を伸ばし、しばし逡巡する。  目的の品である二種類のマッシュルームが並んでいた。  ホワイトマッシュルームとブラウンマッシュルーム。  差し出した手がそれぞれの前を行ったり来たりしていると、私は少し馬鹿馬鹿しくなって口角が上がった。  どちらを選んでも味や金額に差はない。私は料理の見た目に拘るタイプでもない。心底どうでもいいと感じる二択を前に、私は今迷っている。  やがて白いマッシュルームが選び取られると、左手に抱えられた買い物かごの一番上へ放り投げられ

        • 炭酸が好き!

           炭酸といえば、何を連想するだろうか。  それは、世代の変遷によって変わっていくものかもしれない。  子供の頃は炭酸といえば、それはもっぱら炭酸ジュースだった。  コーラ、サイダー、クリームソーダ。あまり飲みすぎていると、体調を心配した祖母が「炭酸を飲むと骨が溶けるよ」などと嘯いた。子供だった私はその言葉を信じてしまったが、それでも炭酸ジュースを前にしてしまうとつい自販機のボタンに手が伸びてしまうのだった。  当時はブルーウェーブ時代のイチローが広告をしていた三ツ矢サイダー

        • 固定された記事

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        • 小説の書き出し(がるあん短編小説集)
          13本
        • がるあん随筆集
          3本
        • 小説「練馬」
          17本
        • スーパーウラシマコレクション
          5本
        • タイタンの彼女
          10本

        記事

          自分でえらんでよかったこと

           あの時こうしてなかったと思ったらぞっとする、というような文句は聞く機会が多い。人生を振り返ってみれば、過去の自分が選び取った何気ない選択が、今の人生を決定付ける要因となることもある。  いくつかあった人生の岐路で、私は選んでよかったと思える道を辿れたろうか。振り返れば失敗ばかりが目に付くものだが、少なからず点在する選んで良かった道について、振り返ってみようと思う。  私は20歳で故郷の愛知から上京し、東京都内のアニメ会社に就職した。アニメーターという仕事への憧れだけで飛び

          自分でえらんでよかったこと

          「練馬」 15/15

          14へもどる               *   「私の生きた証を残しておく」     人間とは瞬間的な生き物だ。このメモを読む私は既に今の私では無いかもしれない。唐突にこんな事を思いついたので記録を残しておこうと思う。  私は昨日、由梨絵さんという女性と出会った。それは私の人生において、あまりに劇的な出会いだった。  私自身が少しずつ変化していく予感がある。何しろ半年間私は何もしていなかった。読んで字の如く本当に何もしていない。自宅と、練馬駅と、メモと、読みかけの小説以

          「練馬」 15/15

          「練馬」 14/15

          13へもどる               *    改めてこんな内容のメモを読み返していて思う事がある。こりゃ嘘ばっかりだ!  彼女との最後、川のほとりを散歩する辺りなんかはロマンチックに改変しすぎている気がしてならない。昔の事なので本当に改変されてるか事実ロマンチックだったかは全く解らないのだが。  遠い昔の記憶はおぼろげで霞んでいて、ぼんやりとしか見えない。  ぼんやりとしか見えなければ思い出は美しく見えるものかもしれない。事実今の私には彼女の顔をはっきりと思い出すこ

          「練馬」 14/15

          「練馬」 13/15

          12へもどる               *    今日も今日とてミスタードーナツ練馬駅前店で珈琲を啜りはじめてから、もう二、三時間は経っただろうか。メモを書くのも飽きてきたので私は本を読み始めた。現在読みかけの本は太宰治の「晩年」だった。  ロマネスクという短編の「嘘の三郎」という章を読んだ。  三郎という主人公が身の回りの人に嘘を付きまくる話だった。三郎の嘘は幼い頃から天才的で、それに気付く者は彼の周りには居なかった。後ろ暗い過去を背負い続ける主人公の話である。  三郎

          「練馬」 13/15

          「練馬」 12/15

          10へもどる               *    現在時刻は十九時半。私は自室の机でこれを書いている。  唐突で驚くかもしれないが、既にあの日から随分時間が経っている。今の私にとって、あの夏の出来事は、半年以上も過去の話になる。  そして残念ながら彼女との再会の事は細かく書かない。これは既に私の中で決定しているので反論は無駄である。  私は一度あの日の事を事細かくメモを取ったのだが、あまりの恥ずかしさに出来上がってから自室で転げ回った。そのメモに関しては抹消はしていない

          「練馬」 12/15

          「練馬」 11/15

          10へもどる  この時の私の精神状態は言葉では表現出来ないだろう。出来ないのはきっと私の文才が無いからである。以上。  以上ではない。以下続く。  彼女が再び私の目の前に居る。果たしてこれは本物なのだろうか、謎の思考に陥る。私は混乱していた。 「えっと、もしもし?」  どうやら私の意識は遠い昔遥か彼方の銀河系に居たようだった。ハイパードライブで今地球に帰ってきた。彼女は私の目の前で手を振っていた。  あ、うん。  そんな言葉しか口から出てこなかった。私は金剛力士像

          「練馬」 11/15

          「練馬」 10/15

          9へもどる              *    あの日以降の私はというと寧ろ清清しい気分で一杯であった。  清清しさに支配されて心が何でもかんでも許してしまいそうだ。今なら突然他人に殴られてもニコニコしたまま許してあげられる。なあにそんな気分になる時もあるよね。  まあ、このような事が考えられるのだから私の精神状態はほどほど正常のようだ。しかし突然他人に殴られても良いなどとは、本当の所思っていないので殴るのは止めて欲しい。殴られた所で私は人を殴ったことがないので殴り返すこと

          「練馬」 10/15

          「練馬」 9/15

          8へもどる               *    いよいよ、当日になった。  果たして彼女は本当に実在しているのだろうか。その答えはようやく今日出る。  携帯電話のメモを確認する「十日十時ミスタードーナツ、十四日十時ミスタードーナツ」大丈夫だ。今から出て早すぎるということは無いだろう。時刻は九時を回るところだった。  私は出来る限り身だしなみを整えた。昨日購入したシャツも着た。財布は持った。携帯電話も持った。鍵も、鍵が無い。  私は部屋中ひっくり返して鍵を探した。  鍵

          「練馬」 9/15

          「練馬」 8/15

          7へもどる               *    由梨絵さんとのデートまで、遂にあと一日というところまで来てしまった。今日は自分自身の身だしなみについて考えることにした。  毎日毎日女の事ばかり考えている無職。この世でもかなり下等な生き物だろう。下等上等。  下等で勝とう。  謎のスローガンを打ち立てた。ここまで来てネガティブになっていても仕方が無い。  私は行き着けであった低価格な美容室を予約した。練馬駅前、ミスタードーナツから程近い場所にある美容室だった。  以前私は

          「練馬」 8/15

          「練馬」 7/15

          6へもどる               *    由梨絵さんとの邂逅から二日経って、私の人生がいかに平凡なものだったか思い知らされる。今日は何も無かった半年間を寸分違わず繰り返すだけの日だった。  いよいよ二日も経って彼女は本当に幻だったのではないかという気持ちが強くなる。しかし幻だとしたらそれは実体がある人間との邂逅以上に奇跡的であろう。  というかもし幻だったら病院にいって検査してもらおうと考え直す。その場合私はきっとおかしくなっている。  現在時刻は夕方の十八時を回

          「練馬」 7/15

          「練馬」 6/15

          5へもどる   池袋は人が多い。以上池袋に関する感想を終わる。  私はとにかく腹が減っていた。意味も無くこんな所に来てしまって、見知らぬ土地でこれから食事処を探さなければならなくなった。  腹が減りすぎてきっとヤバい顔になってきているだろう。元々人相はヤバいから、これ以上ヤバいとヤバい顔の人が居ると通報される。早くしないとヤバい。もう何でも良かった。それほどに私はヤバかった。  私はマクドナルドに飛び込んで、エビフィレオのセットを頼んだ。何故エビフィレオにしたのかというの

          「練馬」 6/15

          「練馬」 5/15

          4へもどる                *  自室で目覚めた私はようやく頭がすっきりしたようだった。  一度寝たことで冷静に物事を考えられるようになった。  睡眠というのは脳が休止するのと同時に、記憶を整理整頓をする時間でもあるらしい。  携帯電話を開くとメモ帳アプリが開きっぱなしだった。「十日十時ミスタードーナツ、十四日十時ミスタードーナツ」と書いてあるメモだった。  昨日私の身に起こったことは事実だったのだろうか。そういえば、彼女の名前すら聞いていなかった。私も自分の

          「練馬」 5/15