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【読書】〜読書をはじめて語彙力をつけたいと願う同い年のいとこに〜 |吉田修一『ブランド』
初めての大学の長い夏休み、久しぶりに母の実家でいとこと再会しました。彼女は強豪校のバスケ部のキャプテン、私は東大受験生だったため高校の間はなかなか実家への帰省も互いの家の行き来もできずにいましたが、彼女の活躍を両親から口伝えで聞くたびに我が身を振り返り奮い立たせられていました。そんないとことの久しぶりの再会になる実家への帰省にたまたま持っていっていたのがこの本でした。
本書は吉田修一さんが広告や企画で書いた短編小説やエッセイをまとめた本で、巻末のインタビューでは「吉田修一前菜集」なんて表現されていたりもします。同著者の重厚な「犯罪小説集」を直前に読んでいた反動で本書の持つ爽やかで清冽なセンスをかえって強く感じ、ただただ気持ちいい読書体験をさせて頂きました。特にティファニーとのタイアップ企画「ティファニー 2012」の登場人物たちの生き方の美しさには体の奥まで澄み渡り背筋が伸びるような思いでした。
話は戻り、実家で3時のおやつも終わって居間でめいめいが好きなことをしている時間、私はこの本を開いていましたが、例のいとこが母に「語彙力をつけたい」と相談をはじめたのが聞こえてきました。「やっぱり本がいいんだろうね...」「本ねえ...読んでこなかったからなあ...」...。聞き流しながら私はこの本を勧めるか迷っていました。確かにこの本は面白いけど何か血湧き肉躍るような出来事が起こる面白さとはまた違うし面白いと思ってくれるだろうか?彼女なら面白くなかった場合も絶対気をつかってくれるだろうな。同い年なのに本を勧めるのは偉そうじゃないか?そんなことを考えている間にあっという間に彼女たちの話題は変わっていました。
でも、この本の写しとる人間の営みの美しさは私を支えてくれた彼女のあり方にも通底するものだと読み終えて気づきました。そしてそれは読書経験がなくても読み取れるものだとも。 今なら例えばこんな感じで勧めてみます。
わくわくする冒険ってほどじゃないけど、「小説みたい」な奇跡で動く物語も入っているから面白いと思う。難しいけどきれいな言葉がたくさん入っているから語彙力も上がるかもしれないよ。そして...
私の高校生活を時々その姿で支えてくれたあなたも、この本の登場人物たちの魂の美しさを、それを感じ取れる心をきっと持っているから。
よかったら、読んでみてください。
『ブランド』
著:吉田修一
出版:KADOKAWA
ISBN:978-4041148549
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