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【読書】〜好奇心旺盛な近所の女の子へ〜 |『10歳の質問箱 なやみちゃんと55人の大人たち』

世界にはまだ、わからないことがいっぱい。

おとなって何を考えてるんだろう?どうして宿題なんかしなくちゃいけないのかな。ところで、学校の裏にあるおうちに住んでるおばあちゃん、なんでいつもわたしにお菓子くれるんだろう?

そうして、会うたびに何個も質問をぶつけて私を困らせる彼女は、9月でちょうど10歳になりたての小学4年生。気の強そうな目もとは好奇心に満ちあふれていて、おもしろそうな物事が転がっていないかどうか常に周囲を観察中。好奇心を刺激するものを見つけては、一目散にこっちに走ってきて「これは何?どういうこと!?」と大人を問いつめるのだ。

そんな彼女に、いつか絶対に教えてあげようと決めた本がある。

東京に住んでいる私が彼女に会えるのは、両親と一緒に山梨の祖父母の家に帰省したときだけだ。それでも、会うたびに目を輝かせ、好奇心のままに私に質問をぶつけてはもらった答えを反芻している。なんでアイスって2個食べちゃダメなの?夏休みってどうしてあるの?…かんたんに答えを授けてあげられる質問もあれば、私自身がうーんと考えさせられてしまうときもたくさんある。帰省するたびに刺激的な思いをさせてくれる彼女のことが大好きだ。

そんな彼女が、秋ごろ山梨を訪れたとき、少々おとなしかった。好奇心は抑えられないらしく、絶え間なくキョロキョロと落ち着かないのはいつも通りだったが、いざ問いを発するとなると何かが喉につかえて出てこないといった様子だった。どうしたの?そう聞くと、彼女が彼女の言葉でぽつぽつと語りだした。

「わかんないこと何でも聞いちゃうのってダメかなって思ったの。へんな顔されたりするし。だれも答えられないようなこと聞いても嫌われちゃうから。そうやって思うようになってから、聞こうとすると悲しくなって、それでやめようってなるの。」

そんなことないのに。話を聞いた私の胸がぎゅっと締めつけられた。知らないことを知りたいと思う気持ち。些細なことを不思議に思う気持ち。彼女にしかない、かけがえのない宝石のようなものだ。何かを知りたいと思い、答えを見つけ、そうして私たちは大きくなっていく。近くにいる人から答えを得ることができなくても、彼女の貪欲に世界を知りたがる姿勢はどうしてもふいにしてほしくなかった。そのとき、私自身も読んだことのあるこの本の存在がよぎった。

『10歳の質問箱』

何人もの大人たちが、思い悩む10歳の子どもたちが抱く不思議な気持ちに真摯に向き合って答えを用意した1冊の本だ。彼女の好奇心に心ゆくまで寄り添ってくれる、10歳の彼女と等身大の質問と答えがたくさん詰まっているだろう。友達ってなんで必要?好き嫌いの気持ちにはどうして抗えないんだろう?身近な人が答えてくれない問いにも、文章を書くことを生業としている優しい大人たちがきっと真摯に答えてくれる。

彼女の飽くなき好奇心が、この先彼女の世界をいかんなく彩れるように。私はこの本を彼女にわたしたい。


『10歳の質問箱 なやみちゃんと55人の大人たち』
編:日本ペンクラブ 「子どもの本」委員会
出版:小学館
ISBN:978-4092271814



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