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貧乏人のパスタがしゃらくさいので「素寒貧のパスタ」を作る

※2022年オモコロ杯出場作品です※

こんにちは、三戸満平です。

コック帽は持っておりますが料理人ではありません

皆さん、いきなりですが、お金がなくて困ったことってないでしょうか。

あ、いや、違うんです!別にこの後「絶対もうかる商材!」とか売りつけるつもりはないのでご安心ください。

人によって困り具合はピンキリかと思いますが、あのウルトラ大富豪のイーロン・マスクさんですら、きっとツイッターを買収するために「もっとお金が欲しい・・・」と思っていたことでしょうから、世の中はお金がなくて困ってる人が殆どなのかもしれません。

しかし、人間の困ったところ、それは
それでも腹が減る
ということなのだと思います。

そのことを反映するように、世の中には貧乏料理、綺麗に言えば「節約料理」とでも呼ぶべきものが溢れています。

お金がなくても腹は減るし、お金がなくとも美味しいものをたらふく食べたい。これは人間の古代からの欲求のようです。

それを示すがごとく、イタリアには直球すぎる貧乏料理が存在します。
その名も「貧乏人のパスタ」。いや、直球すぎるだろ。

【「貧乏人のパスタ」高級説】


貧乏人のパスタ(スパゲッティ・デル・ポヴェレッロ)
は、以下の材料で作られます。

  • 卵2個

  • 粉チーズ 大匙3

  • 塩 適量

  • 胡椒 適量
    (ニンニクを使ってもいいらしいですが今回はスルー)

主な材料。これに塩。

作り方としては、まず卵一つをつかって目玉焼きを焼きます。同時進行でパスタも茹でましょう。

目玉焼きって美しいですよね

で、焼きあがったところに茹でたパスタをどさー。そして粉チーズをばさーとかけます。

粉チーズをばさーとした瞬間

そのまま目玉焼き、パスタ、粉チーズをよく和えてからお皿に盛り付け。
そしてここに!

残りのもう一個の卵で作った目玉焼きをどーん!

あとは胡椒をお好みで振りかけて、上に載せた目玉焼きを崩しつつ食べるというのが貧乏人のパスタなんですね。

いつだってとろける黄身はぼくらの味方。

食べてみると、目玉焼きと粉チーズがパスタに絡むことで、何となくカルボナーラのような味わいになり、胡椒のキレのある辛みが食欲をそそります。

正直言ってめっちゃうまい。うまいよ貧乏人のパスタ。

うまいんだけど。

これ、全然貧乏じゃなくない・・・・?

奈良県民価格で調べてみると、卵10個が220円、粉チーズが80グラムで323円(2022年4月現在の近くのスーパー価格)。

調味料・パスタ・油については実家のマンマが仕送りしてくれたとしても、それ以外に116円、具材にかかっていることになります。

価格を差し置いても、目玉焼き2個ってなかなかセレブ。松屋でソーセージエッグW定食に手が伸ばせず、いつもソーセージエッグ定食で済ませている僕にとっては殿上人な食事です。

そして何より粉チーズ。君だよ君。

イタリアと日本の違いはあるのかもしれませんが、お金がない時に家にあるのが粉チーズだけ…という状況はなかなかないのでは。

うだうだと書いてしまいましたが言いたいこととしては

ということなんですね。
自称貧乏アーティストの若者(でも実家は富豪だし横浜のマンションとかに一人で住んでる)とかが、家にやって来た女性に「ごめんね、こんなものしかなくて…」って言いながら作ってそうなイメージ。(妄想です)

貧乏人のパスタが「オシャレ貧乏」であるとわかった以上、これを超える、真の貧乏人のパスタを作らねばなりません。

しかし、貧乏人のパスタを超えるような強烈なネーミングなんてあるのか・・?

ありました。

ウルトラ大人気ゲーム、エルデンリングの中に出てくる「素寒貧」という言葉を聞いた時にびびっときました。これ、貧乏よりもさらに強い貧乏ワードなのでは…

というわけで素寒貧のパスタを作ろう!

【素寒貧のパスタを作ろう!が!その前に】


素寒貧とは、こういう定義のようです

素寒貧(すかんぴん)
[名・形動]貧乏で何も持たないこと。まったく金がないこと。また、そういう人や、そのさま。「給料前で―な(の)状態」

出展:デジタル大辞泉(小学館)

そりゃそういう意味ですよね、と言いたくなるようなワードですね、素寒貧。この名にふさわしいパスタを作っていきたいところ.

ですが、その前に。

こちらをご覧ください

これ、ゆでたてのパスタに塩を振りかけたものです。

究極的に言えば最も低コストなパスタと言うのをかんがえた時に「そんなの茹でたパスタに塩でもかけて食えばいいじゃない!」と思う方もいらっしゃると思います。

ところがですね、これをやってしまうと、あれなんですよ。

ちょっとしゃらくさいんですよ。

洒落臭い(しゃらくさい)
[形][文]しゃらくさ・し[ク]しゃれたまねをする。小生意気だ。「素人のくせに―・いことを言う」

出展:デジタル大辞泉(小学館)

よくあるじゃないですか、有名そば店とか、有名つけ麺店とかで
「最初は何もつけずに食べて麺だけの味を味わっていただきたく…」
とか
「塩をつけて食べていただくことで麺のうま味が…」
みたいなことを宣告してくるお店。
僕、あれが本当に嫌いでして。長くなるので(それだけ溜まっている)割愛しますが、「なら小麦粉なめてろ!」と言いたくなるのですね。(極論です)

貧乏人のパスタもきっと「貧乏だけど美味いもん食いたい!」というイタリア人の飽くなき探求から生まれたはず。特に麺料理はそれについてる味付けとか、具材ももちろん大事だと思うので、「素寒貧のパスタ」について今回は以下のルールを設けることにしました。

素寒貧のパスタオフィシャルルール

  • パスタと油代と調味料代はコストにカウントしない(実家のマンマがミーアしてくれたものとする)

  • 貧乏人のパスタより低コストであること(具材が116円以下)

  • 具材を二種類まで使う(貧乏人のパスタで言う卵と粉チーズ)

  • 調味料も二種類まで(貧乏人のパスタで言う塩と胡椒)

このルールにのっとり、素寒貧だけれども満足感のあるパスタを作るということにトライしてみたいと思います。
レッツ素寒貧!!

【素寒貧1 ネギと揚げ玉のパスタ】

まず一品目にご用意したのがこちら、ネギと揚げ玉のパスタ。

先に完成品を載せておきますね

材料はこちら

・ネギ 3分の1・・・27円
・揚げ玉 14グラム・・・20円
・麺つゆ 適量
・七味 適量(個人的には大量がおすすめ)
材料費:47円

ネギ。それはある意味究極の野菜と言ってもいいのかもしれません。
例えばラーメン。そのままでも十分美味しいのに、これにネギがトッピングされるだけで、一気に幸せ度が倍増しますよね。

家系ラーメンにネギトッピングした日には一日ニコニコできます

ネギを料理に加えることは、その料理にプラスアルファの幸せをお約束してくれるということなのです。シンプルなのに満足感を目指す素寒貧のパスタにとってこんなにいい材料はない!

そして揚げ玉!

例えば卵丼(親子丼から鶏肉ぬいたもの)を作る時、揚げ玉をふぁさーっとかけると、すさまじくおいしくなります。
これを加えることで揚げ玉の持つコクと、サクサクの食感を楽しんじゃおうッ!てことですね。

と言うわけで調理。
まずネギを千切りとみじん切りの二種類に分けます。

千切りにした方のネギを油でいためて、そこにパスタをドーン。
麺つゆを二回しほどかけてしばし炒めてからお皿に盛ります。
そこにみじん切りにしていたネギと揚げ玉を振りかけ、さらに七味をドバドバと振りかけて完成。

完成。

まず香ってくる七味の香りが、これからの食事へのやる気を倍増させてくれます。ちなみにうちの七味は青のり多めなので赤くないのですが、唐辛子多めの七味だったら、全体的な色味もよさそうですね。

食べてみると、パスタと麺つゆと言う組み合わせが不思議なほどにあう!さらに揚げ玉が麺つゆの成分を吸い込んでくれて、天丼の衣のような感じになってうまい!ネギのシャキシャキの食感と、独特の辛さも、材料費以上の満足感を与えてくれます。

これだけの満足感で材料費は50円以下、1品目にしてこれはナイス素寒貧…!

【ネギと揚げ玉のパスタ】素寒貧度「3.5」
コスト・・・・★★★★
味・・・・・・★★★★
作りやすさ・・★★★
講評:チャーハンにしてもよさそう

【素寒貧2 魚肉ソーセージともやしのパスタ】

続いての素寒貧パスタは「魚肉ソーセージともやしのパスタ」。
材料はこちらです

魚肉ソーセージ 1本・・・75円
もやし 100グラム・・・20円
マヨネーズ 適量
塩 適量
材料費 95円

魚肉ソーセージ、東海林さだお的に言えばギョニソも、もやしも、お金がない時のご飯として大変重宝したはず。居酒屋チェーンの「さくら水産」ではギョニソがおつまみとして売っていて、学生時代にとりあえずこれとビールで延々と語った記憶もあります。原価高騰のせいでしょうか、思ったよりも魚肉ソーセージの値段が高くなっていますが、材料費の116円ルールには収まってるのでセーフ。

というわけでまずはギョニソをカット。

これだけでツマミになりますよね

あとはこれをパスタともやしと一緒に炒めます。

THE★貧。

仕上げにマヨネーズを振りかければ完成。ギョニソには絶対マヨネーズ。

給料日前の晩餐って感じですね。

食べてみると、これは…
あったかいマヨネーズの酸味が微妙に合わない。
もやしとギョニソ、もやしとパスタは合うのですが、間を本来だったら取り持つべきマヨネーズさんが、テンションが上がったのか舞台上で一人で激しく踊ってしまい、周りが困惑している感じです。要はまずい。

マヨネーズさえあればどうにかなる!という精神の元、絶対の安パイで作った素寒貧パスタでしたが、まさかの落とし穴でした。マヨネーズではなく例えば醤油とかにして、ギョニソももう少し細かく刻んだら全体的にもっとバージョンアップできたような気もします。意外に組み合わせが奥深いな、素寒貧パスタ。

【魚肉ソーセージともやしのパスタ】素寒貧度「2」
コスト・・・・★★
味・・・・・・★★
作りやすさ・・★★★
講評:むしろパスタなしでおつまみにしてもいいのかもしれない

【素寒貧3 キャベツとカツオブシのパスタ】

最後に作るのは「キャベツとカツオブシのパスタ」
材料はこちら。

キャベツ四分の一・・・50円
カツオブシ5グラム・・・10円
醤油 適量

材料費 60円

キャベツとカツオブシの組み合わせ、これは作家の椎名誠さんの自伝的小説「銀座のカラス」の中で、給料日前で困った主人公がお弁当の具材として作る組み合わせもあるので、まさに由緒正しき「素寒貧」な組み合わせでもあります。この小説の給料日前の部分は、本当にいきいきと「金がない!」という状況を描いていて、何度読んでも面白いのです。

(めちゃめちゃ面白い小説なのでぜひ読んでみてください。)

というわけで調理。キャベツをまずは炒めます。

そこにパスタを入れ、醤油を絡めます。

これでほぼ完成。

そして仕上げにカツオブシをどばーっとかければ完成!

なかなかいいビジュアル

アッツアツの所をぞばぞばと食べていきます。

これがねぇ…うまい!!カツオブシが絡んだパスタが、本当にうまい。出汁の塊を食べてるから当たり前と言えば当たり前なのですが、かみしめるほどにギュッとうま味が出てくる感じです。

何回とってもフォーカスが合わなかったのですが、やる気に満ちた見た目をしています

そしてキャベツのザクザク感の歯ごたえがとっても心地よく、さらにボリューム感もあるのでお腹にも溜まる溜まる。麺とキャベツと言えばペヤングがその世界の王のように君臨していますが、料理する時間が取れるようなら、こっちの方が安く美味しく作れるかもしれない…。

大満足で完食。味・値段・ボリューム全てにおいてこれはいい素寒貧パスタ…!

【キャベツとカツオブシのパスタ】素寒貧度「4.5」
コスト・・・・★★★★★
味・・・・・・★★★★
作りやすさ・・★★★★
講評:ビールに合いそう

まとめ

三種類の素寒貧パスタ、いかがだったでしょうか。個人的にはキャベツとカツオブシのパスタが一押しですが、他のパスタの方が好き!と言う方も絶対でそうなメニューになっておりますので、ぜひお試しください。

そして素寒貧のパスタ、他にもまだまだ開拓の余地があるんですよね。今回は使わなかったですが、これもまた金欠の時にお世話になりがちな野菜の王「玉ねぎ」を使っても美味しい素寒貧のパスタは作れそうですし、缶詰なんかも絶対にいいパスタの材料になるはず。お金がない時でも、こういうのを考える余裕ってのは持っておきたいですよね。

「いや、俺富豪だし!」と言うあなたも、素寒貧パスタを覚えておくと、いつか「Instagramを買収したいからお金貯めなきゃ!」という時に便利かもしれません。

その時にこのレシピ達が役立った暁には僕に一億円だけでいいので僕にください。それで僕は鳥貴族で豪遊します。

作ってみてね!


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