〔民法コラム24〕和解
1 和解
⑴ 総論
和解とは、当事者が互いに譲歩してその間に存する争いをやめることを約束する契約をいう(695条)。和解契約は、有償・双務・諾成契約たる性質を有し、当事者の互譲を要件とする点で、「示談」とは異なる。
⑵ 和解の確定効(696条)
当事者の一方が和解により争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方が権利を有しないと認められた場合、その者が従来その権利を有していないとの確証又は相手方がこれを有するとの確証が出てきた場合には、その権利は和解によりその者に移転し、又は消滅したものとみなされる。これを和解の確定効という。和解の確定効の趣旨は、紛争の蒸返しを防止する点にある。
2 和解と錯誤
⑴ 和解の内容(争いの対象)に関する錯誤
当事者が争いの対象とし、互譲により決定した事項自体に錯誤がある場合には、和解の確定効により錯誤規定は排斥される。例えば、借家人と家主との間で契約の終了の有無につき争いがあり、終了していない旨の和解がなされたが、後日終了していたことが判明した場合には、借家契約の終了の有無につき錯誤を主張することは許されない。
⑵ それ以外(争いの対象となっていなかった事項)の錯誤
争いの対象たる事項の前提ないし基礎として両当事者が予定し、和解においても互譲の内容とされることなく、争いも疑いもない事実として予定された事項等の争いの対象となっていない事項の錯誤については、95条の適用がある。
3 和解の効力の射程
交通事故につき、加害者が一定の賠償金を支払い、被害者はその余の請求権を放棄する旨の和解・示談が成立した後に、和解当時にそれ以上の損害が存在し、あるいは、それ以上の損害が事後に生じたことが判明した場合には、そのような損害には和解の効力が及ばず、損害賠償請求は和解の確定効に反しないという見解がある。このような見解を採ると、錯誤の規定を用いて和解契約を取り消すまでもなく、新たな損害についての損害賠償請求が認められることとなる。
[重要判例]
・最判昭33.6.14百選Ⅱ(第8版)[76]
・最判昭43.3.15百選Ⅱ(第8版)[104]
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