〔民法コラム30〕敷地賃借権付建物の売買における敷地の欠陥
敷地建物付建物の売買において、賃借権の対象である建物の敷地に欠陥があった場合、売主より移転された売買の目的物たる賃借権が「契約の内容に適合しないものである」(565条・562条1項本文)として、売主に対して担保責任(562条以下)、債務不履行責任(564条、415条1項本文)を追及できるかが問題となる。
旧法下の判例(最判平3.4.2百選Ⅱ(第8版)[54])は、こうした賃貸人の修繕義務(606条1項本文)の履行により補完されるべき敷地の欠陥は、賃貸人に対して修繕を請求すべきであるとして、賃借権に欠陥があるとはいえず、よって、売買の目的物に「瑕疵」(旧570条本文)があるとはいえないとしている。
〈論点1〉敷地賃借権付建物の売買において、敷地に物理的な欠陥があった場合、売買の目的物たる賃借権につき「契約の内容に適合しない」として、売主の担保責任を追及できるか。
A説(否定説 旧法下の判例)
結論:できない。
理由:①賃貸人の修繕義務の履行により補完されるべき敷地の欠陥は、その賃貸人に対して修繕を請求すべきである。
②債権の売買において、債務者の資力の欠如が債権についての契約不適合に当たらず、売主が当然に債務の履行につき担保責任を負担するものではないこと(569条)との対比からしても、当然には売主が賃貸人の修繕又は賠償義務ないしその資力を担保することはなく、賃貸人が修繕義務を負担すべき敷地の欠陥は売買の目的物の契約不適合に当たらないと解すべきである。
B説(肯定説)
結論:できる。
理由:敷地賃借権付建物の売買では、特段の事情がなければ、建物の利用の前提として、敷地についての継続的な有効利用が契約内容に含まれていると解される。したがって、敷地に欠陥があり建物をその敷地上で維持できない場合には、売買目的物の品質に関する契約不適合に当たると考えるべきである。
[重要判例]
・最判平3.4.2百選Ⅱ(第8版)[54]
※平成29年改正前の判例であるところ、現行法の下では、「契約の内容に適合」しているか否かの解釈において参考になる。