〔憲法コラム5〕プライバシー権
1 新しい人権
13条後段の幸福追求権について、従来は単に人権の重要性を強調する一般原則を宣言したものと解されていたが、現在では、具体的権利性を肯定し、憲法上列挙されていない権利を導き出す根拠となると考えるのが通説である。
〈論点1〉13条後段から新しい人権を導き出すことは可能か。
A説(判例・通説)
結論:個人尊重の原理に基づく幸福追求権は、憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる一般的・包括的な権利であり、この幸福追求権により新しい人権を導き出すことができる。
理由:①社会の状況の変化とともに、現実に生命、自由などにつき、個別的人権規定では救済しきれない新たな侵害態様が生じている(必要性)。
②人権の固有性(11条、97条)にかんがみれば、憲法の人権規定は歴史的に重要な権利・自由を列挙したものにすぎず、それ以外の人権の保障を排除する趣旨ではない(許容性)。
2 プライバシー権
プライバシー権は、新しい人権として主張されてきたものの一つであり、判例によっても、憲法上の権利として確立されたと評価されているが、その意味は多義的である。
〈論点2〉プライバシー権の内容をいかに解すべきか。
A説(「宴のあと」事件 東京地判昭39.9.28)
結論:プライバシーの権利とは、私生活をみだりに公開されない法的保障ないし権利で、自由権的・消極的なものである。
B説(通説)
結論:プライバシーの権利とは、自己に関する情報をコントロールする権利で、公権力に対する請求権的・積極的側面も有する。
理由:個人情報が行政機関により集中的に管理されているという現代社会においては、個人が自己に関する情報を自らコントロールし、自己の情報についての閲読・訂正ないし抹消を請求できることが必要である。
[重要裁判例]
「宴のあと」事件(東京地判昭39.9.28)百選Ⅰ(第7版)[60]