「思考停止」が停止する時代がやってくる/高藤悠子さん(プロビティ・グローバルサーチ株式会社 代表取締役)
高藤悠子さん プロフィール
慶應義塾大学卒業後、新卒にてメーカーへ入社。海外営業部に配属。
コンサルティング業界やMBAホルダーに特化した紹介会社へ転職し、外資系戦略コンサルティングファームや世界的IT企業、ベンチャー企業などへ若手からエグゼクティブレベルの人材を紹介。未経験・社内最年少ながら月間売上社内トップの成績を連続して達成する。
その後大手人材紹介会社、JACリクルートメントのタイ法人へ入社。執行役員として現地でスタートアップの段階から日系売上高第一位まで規模を拡大する事に貢献。述べ200名以上の海外就職、海外から日本への帰国の転職のサポートを行う。常に社内トップの成績を残す。
2012年に日本へ帰国、国際ビジネス経験者/グローバルリーダー人材に特化したサーチ会社、プロビティ・グローバルサーチ株式会社を設立。
(四方)
こんにちは!スパイスアップ・シンガポールの四方健太郎です。
「人事」のHRと「トランスフォーメーション」のXを掛け合わせて「HR-X」と名付けた当番組は、「トランスフォーメーション人材で組織を変革する」をスローガンに、「人事」と「トランスフォーメーション」、つまり「変革」というキーワードで様々な取り組みをしているゲストをお迎えしてお話を伺っていきたいと思います。
今回のゲスト「Ms.X」には、「グローバル」×「ソーシャル」×「エグゼクティブ」に特化した人材紹介会社、プロビティ・グローバルサーチ代表の高藤悠子さんをお迎えしました!
高藤さん、こんにちは!
(高藤さん)
こんにちは!
よろしくお願いします。
(四方)
よろしくお願いします。
高藤さんとはかれこれ7,8年の付き合いになると思いますが、思い出でいうと、2013年9月の「ヒューマンキャピタルサミット」というHR系の大きなカンファレンスがシンガポールでありまして、その時一緒に行きましたよね。あのときは僕も直前の北京でのサッカー大会であばらを骨折して、そのまま包帯ぐるぐる巻きでシンガポールに飛んできて・・・という苦い思い出があります。
(高藤さん)
衝撃でしたね、私もなんか人の体ってこんなに強いんだって思いました、四方さんを見てて。
(四方)
僕も休めることなら休みたかったのですが、行かざるを得ない状況で・・・
満身創痍ってこういうことかと思いながら、今となってはいい思い出になっています。(笑)
ちょっと余談が過ぎました。
「グローバル」×「ソーシャル」×「エグゼクティブ」に特化した人材紹介会社を経営されていて多くの変革企業経営者と話をしてきた高藤さんですが、まずは自己紹介をお願いできますでしょうか?
(高藤さん)
プロビティ・グローバルサーチという人材エージェントをやっています。
もう9年くらいになります。
その前もずっと人材の仕事をしていたのですけども、当社では幅広い求人を取り扱うというよりは、社会への想いを持った方や世の中をこうしていきたいという企業様や人材の方をメインにマッチングのお手伝いをさせていただいております。
その中でスキルとかビジョンだけではなくて、「世界観」というものでマッチングする独自のメソッドを使っていまして、その「世界観マッチング」で良い企業と良い人材を繋げて、より良い社会を作っていこう、世の中に生き生きとした企業とか人材を増やしていこうっていう「お花畑計画」って言っているのですが、そういうことをやっています。
(四方)
どういう企業さんが多いんですか?
大手企業さんなのか、中小企業やベンチャー企業さんとかで経営者の方がすごい想いがあるとか、どんなタイプのお客さんが多いんですか?
(高藤さん)
そうですね、大手さんは2割くらいで、食品メーカーさんですとか情報系の企業さんですね。
やはりいろいろ変えていこうとか会社全体がチャレンジ精神のある大手企業さん、あとは多いのは四方さんも仰ったみたいな経営者がビジョンを持っていて、こういう社会を作るぞ!という企業の社長様から直接ご依頼いただくことが多いですね。
(四方)
なるほど、じゃあ大手さんでもドシっと構えて動かないというよりは、これから変わっていこうという部署や事業部、経営者だったり、そういったクライアントさんですとか、そもそもベンチャーで荒波に揉まれて、常に変化していくような経営者がクライアントさんということですかね。
(高藤さん)
はい、そうですね。
(四方)
今日は変革というキーワードなんですけど、人材紹介をやられているということで、人材という観点とか、人材を採用するような観点から変革というキーワードに迫っていきたいなと思います。さっき僕が興味持ったのは「世界観マッチング」ってパッと聞いても分からないのですが、もうちょっと詳しく聞いてもいいですか?
(高藤さん)
はい、そうですよね。
例えば、私たちも最初“ビジョンマッチング”と”スキルマッチングでやっていたのですけど、それだとあまりうまくいかないっていうことが起きてて、何かというと例えば、環境問題を良くしたいとか解決したいというビジョンがあったとして、それを希望している人材が3人いらっしゃるとすると、みんなよく聞いていくとその奥の想いが違ってきているんですね。
例えば、環境問題はいまホットだから、これをやっていけばしばらくは仕事としては安泰だろうと思う方もいらっしゃいますし、あとはいま環境問題のいろんなベンチャーが出てきて楽しそうだし優秀な方が集まっているし、スキルを磨くぞっていうタイプの方もいらっしゃいます。あとは個人的な経験の中から環境問題を自分事のように痛みを感じて、なんとかそれを解決したいっていう方もいらして、何が良い悪いではないんですけれども、奥底深くのモチベーションの源泉みたいな、私たちは世界観と呼んでいるのですけど、そこも踏まえた上でマッチングさせないと企業さんも、その会社によって例えば教育問題なり環境問題へのアプローチの仕方が違っているので、とにかく市場を取るぞ!みたいな会社さんもあれば、地道にじわじわと事業展開していこうだとか、そこの奥底のどういう風に世界を見ているのかを合わせた方が、より入社後の活躍が確実になるなということでやっています。
(四方)
なるほど。
表面的な部分だけで判断してマッチングするのではなく、深層心理隠れているというか、この人はどういう背景でその物を言っているのか、行動しているのか、この辺まで見極めてるということでしょうか?
(高藤さん)
そうですね、すごい深くまでは見れてないと思うのですが、世界をどういうところに見ているのか、例えば世界を競争の場と見ている人もいるし、奪う奪われるって見ている人もいるし、世界と自分をもうちょっと同一化して、自分と社会っていう、自己の領域って言っているのですけれども、それが世の中と繋がっている人もいるし。
そういった人材のタイプがいくつかあるので、企業さんもどういう意識で企業を運営しているのか、個人の集合体なのでその個人の重心みたいなところですね。
こういうタイプの方が多いというところで合わせていく。
(四方)
アフターコロナやウィズコロナと呼ばれていますけど、そうした外的環境の変化によって変化してきている募集要件って何かありますか?最近のトレンドなど。
世界観マッチングとは
(高藤さん)
最近のトレンドは、やっぱり自立している人が欲しいっていうご要望がものすごく増えていますね。
自立っていうのはさっきお伝えした「世界観マッチング」というのは、ベースに成人発達理論というものがありまして、それ以外の要素も入れているのですが、だいたいが成人発達理論を基に作っているものです。
成人発達理論というのはその人がどういう意識状態でいるか、7割、8割くらいの人は、社会に対して従属的な社会に従うぞ!っていう状況の方。
2割くらいの人が「自立型」。
社会に言われたことをやるのではなくて、自分で考え出そう、自分で作り出そうという方。
(四方)
自らの足で立ち、自らの頭で考えということですね、なるほどなるほど!
(高藤さん)
社会に依存するのではなくて、自分の足で立つというところですね。
これまでは割と組織に従うタイプの方、言われたことをきちんとやるというのが評価されていたのですが、やっぱりコロナになってリモートワークになったことも大きいのですが、1から10まで全部指示されなくても、自分で考えて動けるよねとか、自分で考えて誰かにコンタクトできるよねって人が重宝されるようになってきていますね。
(四方)
なるほど。
今までだったらその場にいて阿吽(あうん)の呼吸で伝わっていたものが、これからは自らの足で立つ人じゃないとワークしなくなってるということなんですよね。
(高藤さん)
みんなと同じ場所に居て、みんなが仕事をしているから仕事をするっていうので、これまで成り立っていたのですが、誰も監視している人が周りに居ない状況で、自分で律して自分の足で立って仕事を進められる人が欲しいと言う企業が急に増えてきていますね。
アフターコロナで変化してきている人材募集要件
(四方)
関連するかもしれませんけど、リモートワークになることによって企業とか組織の求心力が低下しているということをよく聞きます。
企業側としては、人材が離れていってしまうかもしれないという怖さがあるじゃないですか。
今までだったら、その場に居てくれてて雰囲気も作れていて、こっちの方向いてくれているというのがあったかと思うんですけど、人材が自立するということは踏み間違えると、求心力がなくなる、ロイヤリティが下がると思うのですが、企業側はどういう風にアプローチすればいいのでしょうか?
(高藤さん)
2つあるかなと思っていて、1つは物理的に繋がることができなくなったので、リモート上でも頻繁にコミュニケーションを取るようにする。
これまでオンラインでやっていたコミュニケーションの仕組みをそのままリモートに持っていくと、圧倒的に情報量と機会が減ってしまうし、雑談みたいなものもなくなってしまうので、意識的・意図的に1on1だとか、タテ・ヨコ・ナナメの話し合いの場を設けることをされている企業はすごく増えていますね。1on1の回数を増やしています、チームミーティングを増やしていますとか。
あとはそれだけだとどうしても業務的な報告が多くなってしまうので、チーム内とか別のチームと一緒に3時にお茶会しますって会社さんもあったりだとか。
そこで雑談するような場を設けたりというコミュニケーションの設計が一つと、あともう一つ思うのが、従業員にとっての人生でいまこの会社にいることがベストかどうかっていうことを会社も考える必要が出てきているのかなという風な気もしています。
うちにいるんだから、うちの仕事をやって当然、ずっと居なさいではなくて、いま従業員の方で何が起きているかというと、当社にもコロナの後から一気にご相談が増えているのですけど、非常に有名な大学を出られて、銀行、商社、大きなメーカーさんに行かれた優秀な30歳前後の方ですとか、もうちょっと上の方が続々と本当にいまの会社でいいのか考えてしまいましたと、考える時間ができてしまいました。
人生において私はこの仕事でいいのだろうか、この会社でいいのだろうかと人生を見直す方が一気に増えてきているんですね。
リモートワークで企業や組織の求心力が低下している!?
(四方)
たしかに考える時間が増えたっていうのはあるかもしれないですね。
なんとなくというのが世の中から無くなってきて、且つ「自立した人材を」なんてことを企業は言っているから、自分で考えなきゃと思うし、通勤時間が減るので時間もできてしまったので、その中でうーんと考えている中で、そもそも話に立ち返ってくると、先ほどの求心力が下がることにつながってしまうんですよね。
だから、企業としては、尚更それこそマネージャーとかマネジメントというのは、”人財”なんて言ったりしますけど、企業はいままで以上に従業員に寄り添ってあげないと優秀であればあるほど自分で考えるようになって、この会社でいいのだろうかと思うようになってしまうから、そういう人ほど大切にしなきゃいけないんでしょうね。なるほどね、そういうことがいま起きつつあるし、足を踏み入れた段階でしょうね、この社会全体が。
(高藤さん)
本当そうですよね、なっていますね。
これまではある程度思考停止しても、いい人生を送れた時代だったと思うんです。
(四方)
なるほど。
「思考停止」が停止する時代になるんですかね。
いいキーワードが出ました。
(高藤さん)
自分の人生とかキャリアに関しても。
この会社で働く意味はなんだろうみたいなことを皆さん悩み始めるので、いまの会社で。
(四方)
そこでも先ほどの「世界観マッチング」が重要になってくるし、経営者やマネージャーもうちの会社って何を目指していたんだっけとか、そもそもビジョンってなんだっけとそういう立ち返りも必要なのかもしれないですよね。
(高藤さん)
本当にそうですね。
コミュニケーションを頻繁に取るようにする設計とコミュニケーションで何を話すかという意味付け、この組織、チーム、会社で頑張る意味はこうだよねっていうことを従業員のニーズと照らし合わせて、コミュニケーションを取れるようにする必要があるのかなという気がします。
成人発達理論にみる「変革人材」とは?
(四方)
最後に聞きたいのですが、成人発達理論というお話で、僕自身この点について詳しくなかったのですが、成人発達理論にみる「変革人材」とはどんな人のことをいうんですか?
(高藤さん)
成人発達理論はメジャーでいわれているところは、レベル1からレベル5まであって、レベル5になると、仙人みたいな人なのでビジネスの場と馴染まないのですが、レベル2の方はジャイアンか非ジャイアンみたいな奪うか奪われるかの世界観で生きてらっしゃってて、レベル3は社会を受け入れて従うような、ほとんどの日本人はここに当てはまるのですが、レベル4になると自分で良い方法を考え出し結果を出してくる方です。
(四方)
なるほど。
成人発達理論でいうとレベル4が自立していて自分の頭で考えて物事を新しい方向にアクションして動かしていくような人が企業にとって必要なんじゃないかということでしょうか?
(高藤さん)
そうですね。
大事なのが、そういう人材を受け入れてもその組織がレベル3の方を前提とした組織構造であれば、レベル4の方は弾かれてしまったり、うまくいかなかったりということがあるので、そこは何らかの配慮した措置を取る事が必要かなと思います。
(四方)
なるほど。
今日はいろいろと示唆に富む話をいただけました。
人材採用という観点では仰っていただいた通りかと思いますし、私たちは「トランスフォーメーション人材」、先ほどの成人発達理論でいうレベル4の人材ができるように教育や研修を実施しているのですが、一方で研修で行動が変容した人たちを現場や職場の方たちに受け入れてもらわないといけないので、またそこであぶれてしまい元に戻ってしまったら、採用しようが育成しようが同じで、組織風土を考え直していくことが重要なのかなと思いました。
さて、HR-Xではこれからも「人事」と「トランスフォーメーション」というキーワードで、様々なゲストをお呼びしてお届けしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
それでは今回はこの辺でーーー!高藤さん、今日はありがとうございました!
(高藤さん)
ありがとうございました!
四方健太郎(株式会社スパイスアップ・ジャパン取締役/ Spice Up Singapore PTE LTD Managing Director)
立教大学を卒業後、アクセンチュア株式会社の東京事務所にて、主に通信・ハイテク産業の業務改革・ITシステム構築に従事。2006年より中国(大連・上海)に業務拠点を移し、台湾・香港を含む大中華圏の日系企業に対するコンサルティング業務にあたる。2009年にフリーランスのコンサルタントとして独立。独立後、1年かけてサッカーワールドカップ2010年大会に出場する32カ国を巡る「世界一蹴の旅」を遂行し、経済界社より『世界はジャパンをどう見たか?』を上梓。
現在、東南アジアやインドでグローバル人材育成のための海外研修事業に従事。株式会社スパイスアップ・ジャパン取締役。シンガポール在住。
株式会社スパイスアップ・ジャパン
公式ウェブサイト https://spiceup.jp/
公式フェイスブック https://www.facebook.com/SpiceUpJP/
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