見出し画像

化成肥料は本当に必要なのか?


<化成肥料は本当に必要なのか?>

化成肥料とは、主にチッソ・リン酸・カリウムなどの栄養素を植物が直接吸収できるような状態になっているものを指す。専門用語では即効性肥料と呼ばれ、人間で言うところのサプリメントであって、水に溶けることで吸収される。

肥料価格は年々上がっている。それもそのはずで、肥料の原料はすべて海外に依存してるばかりか、有限資源を高エネルギーで生成しているのだからコストは非常にかかる。

これからも値上げが予想される化成肥料に変わって有機肥料や堆肥の使用、または緑肥の活用も農業界では注目を浴びている。
さて、こういう話になると必ずと言っていいほど食料の供給力が問題視されるのだが、本当に問題は起きるのだろうか?

この問題を考えるにあたっては食料自給率の計算式の問題点や食料分配の非効率なども考慮するべきなのだが、今回はそれを省いて肥料そのものについて考えてみたい。

現在の日本の肥料使用量を把握している人は農政界の人でもあまりいないのではないだろうか。
現在:チッソ55万トン、リン30万トン、カリウム43万トン
しかし残念ながらその原材料のほぼすべてが海外からの輸入にも限らず、雨が多い日本では植物が吸収するのはたったの3分の1程度に過ぎす、そのほかは地下水へと流失し、河川や湖、海などで赤潮などの富栄養化を起こしてしまっている。

さて、ここで100年前にタイムスリップして当時世界最先端のオーガニック大国であった国のデータを参照したい。
1909年「東アジア4千年の永続農業」という本を書いた土壌学者フランクリン・キングは明治政府からの資料をもとに当時の日本で堆肥によって投入された養分量を以下のように計算した。
キング:チッソ38万5千トン、リン9万2千トン、カリウム25万6千トン。海外からの輸入に頼ることなく現代の過大施肥と呼ばれる肥料の約3分の1~3分の2を賄っていたことになる。

当時日本で使用されていた肥料とは自家堆肥と購入堆肥(金肥)の二種類に分けられる。
自家堆肥は刈敷(いわゆる草マルチ)、草木灰、植物性堆肥、家畜の糞による厩肥、人糞尿、緑肥など。
購入堆肥は乾燥したイワシやニシンなどのほしか、油粕、人糞尿など。

約100年間の間に人口は2倍以上に膨れ上がった。しかし、意外にも植物が吸収していない養分のことを考えるとそれほど多くの養分を施肥する必要がないように思える。

実はこれにはカラクリがある。現代の慣行農業では確かに大量の肥料施肥は行われているが、もともと化成肥料だけで育てているわけではない。
まず、前作の残渣を土に鋤きこむことでそれが養分になっている。もちろん、地下部の根も同様に。また日本で自然農ができる理由である雨の多さ。そして無料に無限に降り注ぐ太陽光。実は植物が育つために必要な養分の多くはこれらで賄っている。それでも足りない分を外から持ってきて施肥するわけだ。

日本で産業廃棄物として燃やしている、もしくは廃棄されている草木類、家畜の糞、食品廃棄物(家庭の生ゴミも含む)などを堆肥に循環させることができれば現在の食料供給量は十分に満たせるのではないだろうか。
もちろん、これは海外から輸入している飼料や穀物、果物、嗜好品などを除いての計算である。しかし、世界的な食糧危機が起きた場合に必要な国民の最低限の食糧くらいは賄える可能性はあるだろう。


いいなと思ったら応援しよう!